第43話:王都デート〜ルカ編〜
「さて! 報告も終わったことだし、ツトム、約束のお出かけね! 視察という名の……デートよ!」
「ああ、まずはルカと食べ歩き視察だな。その後にアイリスとショッピング、グライザとカフェ、最後にハルとまったり……という順番でいいかな?」
ツトムがスケジュールを確認すると、ルカは満面の笑みで「はぁ〜い! ツトム、いこー!」と、逃がさないと言わんばかりに腕を組んで歩き出した。
「おい、ツトム……あまり遅くなるなよ?」
「ツトム殿、私は武器の手入れをして待っているぞ……」
「ツトム、わっちはお部屋を暖めて待っておりんす……」
背後から刺さる三人の熱い視線を感じながらも、ツトムは引きずられるようにして王都の繁華街へと繰り出していった。とりあえず、他の三人は「自由時間」という名の「待機時間」となったのである。
「それじゃあルカ、まずは甘味処へ行こうか」
ツトムが手を差し出すと、ルカは「ええ!」と弾んだ声で応じ、指を絡めて歩き出した。久しぶりの二人きりのお出かけに、彼女の表情は春の日差しのように明るい。
目指した甘味処に到着すると、メニューには驚くべき文字が並んでいた。
『ベニ・ハルーカのスイートポテト 〜季節のアイス添え〜』
『しっとり濃厚・ベニ・ハルーカの極上ケーキ』
「へぇ、すごいな。もうこんなに浸透してるのか。……今後は余裕ができれば自分たちで店舗運営もしたいし、これは良い参考になるな」
職業病とも言える観察眼でケーキを頬張るツトム。それを見て、ルカも幸せそうにフォークを動かす。
「ベニ・ハルーカは魔力も回復するし、スイーツに加工することでより甘さが引き立って美味しくなるわよね。これならいくらでも食べられちゃう!」
終始ニコニコと笑い、美味しそうに食べるルカ。ツトムはその横顔を見つめながら(いつもこんな笑顔を見せてくれていればいいのだがな……)と、心の中で願わずにはいられなかった。
温かい紅茶で一息ついていた時、不意にルカがカップを置き、真剣な眼差しでツトムを見つめた。
「……ツトム。私ね、ずっと嫌な予感がしているの。魔物の討伐も、魔王討伐も……何があっても、死ぬ気であなたを守るから」
賑やかな店内で、そこだけ空気が張り詰めた。
「魔王なんてまだまだ先の話だろ? 王様だって、まだ戦力が足りないって言っていたし、今はこうして美味しいものを食べていればいいんだよ」
ツトムは努めて明るく切り返した。だが、その胸のうちは穏やかではない。
(……けれど、魔王を倒さないことには、この世界そのものの飢餓を救うことはできないんだ)
農業で世界を救おうとするツトムと、魔法でツトムを護ろうとするルカ。 甘い香りに包まれた店内で、二人はそれぞれの覚悟を胸に、静かに紅茶を飲み干した。
「ルカ、とても有意義な時間をありがとう」
ツトムが告げると、ルカは名残惜しそうに寂しげな顔を見せたが、次を待つ仲間のために潔く身を引いた。




