第46話:ソボック村とアンデットと聖女シンシア
「勇者様! 勇者様はいらっしゃいますか!?」
血相を変えた兵士の姿に、四人の顔から一瞬で色が消えた。ルカが抱いていた、あの不吉な予感が現実のものになろうとしていた。
「王都の北……勇者様たちが開墾したあの土地が、一夜にして真っ黒に染まりました! さらに、そこで育ったベニ・ハルーカを食べた北のソボック村の住人たちが、次々とアンデッド化しているとの報せです!」
息を切らした兵士の絶叫に、レストランの空気が凍りついた。
「……なんですって!?私たちが開墾した土地が……?」
「さらに、王都の聖女シンシア様がお一人で浄化に向かわれましたが、多勢に無勢。非常に厳しい状況だとのことです!」
「聖女シンシア……!」
4人は顔を見合わせた。王都でも高名な慈愛の乙女。だが、彼女たちの脳裏には別の懸念がよぎっていた。
((((……また増えるわ。絶対に増えるわ、ライバルが……!))))
「……でも、ツトムに言わないわけにはいかないわよね」
ルカが苦渋の表情で呟く。
「ツトムは、もう少し休ませてあげたいでありんすな……」
「ああ、ツトム殿は最近、少し疲れが溜まっているように見える。これ以上の心労は……」
だが、4人が相談し終える前に、部屋の奥から足音が響いた。
「……みんな、どうしたんだ? 外が騒がしいみたいだけど」
目を擦りながら、寝巻き姿のツトムが姿を現した。
ルカは迷いながらも、今の悲劇をありのままに説明した。開墾した土地の汚染。ベニ・ハルーカによるアンデッド化。そして、一人戦う聖女の危機。
それを聞いた瞬間、ツトムの目から眠気が消え、鋭い光が宿った。
「僕が作った食べ物で、人がアンデッドになるなんて……そんなこと、絶対に許せない。それに、一人で戦っている人がいるなら、放っておけるはずがないだろ!」
ツトムは迷うことなく、着替えのために自室へと引き返した。
「すぐに出発の準備だ。ソボック村へ行こう」
その背中を見送りながら、4人は覚悟を決めた。ツトムの農家としての誇りを踏みにじった魔王軍への怒り。そして、新たな聖女という脅威からツトムを死守するという決意を。
「北の開墾地からソボック村まではどのくらいの距離だ?」
ツトムの問いに、兵士は「徒歩でもさほど時間はかかりません」と答える。
「ルカ! 『トランス』で北の開墾地へ。そこから走るぞ!」




