第47話:勇者斬られる……
ルカが力強く呪文を唱えると、一行は一瞬で黒く染まった大地へと降り立った。
「……酷い。呪詛の塊になりんしたね」
ハルの言葉通り、かつての黄金色の土壌はどす黒く変色していた。
「ハル、手を貸してくれ。ハルの精霊魔法と僕の『カルチ』を合わせれば、土を浄化できるはずだ」
「わっちの手を握っておくんなんし」
ハルが差し出した手を、ツトムは無意識に強く握り締めた。そこには、経営者で農家で勇者としての底知れぬ怒りがこもっていた。
「……痛いでありんす、ツトム」
「あ……ごめん、ハル!」
謝るツトムだったが、その瞳にはこれまでにない険しさが宿っている。
「土魔法、『カルチ』!!」
魔法が放たれ、汚されたベニ・ハルーカごと大地が掘り返されていく。
「絶対に許さない……。僕が、僕たちが精一杯育てた作物をこんなことにした奴を、僕は絶対に許さないぞ!」
「そうね。私たちの努力を無駄にさせたこと、後悔させてやりましょう!」
ルカたちも怒りを露わにする。しかし、ツトムが「次はソボック村の聖女様に加勢だ!」と叫ぶと、女性陣の足取りが急に鈍くなった。
「そ、そうよね……」
「……ああ、行かねばならんな」
「どうした、みんな?」
不思議そうに首を傾げるツトムに、四人は内心でため息をついた。
((((本当、この天然鈍感ツトムは……!))))
ソボック村に辿り着くと、そこには一人で祈りを捧げる聖女シンシアの姿があった。
「聖女様! 加勢するぞ!!」
「まぁ……ありがとうございますぅ」
ふんわりと微笑むシンシアに、四人の視線が突き刺さる。
(ゆるふわ系ね……。っていうか、あれ絶対にあざといわよ!)
「アンデッド化した民はぁ、もう戻りません……。せめて私の『ホーリー』で供養をぉ」
シンシアの言葉を合図に、ツトムたちの怒りが爆発した。
「最大火力よ! 『ヘルフレイム』!!」
ルカの業火がアンデッドを焼き尽くし、アイリスが新調した剣を閃かせる。
「秘技!『ホーリークロス』!!」
ハルが精霊の守護で戦線を支え、グライザのレンチが骨を砕く。
「僕は『マルチング』でまとめて足止めだ!」
荒れ狂う戦場の中、ツトムは黒いシート状の魔力でアンデッドを絡め取っていく。
(……なかなか良い連携だ。これなら勝てる!)
ツトムが手応えを感じる一方で、聖女シンシアは戦うツトムの背中を、熱っぽい瞳で見つめ始めていた。
「シンシア、危ない!!」
ツトムの鋭い叫びが響く。戦いの中、ツトムの無駄のない動きに見入ってしまっていたシンシアは、背後から迫る凶刃への反応が遅れた。ツトムは反射的にシンシアを突き飛ばして庇うが、その代償として左の脇腹を浅く切り裂かれた。
「ツトム様ぁぁぁぁ!!」
シンシアの悲鳴が上がる中、アンデッドの群れの奥から、どす黒い笑い声が漏れる。




