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あなたと巡る、愛しい雨旅  作者: 七賀ごふん
輪転

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20/45

#10



「わ~! すごく高い!」

鑑賞後、俺は景さんとタワーの最上階を歩いた。

「これが日本一高いタワー……街がジオラマみたいです」

「だな」

手すりを掴み、東京の街を見渡す。全方位に大窓が連なっている為、非常に壮観だ。

そのとき後ろに小さな男の子がやって来たが、人が多くて窓を見ることができずにいた。

俺がどこうとすると、景さんが代わりに移動し、男の子の背中を押してあげた。

「ありがとー!」

男の子は手すりを掴み、持ってたトイカメラで景色を撮る。

「ありがとうございます、景さん」

「俺は後ろでも余裕で見えるからな」

確かに、子どもや女性なら全く問題ないだろう。それでもやっぱり、景さんは優しい。

思えば旅の間も、困ってる人の話を聴きに行くことが多かった。そういうところも密かに尊敬している。


「飛行機があることが既に凄いけど。まさかこんな高い場所に人間が到達するなんてな」

「ですね。いつか天に届いちゃうかもしれませんね」


笑って言うと、景さんは静かに頷いた。


「もう何百年かしたら……それに近い位置まで行けるのかもな」


彼の言葉を聞いて、胸が熱くなった。

俺達はいつも戸惑っている。人の進化と、技術の進歩を。

「もしまた来世があるなら、一緒に行きましょうね」

「二度あることは三度ある。かもしれないしな」

顔を見合わせ、二人で笑う。

そうだ。

俺は、こういう他愛ないことで彼と笑いたかったんだ。


主様。……俺はやっと、この時代に生まれて良かったと思えてます。



その後はプラン通りに水族館へ行き、スタッフさんにお願いして景さんと写真を撮った。

「えへへ。やった~」

嬉し過ぎて記念写真を買ってしまった。意外にも、景さんも同じものを買っていた。


「これで、今日のことは絶対忘れません」

「……そうだな」


彼は大事にポーチに仕舞い、微笑む。

「忘れられないよ」

「……景さん」

彼の笑顔はどこか哀愁を帯びていて、綺麗だけど胸がぎゅっとなる。

また、心から笑った顔を見たい。

彼を笑わせるのは、俺の使命でもある。


「景さん、お腹空いてきました? そろそろ時間なので、俺が予約したお店で……ディナーにしましょ!」

「お前がディナーって言うと最高に違和感あるな」

「なっ! お、俺だって一応立派な大人ですよ!」

「わかったわかった。店選んでくれてありがとう」


彼はくく、と笑い、先を歩いた。

く……やっぱ子ども扱いされてる。今夜は大人らしく振舞おうと思ったのに。


いや待て、本番はこれからだ。この後の食事で決めてみせる。

都築は咳払いし、スマホのナビを頼りに目的のビルへ向かった。しかし六つあるエレベーターの前で立ち尽くす。

「二十四階に止まるエレベーターはどれですか?」

「これだな」

景さんのおかげで無事にレストランに入店した。

窓際席をしっかり押さえ、夜景を楽しみながら、早速白ワインで乾杯する。


「随分背伸びしたな」

「うっ。……そんなことありません。この店有名ですし」


目が泳ぎそうになったが、ワインを楽しんでるふりをして誤魔化した。

今夜は俺が持つことになってる。実際一ヶ月分の食費になるけど、今まで彼に出してもらった分を思えば安いものだ。


「景さん、今日は本当にありがとうございました。すごく楽しかったです」

「こちらこそ。最後にこんなサプライズを用意してくれてるとは思わなかったよ」


さっきの仕返しではないけど、景さんの口からサプライズなんてワードが出るとは。

若干面食らいながら、鯛のポワレを慎重に切る。

……もしかすると、もう酔ってるのかもしれない。彼はお酒が入るとよりフランクになるから。


「それでですね。単刀直入に言ってもいいですか?」

「夜まで過ごして単刀直入ってのも妙だが……」


景さんの鋭いツッコミは一旦スルーさせていただき、ナイフとフォークを置く。


周囲にお客さんがいないことを確認し、息を吸った。


「俺は景さんが好きです」




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