第64話:新たな仲間!ニーニャ!!
「族長!ただいま戻りました。娘さんの道案内、本当にありがとうございました。……では、娘さんをお返しします」
ツトムの清々しい言葉に、周囲の空気が一変した。
(えっ?ツトムどうしたの……?いつもの流れなら、なし崩し的に仲間に加えるやつじゃない!)
ルカが不思議そうに目を丸くする。アイリスもたまらず口を挟んだ。
「ツトム殿!ニーニャ殿はお仲間に加えないのか?」
「あー、でも族長の娘さんをこれ以上危険な目に遭わせるわけにはいかないだろ?」
ツトムのあまりに「まとも」な判断に、ルカの顔に隠しきれない笑みが溢れ出す。
(ツトム!どうしたの!?ツトム!ツトム!!ツトムゥゥゥゥ!!!最高よ!!)
「勇者殿、またいつでもいらしてください」
「ああ、また来るよ!バイバイ、ニーニャ」
「勇者様、またねー!」
「ニーニャはお仲間にしないんでありんすね」とハルが余裕の表情を見せれば、「ニーニャさんはぁ、一緒には来ないのですねぇ」とシンシアも極上の聖女スマイルを浮かべる。「ニーニャは来ないんだな!」とグライザも太鼓判を押した。
「じゃあ、ドワーフの村に飛ぶわよ!」
ルカが意気揚々と移動魔法を唱えようとした、その時だった。
「おーい!勇者様ぁ!やっぱり私も行きたーーい!!」
ニーニャが猛ダッシュで駆け寄り、ツトムの背中にピョンと抱きついた。
「あっ『トランス』!!」
時すでに遅し。ルカの魔法は発動し、一行は光に包まれた。
ドワーフの村に着くと、再び技師長が豪快な笑いで迎えてくれた。
「勇者様!また随分と際どい格好の女子が増えたな!」
「砂漠の街のニーニャさん。踊り子です」
「ニーニャです、よろしくねー!」
ニーニャが屈託なく挨拶をすると、技師長は(これはこれでいい!)と内心で深く頷いた。
「そういえば勇者様、前にちょろっと聞いてたからな。ついでになー超強化ビニールも作ってみたぞ」
技師長が差し出したそれを手に取った瞬間、ツトムの目が見開かれた。
「こ、これはすごい……!まさか、この世界でここまでの透明度と強度を持った素材ができるなんて!」
ツトムは感激のあまり技師長を抱きしめた。
「ありがとうございます!これなら氷の大地に、これ以上ない立派なビニールハウスが建てられそうです!」
「勇者様……くる、苦しい……ッ!」
ツトムの全力の抱擁に、技師長が顔を青くして呻いた。
(……どうせ抱きつかれるなら、あの女子たちの誰かが良かったぜ)
技師長が内心でそんな贅沢な不満を抱いている横で、ドワーフの村に不穏な空気が立ち込める。
「チッ……」
ルカの鋭い舌打ちが響いた。彼女は般若のような顔でツトムに詰め寄る。
「ねーねー、ツトム。さっき何て言ったっけ? 『族長の娘を危険な目に遭わせられない』じゃなかったかしら? 言ったわよね? よねー?」
「ルカ……そんなに詰め寄らないでくれよ。ついてきちゃったものは、もう仕方ないだろう?」
ツトムは泳ぐ視線を必死に固定し、経営者特有の「終わったことを議論しても生産性がない」という理屈で、苦し紛れの防戦一方だ。
ハルとシンシアも、先ほどの余裕はどこへやら、ニーニャを牽制するように左右からツトムの脇を固める。
((((((結局、増えてるじゃないのよ!!))))))
そんな一触即発の空気を察してか、技師長が髭を震わせて提案した。
「おいおい、そんなに殺気立つな。今日はもう遅い。ひとまずうちに泊まっていけ。明日、万全の準備をして氷の大地へ向かうのが一番だぜ」
「……そうだな。技師長、お言葉に甘えるよ」
ツトムはこれ幸いと、ルカの追及から逃れるように宿泊の準備へと逃げ込んだ。




