表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

#4再会の温度

※理解できない相手と、離れられない話です。


目を覚ますと、見慣れない天井が広がっていた。


黄色っぽい布越しに、日の光が滲んでいる。

外から、かすかな話し声。


顔を少し横に向けると、垂れた布が少し風で揺れて、細く外の景色が見える。


ぼんやりした頭で考える。


(確か、怪我人の治療をしていて、休憩しろと言われたんだ。その後――)


そこで、意識が途切れる寸前に考えていたことを思い出した。


「あ……!カライス君は……!?」


慌てて体を起こすが、バランスを崩して横に倒れ込んでしまう。


同時に、胸から込み上げる嫌な感覚がして、堪えきれずその場で嘔吐した。










「大丈夫ですか!?」


外にいた騎士が、咳き込む音で異変に気づき駆けつけてくれた。


僕の様子を見て、「誰か!急いで水桶と拭くものを持ってきて!」と叫ぶ。


すぐに数人が駆けつけ、汚してしまったところをテキパキ片付けてくれた。


「……魔導士様、まだ安静にしていてください。昨日はそうとう無理をされたと聞きましたよ」


「す……すみません……」


「まずはお休みになって、落ち着いたら少しずつ水分を摂りましょう。……いま飲み水をお持ちします」


「あ、あの……!」


天幕を出ていこうとした騎士を呼び止める。


「はい、他にも何か必要でしたか?」


「カライス君は……無事ですか……?生きてますか……」


「ああ、彼なら大丈夫です!今回の戦闘でも、あれだけ戦果を上げても傷一つ負わず。お知り合いだったんですね。……水は彼に持って来させましょう」


そう言って、騎士は天幕を後にした。










手当用の物資の運搬を手伝っていると、女性騎士から「ちょっといい?」と声をかけられた。


「……?どうした」


「"女神様"の意識が今さっき戻ったの。でもかなり調子が悪いみたいで、吐いてしまわれたわ。……落ち着いたら水分をとってもらいたいんだけど、今の作業が終わったら持っていってもらえる?……あなたのこと、気にかけてたわよ」


「……了解した」


俺はすぐに荷物運びを終わらせると、水差しを持ってハルモンのいる天幕に急いだ。


ハルモンは客人扱いで、一人用の天幕で休んでもらっていた。


天幕の入り口に垂れた布を捲り上げ、中の様子を伺うと、ハルモンが力なく横たわっていた。


ハルモンは目を閉じ、ゆっくりと呼吸をしている。


いつも束ねられていた髪が解かれ、枕の上に広がっていた。


(寝ている……?)


音を立てないよう天幕に入る。


気配に気づいたのか、ハルモンの目がゆるく開いた。


俺を見る。


しばらくして、少しだけ微笑む。


潤んだ瞳から、涙がこぼれた。


その姿だけは、確かに――


女神様のように見えた。


俺はしばらくその姿を見つめていた。


「……水を持ってきた。落ち着いたら飲んでくれ」


そう言って、ハルモンのそばに水差しを置くと、俺はすぐに天幕を出た。


ハルモンの天幕を出た後、俺は張られた天幕の間をしばらく歩いていたが、はたと思いついて立ち止まる。


(あいつ、自分で飲めるのか……?)


さっき吐いたと聞いたし、かなり弱った様子だったことを思い出す。


俺は踵を返し、来た道を戻る。


天幕を覗くと、ハルモンはさっきと同じ姿勢で横になっていた。


目は半分閉じている。


「……起きてるか」


小さく声をかける。


返事はない。


だが、呼吸が少し揺れた。


俺は水差しを手に取り、ハルモンの肩をそっと支える。


体は思ったより軽かった。


そして、体が熱い。


「……飲め」


唇に水差しを当てる。


ハルモンの喉が、かすかに動いた。










ここまで読んでいただきありがとうございます。

この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。

よければブクマや評価も励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ