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やがて郡都の人々も集まり始める。
弁明があちこちから上がる。
「こんなつもりじゃ……」
「そいつが勝手に――」
「黙って!」
雲の声が響いた。
「こんなことがしたかったわけじゃない?
じゃあ隆を捕まえて、どうするつもりだったんだ!」
男たちは言葉を失う。
雲は鈴を握り締める。
「私たちはなぜ今ここにいる?
本当なら、冷たい高地の空気を吸っていたはずだ」
声が震える。
「それでもここにいるのは、大乱があったからだろ。
大勢死んだ。家族が死んだ」
涙が零れる。
「それなのに――人の命を、こんなふうに扱うのか」
視線が揺れる。
「私にはもう、蒼土が分からない」
頭の中に妹の笑顔が浮かび、雲はそれ以上言葉を紡げなかった。
崩れ落ちた廟。
それを囲む蒼土人。
その中心には、倒れた男と、泣き崩れる少女と郡都の少年。
郡都の人々はただ困惑し、誰も踏み込めずにいた。
静まり返った場を裂くように、隆の両親が人の壁を押し分けてくる。
「隆!」
父の声が響く。
だが隆は、宇衍の手を握ったまま動かない。
両親はたまらず輪の中へ入り、我が子の肩に触れた。
それでも反応はない。
父親は顔を上げ、蒼土人たちを睨む。
「何があった。
なぜうちの子が、お前たちの争いの真ん中にいる?」
低く抑えた怒りだった。
岑が口を開く。
「朝になったら霊廟が壊されていた。
そこに隆がいた。それで――やったんじゃないかと責められた」
淡々と説明する。
「この人が、庇っていた」
岑の視線が宇衍へ落ちる。
その拳が、白くなるほど握り込まれている。
父親は、胸に刃を受けて倒れた男を見た。
そして息を呑む。
「……この人が?」
視線が彷徨う。
だが母親は、我が子を抱き寄せていた手を止めた。
ゆっくりと顔を上げる。
「庇って死んだ……?」
声が震える。
「この子は――殺されていたかもしれないってこと?」
全員の表情が凍りつく。
母親は、ゆっくりと立ち上がった。
「なんで?」
静かな声だった。
「どうしてこの子が、そんな目に遭わなきゃいけなかったの。
答えなさいよ」
荒々しくはない。
だが、その場にいる蒼土の大人たちは、息を詰めた。
「廟が壊されて……」
「護符も外されていた」
「神獣を模った人形も……」
誰も正面を見られないまま、ぽつりぽつりと理由を並べる。
母親は一歩、踏み出した。
「それを、この子がやったって言うの?
どうして?」
誰も答えられない。
さきほどまで熱に浮かされていた男たちは、完全に冷めきっていた。
人の死が、現実を突きつけている。
異様な静寂の中で、か細い声が響いた。
「ごめんなさい……」
幼い声が聞こえる。
それに続くように、あちこちから小さな謝罪が漏れる。
この騒ぎの根にあったものは、あまりにも明白だった。
母親の声が震え始める。
「うちの小隆は無実なのに、責められて、罵られて……殺されかけたの?」
そしてついに叫ぶ。
「だから蒼土人なんて嫌いなのよ!
あなたたちが来たから、全部――!」
「ご婦人。どうか、そこまでにしていただけないか」
よく通る声が、空気を裂いた。
明瞭な声はわずかに震えを含んでいる。
「すまない。通してくれ」
なぜか誰も逆らわず、道を開ける。
雲の涙に滲んだ視界に、苦しげに顔を歪めた青年の姿が映る。
宗斐だった。




