第52話:5人目の仲間『聖女シンシア』
一方、ホテルの食堂では、四人が神妙な面持ちで朝食を摂っていた。そこに、「おはよう」と清々しい顔をしたツトムが現れた。
「みんな、僕を治してくれたんだろ? ……本当に、ありがとう」
ツトムの温かな言葉に、シンシアがたまらず顔を伏せた。
「……私の判断が遅れたせいでぇ、ツトム様を死の淵に立たせてしまいましたぁ。……申し訳なくてぇ、私ぃ……」
泣きそうなシンシアの肩に、ツトムはそっと手を置いた。
「シンシアが無事なら僕は本当に嬉しいよ」
ツトムが太陽のような笑顔を向けると、シンシアの脳内で『ズキャーーーーン!』という衝撃が走った。
「……っ! ……すき……」
四人には聞こえないほどの小さな、けれど確かな呟き。彼女の心は一瞬で、完全にツトムに撃ち抜かれてしまった。
「さて、僕も朝ごはんを食べてこようかな!」
本人は自覚がないまま、ツトムは軽やかな足取りで料理を取りに向かった。
ハルが、まだ少し赤らんだ顔で食堂に現れた。
「……わっち、すっかり元気になりんした」
そう言って、上目遣いでツトムをじっと見つめる。その視線には、隠しきれない熱と秘密が混じっていた。
「ハル!? ……あんた、何かあったわね!?」
ルカの鋭いツッコミに、ハルは「な、何もないでありんすよ……」と顔を逸らして身悶える。その様子は、誰が見ても「何かあった」と言っているようなものだった。
そんな騒がしさの中、シンシアがツトムの前に跪き、真剣な眼差しで訴えた。
「ツトム様ぁぁぁ。私もぉ……私も旅にご一緒させてくださいぃ。私はぁ、呪詛に侵食された畑の浄化でお役に立てますぅ。……もう二度と、あんな悲劇を繰り返させたくないのですぅ」
「シンシア!?」
四人のヒロインに激震が走る。
「シンシア、あなたがいなくなったら教会が困るわよ! 司祭さまたち、泣いちゃうわよ!? ねぇ!?」
ルカが必死に同意を求めれば、アイリスも頷く。
「そうだ!国家的な損失だぞ、聖女が不在になるのは!」
「俺もそう思う。教会に残るのが一番だぜ」
「わっちも……そう思うでありんす!」
四人の意見がこれほどまでに一致したことはなかった。
しかし、シンシアは一歩も引かない。
「このまま教会に帰ってはぁ、勇者様に恩を仇で返すことになりますぅ。私はぁ、私の意志で勇者様をお守りしたいのですぅ」
ツトムは腕を組み、考え込んだ。
(……確かに、また魔王軍に土地を汚された時、シンシアの浄化の力があれば、すぐに作物を育て直せるかもしれない。彼女の力は、これからの開墾に不可欠だ)
「……シンシア。君さえ良ければ、一緒に来てくれないか? 君の力は、僕にとって必要なんだ」
「はいっ……!喜んでぇ!!」
(あああああ! ツトムに必要だ!って言われちゃった……!好き、もう一生ついていく……っ!)
内心で悶絶するシンシアに対し、ルカたちは絶望の表情を浮かべた。
(あぁ……ツトム、完全に騙されてるわ。あのあざと女子の術中に……!)
だが、ツトムの顔から甘さは消えていた。
「さて……。まずは王様に、アレハンドラ殿が魔王の軍門に下り、変わり果てた姿になっていたことを報告しに行こう」




