悲運と人生に怒る
自分は病気である、と気づいたのは8歳の時他の子よりも走るのが遅い。年下にも負けた。悔しくて先生に聞いた。するとこう答えてくれた。
「自分と他のひとを比べてはいけないよ、走れないことも君の個性だよ」
そうか、走れないのは僕だけか
体が大きくなるにつれ、症状が大きくなる。階段を登るのもしんどい。毎日、学校の屋上から木を見るのが日課だった。毎日見てるのに毎日違う顔に見えるのが不思議だった。何故だろう、僕の気持ちが変化していくからかなぁ。
足し算も割り算も分数も出来るようになった。勉強は好きだ。ちゃんとやれば、一緒についてきてくれる。他のことは嫌いだ。努力しても、なかなかついてきてくれない。あと、どのくらい痛みに耐えればいいのだろう。
制服を着て、校舎から部活をする同い年を眺めることが多くなった。夕日が落ちるときなぜか目元が光っているんだよなぁ。
制服を着ていると、気持ちが引き締まる。何処にいても頑張りたくなる。
初めてのお引っ越し。最近流行りのシェアルームだぞ。周りは僕よりも大先輩らしい。よく歌舞伎や、時代劇をみている。でも、見てみると意外と面白いんだよなぁ。
今月は2回しか、制服を着なかった。悲しいなぁ。見ない間に葉っぱがなくなっていた桜の木。親近感がちょっと湧いた。
初めてのシェアメイトと年越し。蕎麦はおいしかった。良いお年を、いや、良いお年にして下さい。神様。
何ヵ月振りだろう。制服を着た。なんだかみんなと久しぶり。今日は卒業式、ちゃん行けてよかった。また、来年一緒に桜をみよう!
入学式は行けなかった。制服はうれしい。
ありゃま、決まっていた手術がなくなったらしい。ちょっとうれしい。
ちょっと、起きるがだるくなったなぁ
そろそろ覚悟を、僕はDKなんだから。
今まで毎日続いていた日記。振り替えって見ても期待していたものはわき出てこない。僕は16歳になった。
違う生き物になったような手、言うことをきかない。遺書もこんなんじゃ書けない。どうして?どうして?何とかしてよ、さよならぐらい言わせてよ。いやになる。苦しくなる。金属音の甲高い音がした。いやだ、いやだ。拾えないペンケースはなにも言わない。あぁ、だめだ。堪えられない。
「何でだよ……、おい、動けぇ。俺が命令しているんだ。どうして、やめろ、やめろ」
テッシュペーパに顔を擦り付ける。焦ったように母親が入ってきた。なにも言わずに、ただ見つめて動かない。止めてくれ。ちょっと邪魔だ。
「ちょっと、邪魔だ。出てけ。」
こんなつもりじゃなかった。パタっパタっした音と、ガチャンとした音。その後の、無音。
やってしまった。母とはもう話せないかもしれない。くそ、こんなのはいやだ。
「誰か、あと1年だけいや半年。僕に…………
命を下さい、頼む、頼むから。」




