第67話:アレハンドラを討つ!
「『ホーリークロス』!!」
アイリスが放った神聖な十字の光が、アレハンドラを貫こうと迫る。
「元婚約者を狙うか。容赦がないな……クックックッ」
アレハンドラは嘲笑いながら、紙一重でその光を回避した。
「貴様なんて……貴様なんて、ツトム殿の足元にも及ばん!貴様のような卑劣漢が元婚約者だったなど、一生の恥だ!私の剣でその身を刻んでくれる!!」
アイリスが怒りの咆哮とともに剣を振るうが、アレハンドラは背中の羽を羽ばたかせ、ヒラヒラと翻弄するように避けていく。
「グライザ!これを使え!!」
ツトムがアイテムボックスから取り出した『太陽の石制御ユニット』を投げ渡す。
「それで炎を出すんだ!最高火力だ!!」
「わかった! 焼き尽くしてやるぜ!!」
グライザがユニットを天に掲げると、氷の地面から巨大な火柱が何本も噴き出した。だが、アレハンドラは空中でスルスルとその熱波さえも躱してみせる。
そこへ、外の魔軍を殲滅したルカが合流した。
「ツトム!外の雑魚は片付けたわ。加勢するわよ……私は、ツトムのそばでずっと、貴方を守るわ」
「ルカ、助かる!最大出力の『ライトニング』だ!!」
「いくわよ! 上級雷魔法、『ライトニングゥゥゥゥ』!!」
激しい雷光がアレハンドラを襲う。彼はそれを嘲笑うように避けたが、その着地先には、ツトムが仕掛けた罠が待っていた。
「『マルチング』!! 羽を包み込め!!」
「そんなものが効くか!ん……ぐわあああ!?な、何をした……っ、羽が……溶ける!?」
アレハンドラが苦悶の声を上げる。ツトムは隣でシンシアの手を強く握りしめていた。
「ただのマルチじゃない。シンシアの力を借りた浄化のマルチだ! 魔の力を浄化し、僅かに掠っただけでも貴様の魔力を根こそぎ削り取る!」
(((わぁぁぁぁぁぁぁ!!ツトム様の手の温もりが……!好きぃぃぃ!浄化の魔力が止まりませんわぁぁ!!)))
シンシアの脳内は幸福感で溢れ、浄化の出力は限界を超えて跳ね上がる。
「シンシア、負担をかけてすまない」
「ツトム様……いいのですぅ。お役に立てるだけで、私はぁ……(好きぃぃぃ!)」
羽を失い、地面に這いつくばるアレハンドラ。その動きは、目に見えて鈍くなっていた。
「何をした……何をしたのだ、ツトム!!どこまでも、どこまでも小癪な真似を……!殺す、殺す、殺す!!」
「気づいていなかったのか?ずっと雨が降っていただろう。ニーニャの降らせた浄化の雨だ。癒しと同時に、貴様の魔を削り、弱らせるための罠だったんだよ」
「土と聖の魔法、『浄化のマルチング』!!」
ツトムの叫びとともに、シンシアの聖なる力を宿した漆黒のビニールが、アレハンドラを完璧に縛り上げた。
「ぐわあああ! な、なぜだ!貴様を殺すことだけを考えてきたこの私が、なぜ負ける……ッ!」
「アレハンドラ、お前の敗因は、いい仲間に恵まれなかったことだよ!」
ツトムは真っ直ぐに敵を見据え、叫んだ。
「今だ! 僕の愛するアイリス!! トドメを刺せ!!」
「あ、愛するアイリスだとぉ!? 力が、力が十割増しだぁぁ!!」
その言葉を浴びたアイリスの魔力が爆発する。
「『愛のホーリークロス』!! いけぇぇぇーーーー!!」
眩い十字の光が、マルチに拘束されたアレハンドラを無慈悲に切り刻み、ついに宿敵は絶叫と共に霧散した。
「勝った……!」
ツトムが拳を握りしめた。しかし、背後の4人は祝福どころではない「おかしいわよね?」という顔で固まっていた。
「ねーねー、ツトム。今、さらっと『愛するアイリス』って言ったわよね?よね!?」
ルカが引き攣った笑顔で詰め寄る。
(私だって、私だって一度も言われたことないのに……!)
「……うぅぅ、悪くない。……いや、最高だぁ」と、アイリスは顔を真っ赤にして放心している。
「太陽の石制御ユニット、なかなかの火力だったな。新兵器の開発への可能性を感じるぜ!」と、グライザだけが冷静に分析する横で、ハルとシンシア、ニーニャが次々と訴える。
「わっちも頑張ったでありんすよ……愛してほしいでありんす!」
「私はツトム様とお手を、お手を何度もぉ……!(好きぃぃ!) 私も愛されたいですわぁ!」
「私も頑張ったよねー!愛して、勇者様!」
「ああもう、みんな最高だった!ありがとう!! みんな大好きだぁぁぁぁ!!」
ツトムがやけくそ気味に全員への愛を叫ぶと、ようやくその場は(一瞬だけ)収まった。




