表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の鈴木くんと鈴木さん  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/16

3話

「鈴木くん、ちょっと来て」

昼休み、佳奈子が真顔で呼びに来た。和也は、机の上で消しゴムを宇宙船に見立てて航行中だった。

「今、第七惑星に着陸しようとしてたんだけど」

「現実に着陸して。生徒会があなたの妄想を採用したって」

「え、俺の妄想が?どれ?」

「“校内に異星人が潜んでいる”ってやつ」

「それ、俺の中でもかなり初期案なんだけど……」


事の発端は、先週の生徒会アンケートだった。

「文化祭でやってみたい企画は?」という質問に、和也は「異星人発見ミッション」と書いた。

「校内に潜む異星人を見つけ出す。参加者は探査員。異星人役は生徒。ミッション成功で宇宙食がもらえる」

という、完全に妄想ベースの企画だった。


「それが、なぜか採用されたらしい」

「なんで?」

「“非日常感がある”“参加型で盛り上がりそう”って評価されたって」

「俺の妄想、ついに地球に認められた……!」


しかし、問題はここからだった。

「で、鈴木くんが“異星人役の演技指導”をすることになった」

「演技指導?俺、演技したことないけど」

「妄想してるじゃん。毎日」

「それは……演技じゃなくて、信念」


佳奈子は、生徒会から“現実係”として任命された。

「現実係って何?」

「あなたの妄想が暴走しないように、現実に引き戻す係」

「それ、毎日やってる気がする」

「だから適任」


放課後、体育館の隅で“異星人役”の練習が始まった。

和也は、真剣な顔で指導する。

「異星人は、地球の言語に慣れていない。だから、語尾に“ピピ”をつけるといい」

「ピピ?」

「例:『こんにちはピピ』『給食はどこピピ』」

「それ、ただの変な人じゃない?」

「違う。異星人は“違和感”が大事なんだ」


佳奈子は、横でメモを取っていた。

「語尾ピピ、要検討。あと、宇宙食はどうするの?」

「俺の家に、非常食の乾パンがある」

「それ、宇宙食じゃない」

「でも、雰囲気はある」

「じゃあ、ラベルだけ“宇宙食”って書いて貼ろう」

「それ、現実係の仕事だね」

「任務遂行中」


数日後、“異星人発見ミッション”は校内で実施された。

参加者は探査員として校内を巡り、異星人役の生徒を見つけて“地球語で会話できるか”を試す。

語尾ピピは、意外と好評だった。

「こんにちはピピ!」

「給食はどこピピ!」

「それ、異星人っぽい!」


和也は、満足げにうなずいた。

「俺の妄想、地球に受け入れられた……」

佳奈子は、乾パンに“宇宙食”ラベルを貼りながら言った。

「でも、現実の調整がなかったら、ただの混乱だったよ」

「ありがとう、現実係」

「どういたしまして、妄想艦長」


イベント終了後、生徒会から感謝状が届いた。

「鈴木和也さん、鈴木佳奈子さん。“異星人発見ミッション”の成功により、校内に笑いと非日常をもたらしました」

「俺たち、公式に異星人扱いされたね」

「それは違う」


帰り道、二人は並んで歩いた。

「ねえ、鈴木くん」

「ん?」

「妄想って、現実に届くんだね」

「うん。でも、現実係がいないと、墜落する」

「じゃあ、これからも私が現実係でいていい?」

「もちろん。鈴木同盟、条約追加。“妄想は現実係の許可を得ること”」

「発効!」


そして、マンションの前。

「じゃあね、和也」

「うん、また明日、佳奈子」


名前で呼び合う声は、今日も静かに響いた。

妄想と現実の間にある、ちょうどいい距離感。

それが、二人の“同盟”のかたちだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ