第58話:ドワーフ村・エルフの森経由砂漠行き
「それじゃ、ひとまずドワーフの村からエルフの森を経由して、砂漠の街に向かおう!」
ツトムの号令に、5人は一応頷く。
(砂漠の街……そこに例の踊り子がいるのよね……)
新たなライバル出現の予感に、5人の足取りはこれまでにないほど重いのだった。
「ドワーフの村へ! 移動魔法、『トランス』!!」
ルカの魔法であっという間に到着した一行を、技師長が豪快な笑いで出迎えた。
「勇者様、また一段と綺麗な女子が増えたな!」
「王都の教会の聖女だったシンシアですよ」
ツトムの紹介に、技師長は目を見開いた。
「おお、あの慈悲深き乙女、シンシア様か!」
「技師長様、初めましてぇ。お会いできて光栄ですぅ」
シンシアが極上の微笑みで挨拶を返すと、再び「ズキャーーーーーン!!!!」という衝撃音が響いた。
(……技師長、分かりやすすぎるな)
ツトムは苦笑しながらも、本題を切り出した。
「技師長、ビニールハウスを建てるための鉄パイプとかを作っていただきたいのです」
ツトムの図面と説明を聞き、技師長は即座に理解した。
「なるほどな、それならこう加工すれば造作もねぇ。任せておけ!」
その横で、グライザも太陽の石を運ぶための特殊な保管箱を完成させていた。
「これで太陽の石の熱も漏らさず運べるぜ。完璧だ!」
「よし、パイプ一式と留め具のパッカーは技師長にお願いした。次は砂漠を目指そう」
ツトムが号令をかけると、ハルが少し躊躇いながら口を開いた。
「……ツトム、エルフの里の様子を、少しだけ見に行きたいでありんす」
(エルフの森もルカの転移魔法一発か。本当にルカ様様だな。……よし、たまには口に出して伝えるか……)
「ルカ、いつも転移魔法でみんなを運んでくれてありがとう。助かってるよ」
ツトムが屈託のない笑顔を向けると、ルカは顔を真っ赤にして視線を泳がせた。
「な、何よ急に……。褒めたって何も出ないんだからね!」
「ルカ殿、頬が赤いぞ? 熱でもあるのか?」
アイリスの天然な問いかけに、ルカは「うるさいわねー!行くわよ、『トランス』!」と叫んで魔法を放った。
森に辿り着くと、ハルの義妹が族長として立派に立ち振る舞っていた。
「緑が、だんだんと戻ってきたね」
「そうでありんすね……。全部、全部ツトムのおかげでありんす!」
感極まったハルがツトムに抱きつくが、即座にルカの鋭い声が飛ぶ。
「ハル!業務外のツトムへのお触りは禁止よ! 抜け駆け厳禁!」
「そうだぞ……」
アイリスたちも深く頷く。
(((((みんな、必死に我慢してるんだから!)))))
「ふぅ……エルフの森は空気が美味しくて最高だな」
ツトムは柔らかな草の上にゴロンと寝転んだ。
「こんな素敵な森があるのに、魔王がいるなんて嘘みたいだ……」
軽く現実逃避を決め込むツトムの横で、グライザも「魔力も満ちていて、みんな元気そうだな」と森の復興を喜んだ。
そこへ、「あら、お義姉様」と族長が姿を現した。
「いらっしゃっているなら、一言声をかけてくださればよろしいのに」
ハルは「ははは……」と引き攣った笑いで誤魔化す。族長の座を義理の妹に押し付けてツトムと旅に出たことに、少なからず負い目を感じていたのだ。
「里がどうなったか少し見に来ただけなんだ。急いで砂漠へ行かなきゃいけないから、声をかけずに済ませようと思ってね」
ツトムがハルの心中を察し、優しくフォローを入れた。
(……なんて素晴らしいお方でありんすか。……もしや、わっちの心が読めるのでありんすか?)
ハルは感動に瞳を潤ませ、改めてツトムに惚れ直していた。
「さて、少し寄り道したけど、いよいよ砂漠の街へ向かおうか!」




