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1-13


やがて郡都の人々も集まり始める。

弁明があちこちから上がる。


「こんなつもりじゃ……」


「そいつが勝手に――」


「黙って!」


雲の声が響いた。


「こんなことがしたかったわけじゃない?

じゃあ隆を捕まえて、どうするつもりだったんだ!」


男たちは言葉を失う。

雲は鈴を握り締める。


「私たちはなぜ今ここにいる?

本当なら、冷たい高地の空気を吸っていたはずだ」


声が震える。


「それでもここにいるのは、大乱があったからだろ。

大勢死んだ。家族が死んだ」


涙が零れる。


「それなのに――人の命を、こんなふうに扱うのか」


視線が揺れる。


「私にはもう、蒼土が分からない」


頭の中に妹の笑顔が浮かび、雲はそれ以上言葉を紡げなかった。

崩れ落ちた廟。

それを囲む蒼土人。

その中心には、倒れた男と、泣き崩れる少女と郡都の少年。

郡都の人々はただ困惑し、誰も踏み込めずにいた。

静まり返った場を裂くように、隆の両親が人の壁を押し分けてくる。


「隆!」


父の声が響く。

だが隆は、宇衍の手を握ったまま動かない。

両親はたまらず輪の中へ入り、我が子の肩に触れた。

それでも反応はない。

父親は顔を上げ、蒼土人たちを睨む。


「何があった。

なぜうちの子が、お前たちの争いの真ん中にいる?」


低く抑えた怒りだった。

岑が口を開く。


「朝になったら霊廟が壊されていた。

そこに隆がいた。それで――やったんじゃないかと責められた」


淡々と説明する。


「この人が、庇っていた」


岑の視線が宇衍へ落ちる。

その拳が、白くなるほど握り込まれている。

父親は、胸に刃を受けて倒れた男を見た。

そして息を呑む。


「……この人が?」


視線が彷徨う。

だが母親は、我が子を抱き寄せていた手を止めた。

ゆっくりと顔を上げる。


「庇って死んだ……?」


声が震える。


「この子は――殺されていたかもしれないってこと?」


全員の表情が凍りつく。

母親は、ゆっくりと立ち上がった。


「なんで?」


静かな声だった。


「どうしてこの子が、そんな目に遭わなきゃいけなかったの。

答えなさいよ」


荒々しくはない。

だが、その場にいる蒼土の大人たちは、息を詰めた。


「廟が壊されて……」

「護符も外されていた」

「神獣を模った人形も……」


誰も正面を見られないまま、ぽつりぽつりと理由を並べる。

母親は一歩、踏み出した。


「それを、この子がやったって言うの?

どうして?」


誰も答えられない。

さきほどまで熱に浮かされていた男たちは、完全に冷めきっていた。

人の死が、現実を突きつけている。

異様な静寂の中で、か細い声が響いた。


「ごめんなさい……」


幼い声が聞こえる。

それに続くように、あちこちから小さな謝罪が漏れる。

この騒ぎの根にあったものは、あまりにも明白だった。

母親の声が震え始める。


「うちの小隆は無実なのに、責められて、罵られて……殺されかけたの?」


そしてついに叫ぶ。


「だから蒼土人なんて嫌いなのよ!

あなたたちが来たから、全部――!」


「ご婦人。どうか、そこまでにしていただけないか」


よく通る声が、空気を裂いた。

明瞭な声はわずかに震えを含んでいる。


「すまない。通してくれ」


なぜか誰も逆らわず、道を開ける。

雲の涙に滲んだ視界に、苦しげに顔を歪めた青年の姿が映る。

宗斐だった。




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