第57話:氷の女王の贈り物
「よし、まずは耕すか!ハル、シンシア、手を貸してくれ!」
「はい、喜んでぇ!」
「わっちの手は、いつでもツトムのために空けてありんす」
二人の手を握り、ツトムは精神を集中させた。
「土魔法、『カルチ』!!」
凄まじい轟音と共に氷の大地がバリバリと割れ、その下から眠っていた土が力強く跳ね上がった。
ハルの精霊の加護と、シンシアの聖なる浄化作用が混ざり合い、ベニ・ハルーカを育てるために最適化された黄金の土へと生まれ変わる。
「でもツトム!この猛吹雪じゃ、すぐにまた雪に埋もれて凍っちゃうわよ」
ルカが心配そうに空を仰ぐ。ツトムは不敵に笑って答えた。
「ああ。だから今回はビニールハウスを建てようと思うんだ」
「「「「「びにーるはうすぅ……?」」」」」
聞き慣れない言葉に全員が首を傾げる。
「土はなんとかなる。あとは、常に熱を出し続ける熱源……特殊な鉱石があればいいんだけど」
「それなら心当たりがあるぜ」
グライザがニヤリと笑い、ハルが「あれでありんすね」と頷く。「太陽の石だな!」とアイリスが言えば、シンシアも「ああ、砂漠に伝わる秘宝ですねぇ……」と合点がいったようだ。
「太陽の石って何よ? どこにあるの?」
詰め寄るルカに、グライザが目を輝かせて説明した。
「砂漠の街のさらに先、砂漠の洞窟に封印されている石だ。常に高熱を放ち続けるから、これがあれば氷の大地でも温室が作れる。……へへ、その洞窟の構造、一度拝んでみたかったんだ」
「よし、僕がアイラ様に事情を説明してくる。みんなは砂漠へ向かう準備をしておいてくれ」
ツトムがアイラ女王に事情を話すと、彼女は静かに微笑み、自分の指から一つの輝く装飾品を外した。
「わかった……勇者よ。これを指にはめていくがよい」
「これは……指輪ですか?」
「氷の指輪じゃ。私をいつでも呼び出すことができる。……それを、左手の薬指にはめるのじゃ」
ツトムは特に疑うこともなく、「分かりました」と左手の薬指に指輪をはめた。
「アイラ様、なんだか顔が赤いようですが……大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃ!早く行くがよい!」
背中を押されるようにして部屋を出るツトム。アイラは火照る頬を抑えながら、小さく呟いた。
(あの指輪は、誰にでも授けるものではないのじゃが……。勇者は、その意味を理解しておるのかのぅ)
ツトムが仲間の元へ戻ると、真っ先にルカの目が鋭く光った。
「……ツトム。その左手の指にあるやつ、何?」
「ああ、アイラ様がくれたんだ。アイラ様召喚用だって」
「なんで左手のその指なのよ!意味知ってるの!?」
「???」
困惑するツトムに、ルカは深い溜息をついて吐き捨てた。
「……そこは『永遠の愛』とか『深い絆』を誓う指なのよ!」
(ツトムって、本当こういうことに関しては大バカなんだから……!)
ルカは心の中で悪態をつきつつ、「あの女王、なかなかの策士ね……」とボソリと漏らした。




