第44話:王都デート〜アイリス・グライザ・ハル編〜
「さて、次はアイリスだな」
合流したアイリスの腰にある剣は、激戦を物語るようにボロボロだった。
(こんなにも一緒に、僕のために頑張ってくれたんだな……)
「よし、アイリス! 王様から報酬も頂いたことだし、新しい剣を僕に買わせてくれ」
ツトムの提案に、アイリスはこれ以上ないほど眩しい笑顔を向けた。
防具屋へ移動し、彼女が新しい盾や鎧を吟味している間、ツトムはふと青い宝玉が輝く『魔除けのペンダント』を見つけた。
(これをアイリスが持っていれば、少しでも魔物から身を守れるかもしれない)
ツトムはそれをこっそり購入した。
「いやぁ、ツトム殿とのショッピングは楽しかった! 大満足だ!」
満足げなアイリスは「次はグライザ殿の番だろう、早く行くのだ」とツトムを促す。だが、ツトムは彼女を呼び止めた。
「アイリス、その前にこれ。いつもありがとう」
差し出されたペンダントを見て、アイリスは絶句した。
「ツ、ツトム殿……これは反則だろう……!」
顔を真っ赤にし、瞳に涙を溜めて喜ぶアイリス。
(宝石を贈るということは……求婚と受け取って良いのだな……!)
そんな彼女の勘違いも露知らず、ツトムは「喜んでくれてよかったよ」と微笑み、彼女と別れた。
次は、カフェでグライザと合流した。
「ツトム、お前がいた世界には『くるま』という馬のいねぇ馬車があったんだよな。この世界でも作れねぇだろうか」
グライザは前のめりに語る。スマーホの改良案や、オートカルチを凌駕する効率を持つ『トラクター』の構想まで。
「グライザなら全部形にできそうだな」
「ツトムの指示が良いからだぜ。……なぁ、いつかお前が住んでたところに行ってみたいもんだ」
グライザの言葉に、ツトムは少し遠い目をした。
「じゃあ、いつか『タイムマシーン』を作れば行けるかもしれないな」
「たいむましーん……? なんだそりゃ」
首を傾げるグライザに、ツトムは思わず吹き出した。グライザもつられて笑う。
「良い時間を過ごせたよ、グライザ。ありがとう」
そう言ったツトムの顔に、ふと寂しさが過った。
(現代……今頃みんな、どうしているのかな。僕がいなくても、世界は回っているんだろうか)
その心の揺らぎを察したのか、グライザが後ろからぎゅっと抱きついた。
「ツトム……何かあったら、俺に言うんだぞ」
「大丈夫だよ、何もないさ」
最後は、王様が用意した高級宿で待つハルのもとへ。
「待ちくたびれたでありんすよ、ツトム……」
部屋でくったりとしていたハルが、ツトムを見るなり駆け寄る。
「ごめん、待たせた。どこか出かけなくて良かったのか?」
「わっちは……ツトムと魔力供給ができれば、それだけで良いでありんすよ」
そう言って、ハルが顔をぐっと近づけようとした瞬間――。
「「「それは絶対にダメーーーー!!!!」」」
どこからともなくルカ、アイリス、グライザの3人がなだれ込んできた。
「魔力供給は手を繋ぐだけでもできるわ!」
「左様だ! それ以上の接触は許可せん!」
「それは流石にアウトだろ!」
賑やかな抗議の声を聞きながら、ツトムは苦笑いした。
「ははは……。じゃあ、ホテルのレストランでみんなで晩ご飯を食べようか」




