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偽情報の王国で、仮面は割れる  作者: 梓水あずみ
北線の削除

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78/157

78.綴じる前の印

役所の夜番は、灯りの数で嘘をつく。


表の窓口は落ちている。

けれど、裏の廊下だけ二つ多い。


アークは役所裏の荷通し口の影で、その灯りの位置を見ていた。


今夜の戦場は役所の中だ。

狙うのは帳場そのものではない。

朝の前に紙を“正しい形”へ揃えている机だ。


白仮面は付けていない。

付けると門が閉じる。


門に触るのは、札が落ちてから。


ミラが囁く。


「鍵番、交代しました」


交代は嘘を混ぜる。

混ぜた嘘は、誰の責任にもならない。


責任にならない嘘は、紙が好きだ。


リオが影の中で言う。


「制服の靴、また来た」


細い踵。

同じ歩幅。

制服の足。


制服の足が荷通し口へ近づく。

抱えているのは薄箱。


薄箱の封蝋は赤い。

赤いのに、新しい匂い。

閉じ直した封だ。


制服の男が荷通し口の鍵へ手を伸ばす。


その前に、鍵番の男が一歩出て、鍵束を差し出した。

差し出し方が慣れている。

慣れているほど、危ない。


危ないのは、当たり前になることだ。


鍵が回り、荷通し口が開く。


開いた瞬間、紙粉と油の匂いが漏れた。


油。

机の引き出しの油。

紙が滑るための油。


滑る紙は、よく回る。


制服の男が中へ入る。

入ってすぐ、薄箱を床へ置く。

置いた音が軽い。

軽いのは中身が少ないからだ。


中身が少ない薄箱は、札の“余り”だけを運ぶ箱だ。


余りは赤点になる。


赤点は狩りになる。


ミラが低く言う。


「……あの箱、役所の箱じゃありません」


「形は役所」


アークが言う。


「でも印が違う?」


ミラが頷く。


「封蝋の下に、黒い点が混ざってます」


黒点。


門の印。


外側の狩りと、内側の狩りが繋がった。


繋がったなら、門は近い。


アークは踏み込まない。

踏み込めば閉じる。

閉じたら拾えない。


今夜は拾うだけだ。


拾うのは、箱の置き方。

拾うのは、鍵番の結び目。

拾うのは、黒点が混じった封蝋の匂い。


リオが言う。


「箱、二つ目が来る」


二つ目。


余りが増えた。


増えた余りは、誰かが“狩りを増やした”証拠だ。


狩りを増やす理由は一つ。

生活の声が先に出始めたから。


生活が先に出ると、狩りが遅れる。

遅れるのを嫌がって、紙が増える。


紙が増えれば、足が出る。


足が出れば、拾える。


アークは影の中で息を整えた。


「……鍵番を折る」


ミラが頷く。


「折れたら、門が焦ります」


焦れば札が落ちる。


落ちた札を拾えば、門は開く。


開いた門の向こうへ行くのは、そのあとだ。


今夜は、外側の机を折る準備。


その準備で、黒点が混ざった。


混ざった黒点が、次の順番を呼んでいる。

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