黒マントの影、そして正体
「行くぞ」
黒瀬の一言で、4人は正門へと走り出した。
グラウンドを抜け、昇降口の横を駆け抜ける。いつもなら生徒の声で賑わう廊下も、今は静まり返っている。その静けさが、かえって不気味だった。
正門が見えてきた。
2人の人影が立っている。黒いマントで全身を覆い、顔は見えない。ただそこに立っているだけなのに、空気が重く張りつめていた。
4人は正門の手前で立ち止まった。
「お前たちは何者だ」
藤堂が静かに問いかける。感情を抑えた声だが、その目は鋭く2人を捉えていた。
黒マントの片方——小柄な方が、くすりと笑った。
「やっと来た。待ちくたびれたよ」
女の声だった。軽やかで、どこか楽しんでいるような口調。
もう片方は何も言わない。ただ静かに立っている。その沈黙が、小柄な方よりもずっと重かった。
「答える気はないか」
郷原が一歩前に出る。全身に紅いオーラが滲み始めた。
「なら力ずくで——」
「いいよ」
無言だった方が、初めて口を開いた。
低く、静かな声。それだけで空気が変わった。久我が無意識に雷槍を握り直す。
戦闘が始まった。
女が宙に跳ぶ。マントがはためき、その動きは獣のように素早かった。久我が即座に迎え撃つ。雷槍が軌跡を描き、女の動きを封じようとする。
「速い——!」
久我が舌打ちする。女は笑いながら雷をかわし、逆に久我の懐に潜り込んだ。
一方、黒瀬は無言の方と向き合っていた。
相手はまだ動かない。ただ黒瀬を見ている。
その視線に、また電流が走った。
(この感覚——)
黒瀬は炎のマグナムを構えながら、じっと相手を見据える。マントの奥にある目が、僅かに光った気がした。
黒瀬は引き金を引いた。
炎の弾丸が一直線に飛ぶ。相手は一歩だけ横に動いてそれをかわした。最小限の動作で、無駄が一切ない。
(強い)
黒瀬が次弾を装填した瞬間、相手が動いた。
マントを翻しながら距離を詰めてくる。黒瀬は後退しながら連射する。しかし全てかわされる。気づいた時には目の前に相手がいた。
強烈な衝撃が腹に走り、黒瀬は吹き飛んだ。校門の柱に背中を叩きつけられ、崩れ落ちる。
「陽翔!」
藤堂が叫ぶ。
黒瀬は痛みをこらえながら立ち上がった。視線を上げると、相手がマントに手をかけていた。
ゆっくりと、マントが落ちる。
黒瀬の目が見開かれた。
銀色の髪。凛とした顔立ち。感情を宿さない、静かな目。
「お前は——」
黒瀬の声が掠れた。
西条蓮が、静かに立っていた。
「気づくのが遅い」
西条は淡々と言った。その声には、教室に立っていた時と全く同じ、感情のない響きがあった。
「最初から、ずっとそこにいた」
黒瀬は奥歯を噛みしめた。転校してきたあの日から、この男は最初から敵だったのだ。
「……やっぱりお前か」
絞り出すように言った黒瀬の言葉に、西条は何も返さなかった。
ただ静かに、再び構えた。




