第50話:シンシアの本性
シンシアは貪るようにページを捲り……ある記述を見つけた瞬間、その顔が驚愕に染まった。
「えっ……。……司祭様ぁ、私の知らない地下室がぁ、この教会にあるというのですかぁ?」
「は、はい……じ、実は……」
司祭が祭壇の裏にある隠し扉を開くと、そこには闇の底へと続く不気味な階段が現れた。
「しかしながら、地下には強力な魔物も棲みついており、我らではもはや手出しできずに……」
司祭が警告を言い終わるよりも早く、四人の姿はすでに地下への階段へと消えていた。
「魔物だろうが何だろうが、ツトムを救う材料があるなら、叩き潰して持ってくるだけよ!」
ルカの決意に満ちた声が、暗い地下室に響き渡った。
地下へと降りるやいなや、闇の中から無数の魔物が這い出してきた。しかし、シンシアは怯えるどころか、苛立ちを隠そうともせずに吐き捨てた。
「……あー、もう!雑魚はいいからぁ!邪魔ぁ!!」
凄まじい魔力とともに放たれた『ホーリー』が、通路を埋め尽くしていた魔物たちを一瞬で塵へと変える。その苛烈な戦いぶりに、ルカは確信した。
(……あー、やっぱり。やっぱりこいつ、相当なあざと女子だったわね……!)
「負けてられないわよ! 上級火魔法、『ヘルフレイム』!!」
「秘技、『ホーリークロス』!!」
「食らいやがれっ!!」
ルカの業火、アイリスの神速の斬撃、そしてグライザの唸りを上げるレンチ投げ。四人の怒涛の攻撃が地下室を震撼させる。
最下層に辿り着くと、祭壇の上に輝く小瓶が見えた。
「あれねぇ……どんな病も毒も無効にするというぅ、教会の秘宝の古の聖水はぁ!」
シンシアが指差すが、その前に一体の下級デーモンが立ち塞がった。
「おどきなさいぃぃ!!」
シンシアから放たれた凄まじい闘気に、魔族であるはずの下級デーモンがたじろぐ。その一瞬の隙を逃さず、ルカが『ヘルフレイム』を叩き込んだ。デーモンは紙一重でかわすが、そこへアイリスの剣が閃き、デーモンの右腕を斬り飛ばす。
さらにグライザが投げつけたレンチがブーメランのように弧を描き、デーモンの脳天を正確に撃ち抜いた。
「『ホーリー』で、浄化されなさい……っ!!」
トドメと言わんばかりのシンシアの極大魔法が炸裂し、下級デーモンは断末魔を上げる間もなく消滅した。
「聖水は手に入れたわ!急いで戻りましょう!!」
ルカが小瓶を掴み、四人は脱兎のごとく地上へと駆け上がった。呆然と待っていた司祭に、シンシアは足を止めずに言い放つ。
「地下の魔物はすべて掃除しておきましたからぁ!失礼しますぅ!」
なりふり構わずホテルへとひた走る四人。その胸にあるのは、ハルが必死に繋ぎ止めているであろう、ツトムの命だけだった。
ホテルに飛び込んだ四人の目に飛び込んできたのは、膝をつき、今にも力尽きそうなハルの姿だった。
「えっ……間に合わなかったの……!?」
ルカが絶望に顔を歪めたその時、ハルが顔を上げ、弱々しくもいたずらっぽく微笑んだ。
「……ギリギリでありんすよ。わっちを、甘く見ないでおくんなんし」




