表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第二部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/24

第四十六話「精霊が、二つになっていた」

四十六話目です。


帰ってきた翌日、ルナと北の池に行く話です。


予想外のことが起きます。凪が驚くことは、あまりないですが、今回は少し驚きます。驚きは、世界がまだ知らないことを持っている証拠です。


では、どうぞ。

翌朝、ルナと一緒に北の池に向かった。


シロもついてきた。


クロとキョロは、集落で留守番だった。


「クロが、来たそうにしてたよ」とルナが言った。


「そうでしたね」


「でも、池はシロだけの方がいいと思って、止めた」


「なぜですか」


「クロは、精霊を驚かせるから」


「以前、驚かせましたね」


「覚えてた?」


「覚えています」


ルナが、少し得意そうな顔をした。


「私が正しかった」


「そうですね」


「今日は、シロだけ。シロは精霊と仲いいから」


シロが、耳を動かした。


仲いい、という言葉が気に入ったらしかった。



池に着いた。


春の池だった。


冬に比べて、水草が豊かになっていた。


水は、前に見たときと変わらず澄んでいた。


底まで、はっきり見えた。


「きれいですね」と私は言った。


「毎日来てるから、慣れた」とルナは言った。


「慣れても、きれいですか」


「きれいだよ。慣れたからって、きれいじゃなくなるわけじゃない」


「そうですね」


ルナが、水辺にしゃがんだ。


「いつも、このくらいで来る」


「精霊が来るんですか」


「うん、だいたい来る」


ルナが、水面を見た。


私も、水面を見た。


しばらく、二人で待った。


青い光が、水の中で動いた。


「来た」とルナが言った。


精霊が、水面に近づいてきた。


いつもの青い光だった。


でも、今日は少し、違った。


光が、二つあった。


「ルナ、見えますか」


「見える。二つある」


「そうですね」


「なんで二つ」


「分からないです」


二つの光が、水面に近づいてきた。


一つは、見慣れた精霊だった。


もう一つは、少し小さかった。


動き方が、ぎこちなかった。


「小さい方、ぎこちないね」とルナが言った。


「そうですね。子どもかもしれないです」


「精霊に、子どもがいるの?」


「いるかもしれないです。今まで考えたことがなかったですが」


「精霊も、生まれるんだね」


「生まれるんだと思います」


二つの光が、水面で動いた。


大きい方が、小さい方を導くように動いていた。


「親子かな」とルナは言った。


「そう見えますね」


小さい精霊が、ルナの指に近づいた。


ルナが、指を水に入れた。


小さい精霊が、触れた。


「くすぐったい」とルナは言った。「いつもより、くすぐったい」


「小さいからかもしれないですね」


「小さい方が、くすぐったいの」


「力の加減が、まだ上手じゃないからかもしれないです」


小さい精霊が、ルナの指の周りをくるくると回った。


大きい精霊が、少し離れた場所で見ていた。


「大きい方、見てる」とルナが言った。


「見守っているんでしょう」


「親が子どもを見守ってる感じ」


「そうですね」


シロが、池を覗き込んだ。


二つの光を、交互に見た。


大きい精霊が、シロを見た。


光が少し強くなった。


知っている、という感じだった。


小さい精霊は、シロを見て、少し引っ込んだ。


「怖がってる」とルナが言った。


「初めて見るものが、怖いんでしょう」


「シロは、怖くないのに」


「小さい精霊には、まだ分からないです」


シロが、小さい精霊から少し離れた。


怖がらせないように、距離を取った。


「シロ、気を遣ってる」とルナが言った。


「分かるんでしょう」


「動物は、そういうの分かるんだね」


「分かるんだと思います」


小さい精霊が、また少し出てきた。


今度は、シロを見た。


見ていた。


シロが、動かなかった。


ただ、いた。


小さい精霊が、少しずつ近づいた。


シロの鼻の近くまで来た。


シロが、ゆっくり鼻を動かした。


小さい精霊が、驚いて引っ込んだ。


でも、すぐに出てきた。


また近づいた。


今度は、シロの鼻に触れた。


シロが、動かなかった。


小さい精霊が、光を強くした。


「触れた」とルナが言った。


「そうですね」


「慣れてきた」


「慣れてきましたね」


大きい精霊が、その様子を見ていた。


光が、柔らかくなった。


安心した、という光だった。



池のそばに座って、しばらく見ていた。


二つの精霊が、水の中を泳いでいた。


大きい方が、小さい方を教えるように、前を泳いだ。


小さい方が、後をついていった。


「先生みたいだね」とルナが言った。


「そうですね」


「大きい方が、小さい方に色々教えてる感じ」


「池の泳ぎ方とか、光の出し方とか、教えているのかもしれないですね」


「精霊も、学ぶんだ」


「学ぶんだと思います」


「私も、ナギから学んでる」とルナは言った。


「そうですね」


「でも、精霊は、精霊から学んでる。同じ存在から学ぶのと、違う存在から学ぶのは、どっちがいいの」


「どちらもいいと思います」


「どっちも、ですか」


「同じ存在から学ぶと、深く学べます。違う存在から学ぶと、広く学べます。どちらも、必要だと思います」


「私は、ナギから広く学んでる」


「そうですね。私も、ルナから広く学んでいます」


「私から、学んでることあるの」とルナは聞いた。


「あります」


「どんなこと」


「全部、友達になれる、という考え方。来たいから来る、という動き方。記録することで育てていく、という姿勢。いくつもあります」


ルナが、少し照れた顔をした。


「それ、大したことじゃないけど」


「大したことですよ」


「そう?」


「大したことのように見えないことが、一番大事なことが多いです」


ルナが、また水面を見た。


「精霊、二つになったのに、凪は驚かなかったね」


「驚きました」


「そうは見えなかった」


「表に出なかっただけです。内側では、驚きました」


「驚くことがあるんだね、ナギも」


「あります。驚かない人間は、いないと思います」


「ナギが驚かないイメージだった」


「驚いても、すぐに気になることに変わるので、驚いているように見えないのかもしれないです」


「気になることに変わる」


「驚く、から、気になる、に変わる。気になれば、調べたくなる。それが早いので、驚いているところを見せる時間が短いのかもしれないです」


ルナが、少し考えた。


「私は、驚いたまま、しばらくいる」


「そうですね」


「それって、いけないこと?」


「いけなくないです。驚いたまま、しばらくいることで、驚きが深くなることがあります。すぐに気になることに変えると、驚きが浅いまま終わることもあります」


「どっちがいいの」


「場合によると思います。深く驚いた方がいいこともあるし、すぐに動いた方がいいこともある」


「精霊が二つになったのは、どっち?」


少し考えた。


「深く驚いていたいですね。精霊が子どもを産んだというのは、大事なことです。すぐに気になることに変えないで、驚いていたいです」


ルナが、また水面を見た。


「二つの精霊、きれいだね」


「きれいですね」


「ナギがいなかった間に、生まれたんだね」


「そうですね」


「私が毎日来てたから、池が良くなって、精霊が元気になって、子どもが生まれたのかな」


「そうかもしれないですね」


「じゃあ、私がここにいたから、生まれたかもしれない」


「そうかもしれないです」


ルナが、少し真剣な顔をした。


「すごいな」とルナは言った。


「すごいですね」


「私がいたから、何かが生まれた」


「そうです」


「ナギが、きっかけを作っただけです、って言う感じだけど」とルナは言った。「私は、きっかけじゃないと思う」


「どういう意味ですか」


「ナギが最初にきっかけを作って、私が毎日来て、精霊が元気になって、子どもが生まれた。その流れの、全部が大事だったと思う。きっかけだけじゃなくて、その後が続いたから、生まれた」


私は、少し黙った。


「そうですね」と言った。


「ナギは、きっかけを作っただけ、って言うけど、それだけじゃないよ。きっかけを作る人がいなかったら、私も来なかった。私が来なかったら、精霊も元気にならなかった。だから、どれが欠けても、だめだった」


「そうですね」


「全部が必要だった」


「全部が必要でした」


「だから、きっかけを作っただけ、っていうのは、謙遜しすぎ」


「そうですか」


「そうです」とルナは言った。きっぱりと言った。


しばらく、二人で水面を見た。


二つの精霊が、水の中で遊んでいた。


「認めます」と私は言った。


「何を」


「きっかけだけじゃなかった、ということを」


ルナが、少し満足した顔をした。


「よし」



帰り道、ルナが言った。


「小さい精霊、名前つけていい?」


「精霊に、名前をつけるんですか」


「大きい方は、最初からいるから、なんとなく分かる。小さい方は、新しいから、名前をつけたい」


「つけてもいいですが、精霊が受け入れてくれるかどうか」


「受け入れてくれると思う。さっき、私の指に触れてきたから」


「どんな名前にしますか」


「ルミ」


「ルミですか」


「光、って意味。青い光だから。それと、ルナ、の一文字目と合わせた」


「ルナとルミですか」


「うん。仲いいから、名前が似てていい」


「そうですね」


「大きい方は、アオ、にする。前から青いから」


「アオとルミですか」


「どう?」


「良いと思います」


「あと、ルミは私の妹みたいな感じ」


「精霊が、ルナの妹」


「そう。毎日会うから、妹みたいなもの」


「そうですね」


「ナギも、妹って思っていい?」


「どうぞ」


「じゃあ、ルミは私たちの妹」


「そうですね」


ルナが、少し嬉しそうに歩いた。


「妹ができた」


「そうですね」


「面倒みる」


「ルミが必要としているかどうか分かりませんが」


「必要としてなくても、面倒みる。それが姉の役目」


「そうですか」


「そうです」


ルナが、また振り返った。


池の方向を見た。


見えないが、見た。


「また明日来る」とルナは言った。


「来ます」と言いたそうな顔だった。


「そうですね」と私は言った。


「ナギも来る?」


「来ます」


「ルミに、もう一度会いたい」


「私も、また見たいです」


「じゃあ、明日も一緒に来よう」


「来ましょう」


ルナが、歩き始めた。


軽い足取りだった。


「妹ができた日の記録、今夜書く」とルナは言った。


「書いてください」


「特別に、丁寧に書く」


「良いですね」


「ナギが帰ってきた日の記録と、妹ができた日の記録。二日連続で特別な記録」


「そうですね」


「これ以上特別な日が続くと、全部特別になっちゃうな」


「そうなったら、全部特別でいいと思います」


「全部特別?」


「毎日が特別なくらい、良いことが起きているということですから」


ルナが、また歩いた。


少し考えながら歩いた。


「それって、いいことだね」と、少し後で言った。


「そうですね」


「じゃあ、毎日特別に書く」


「書いてください」


「たいへんだな」とルナは言った。


でも、嬉しそうだった。

四十六話目、書きました。


精霊が二つになっていた、という展開は、この物語で初めて「凪が驚く」場面を作りたかったからです。凪はいつも淡々としている。でも、内側では驚いていた。驚きが、すぐに気になることに変わるから、驚いているように見えないだけ。ルナがそれを見抜いた場面でした。


「きっかけだけじゃない、全部が必要だった」というルナの言葉。凪がずっと「きっかけを作っただけ」と言い続けてきたことへの、ルナからの反論でした。謙遜することの大切さと、自分の役割をちゃんと認めることの大切さ、両方があることを、ルナが教えてくれた場面です。凪が「認めます」と言えたことが、この話の一つの成長でした。


アオとルミという名前をつけたのは、ルナがまた「全部友達になれる」を実践した場面でもあります。名前をつけることで、関係が始まる。ルミを妹と呼ぶことで、毎日会う理由がさらに強くなる。


次話では、集落の状態の詳しい確認と、少し遠くからまた気になる話が届き始める予定です。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ