第53話:勇者!お家をもらう
かつての英雄が魔族に堕ちたという重い事実。一行は新たな仲間を加え、再び王城へと向かった。
王の間。玉座に座る王の肩は、かつてないほど落胆に震えていた。
「勇者よ……。我が息子が魔王の軍門に下り、あろうことかそなたを斬りつけるなど……。本当に申し訳ない。もはや、謝って許されることではないと思うが……」
「王様。顔を上げてください。僕はこうして生きています。傷も、みんなのおかげですっかり治りましたから、大丈夫ですよ」
ツトムのいつもの屈託のない笑顔に、王は救われたように息を吐いた。
「王様、一つご相談が。……実は、聖女シンシアを僕たちの仲間に引き入れたいのです。教会側が猛反対しているのですが、説得をお願いできないでしょうか」
「おっ、そこにいたのか、シンシア」
「はい……王様ぁ。私はぁ、ツトム様と共に魔王の呪詛で侵食された土地を浄化しぃ、人々を飢えから救いたいぃ。そう願っておりますぅ」
シンシアの決意という名の熱視線を感じ、王は深く頷いた。
「相分かった。司祭たちには私から話しておこう。……勇者よ、我が息子を頼んだぞ。もし、どうしても言葉が届かぬ時は……討伐しても構わん」
苦渋の決断を口にした王は、気分を変えるように地図を広げた。
「さて、次の行き先だが。ソボック村のさらに北、氷の大地には『氷の女王』がおられる。女王も、各国の会議で「ベニ・ハルーカを食べたい!」と漏らしていたそうだ。その手前には魔力回復と疲労回復と美肌に効く雪見温泉もあるという。……さらに東の砂漠の街ではオアシスが枯れ、雨を降らせる踊り子が魔力を失い、飢餓に苦しんでいるとも聞く」
「王様、次の目的地まで示していただき、ありがとうございます!」
ツトムが意気込むと、ルカが力強く拳を握った。
「ツトム!もう魔王を倒しに行きましょうよ!この戦力なら絶対に勝てるわ!」
「ああ、私の新調した剣で魔王を真っ二つにしてやろう」
「俺の秘密兵器も、魔王相手に試してみたいぜ」
「わっちはもう、ツトムが傷つかないように常にバリアを張るでありんす」
「私のホーリーがあれば、魔王も一撃ですわぁ!」
(((((これ以上、新しい仲間は、ぜぇぇぇぇったいに増やさせないんだから!!)))))
凄まじい団結力を見せる5人に、王は苦笑いしながら付け加えた。
「……ところでツトム、そなたには帰る家がなかろう。我が王都の別荘を一つ進呈しよう。これで、息子が傷つけた詫びになれば良いのだが」
「えっ、家なんて……そんな、恐れ多いです!」
遠慮するツトムの横で、ルカが目をキラキラさせて食いついた。
「お家よ、お家!もらっておきましょう、ツトム!」
「王様のご厚意だ、甘えておこう」
アイリスにまで促され、ツトムはついに頷いた。
「……はい。謹んで頂戴いたします」
その瞬間、5人の頭の中ではツトムとの愛の巣という、ふわふわで桃色な妄想が一斉に爆発していた。




