第59話:軽装すぎるって
「エルフの森からそんなに離れていないと思ったけど……ここを歩くのか」
アイリスが額の汗を拭いながら、陽炎の立つ砂丘を見上げた。
「アイリス!重い鎧は僕のアイテムボックスに入れるから、すぐに脱ぐんだ。そんな格好じゃ熱中症になるぞ!」
「ツトム殿……ねっちゅうしょう!とは?」
「汗をかきすぎて水分が奪われ、倒れて……最悪、死ぬこともあるんだ。アイリスに死なれたら、一体誰が僕の盾になってくれるっていうんだ?」
「あぁ〜〜……キューーーーーン!!!!」
アイリスの脳内に、これまでにない衝撃が走った。
「ツトム殿を守れるのは……やはり、この私しかいないのだな!分かった、今すぐ脱ごう!」
パチパチと手際よく鎧の留め具を外し、アイリスはツトムに装備を預けた。
しかし、鎧を脱いだ彼女の姿を見て、ツトムは別の意味で頭を抱えた。
(……熱中症は心配だが、みんなの露出度が激しすぎる! ほぼ下着じゃないか。王都で水着でも買っておけばよかった……!)
そんなツトムの動揺を余所に、ハルが涼しげな顔で腕を組んできた。
「ツトム、わっちは涼しいでありんすよ……♡」
「ハ、ハル! 涼しいのは分かったから離れよう! 暑いから!」
「離れないでおくんなんし」
密着してくるハルのたわわな感触が腕に伝わり、ツトムは叫んだ。
「ダメーーー!離れてっ!」
(もうセクハラギリギリだ……煩悩よ、どこかへ行け! 最近こんなのばっかりだぞ。これはハニトラか? 国家規模のハニートラップなのか!?)
「ツトム!何ブツブツ言ってるのよ。早く行かないと暑くて干からびちゃうわ!」
ルカの催促に振り返ったツトムは、さらに絶句した。
「おぉぉぉい!ルカ、なんだその格好は!!」
「これしか着るものがないんだから仕方ないじゃない!」
「それはもう逆セクハラだぞ!」
「ツトム、うるさいわね……。さっきから何なの? 私たちをそういう目で見てるってこと?」
ルカにジトーっと見つめられ、ツトムは冷や汗を流した。
「ち、違う!そんなことない!!」
(……あー、少し見てます。だって現代にはこんな美しい人たちいない……あぁぁ…本当にごめんなさい!)
もはや限界に達したツトムは、半ばヤケクソで叫んだ。
「あーもう!みんなが可愛かったり綺麗だったりするから、こっちも困るんだよ!!」
その瞬間、全員がピタリと足を止めて振り返った。
「「「「「かわいい!? 綺麗!?」」」」」
砂漠の熱さのせいか、それともツトムの言葉のせいか。 顔を真っ赤にした5人は、なぜか一気に元気を取り戻した。
「……さぁ、砂漠を抜けるわよ!どんどん進むわよ!」
「ああ、ツトム殿の盾として、私はどこまでも行こう!」
にこやかな(そして少し浮かれた)足取りで、一行は猛烈な勢いで砂漠の街へと突き進んでいった。
ツトムのかわいいや綺麗というヤケクソな褒め言葉でブーストがかかった5人のペースは凄まじく、一行はあっという間に砂漠の街へと到着した。




