第61話:雨を呼ぶ踊り子ニーニャ
「では、ニーニャさんに会わせていただけますか?」
「こちらです、どうぞ」
族長に案内され、一行は族長の屋敷へと向かった。
族長の家の一室。そこには、熱気に当てられ、ぐったりと衰弱したニーニャが横たわっていた。
「ツトム、わっちがベニ・ハルーカを食べさせてあげるから、ツトムはお部屋の外で待っておくんなんし」
「そうですわぁ。私も浄化の魔法で回復のお手伝いをしますぅ。ツトム様はお疲れでしょうからぁ、どこかで休んでいてくださいぃ」
「おいおい……二人とも、いいのか? 悪いな」
(ハル、シンシア、ナイスよ!要は接触させなきゃいいのよ。……それにしても、ツトムが新たな女子を惹きつける魅了の農家だってことに、今頃気づくなんて私もダメね!)
ルカが内心で自らの油断を猛省していると、アイリスが街の通りを指差した。
「ツトム殿!あそこに涼しげな服が売っている。あれを買えば、今のこの……その、せくはら?とやらにならずに済むのではないか?」
「アイリス、それいいわね!ツトム、私たちに服買って!」
「俺も、今のこの格好は流石に……なんというか、落ち着かねぇんだよな」
グライザまでが珍しく恥じらっている。アイラは一足先に氷の大地へ帰宅したため、今は五人(+ツトム)だ。
「よし。じゃあ、まずはルカ、アイリス、グライザの服を買おう。後でシンシアとハルの分も一緒に買いに行こうな」
ツトムは部屋の中にいる二人に声をかけ、意気揚々と買い物へと向かった。
一方、ニーニャの枕元では。 ハルが冷やしベニ・ハルーカをニーニャの口に運ぶと、彼女の身体が柔らかな光に包まれ、見る間に魔力が満ちていった。
「ふふぅ、もう少しで起きそうですわねぇ」
「わっちらのおかげで元気になったでありんす。後でツトムからたっぷりご褒美をもらうでありんすよ」
「そうですわねぇ。うふふぅ……そうしましょうかぁ」
二人は顔を見合わせ、ツトムとの甘い時間を妄想して黒い笑みを浮かべた。
「……あ、あれ? 私、寝てたの……?」
ニーニャがゆっくりと目を開ける。
「ニーニャ! ニーニャ、大丈夫か!?」
駆け寄ってきた族長に、ニーニャは力強く頷いた。
「うん、もう大丈夫。身体がすごく軽いよ!」
ニーニャは看病してくれた二人に「ありがとう」と微笑むと、ふと部屋を見渡した。
「他に、仲間の人はいないの?」
「ニーニャを助けてくれたのは、この二人と……あとは勇者様たちもいるぞ!」
「勇者様……? 私、会いたいわ!」
ニーニャのキラキラした瞳に、族長は「今呼んでくるぞ!」と脱兎のごとく部屋を飛び出してしまった。
「あ……あーあー……」
呆然とそれを見送るシンシアとハル。二人の「隔離作戦」は、身内の手によってあっけなく崩壊したのだった。
「勇者殿!娘が、ニーニャが目を覚ましましたぞ! ありがとうございます!」
族長が息を切らして駆け寄り、ツトムの手を引いて屋敷へと急がせた。
「さあさ、戻りましょう!」




