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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第十三章 嘘に紛れた思惑

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第六十七話

 伸ばした先さえ見えないぐらい深い霧の中に二人の姿があった。

 「ちょ……早いって、トンマーゾさん。足元見えないんだから。って、よくこんな中普通に歩けるね?」

 「俺には霧なんて見えないからな」

 「何それ」

 「それより手を離すなよ。一生彷徨う事になるぞ」

 「本当にこんな魔術があるなんて……」

 ぶつぶつと文句を言いつつ、しっかりとトンマーゾの背中を掴むエイブ。

 「ついたぞ」

 「え? ……眩しい」

 一瞬で霧が晴れ、太陽の光が差し込み眩しい。目がなれ見えた目の前には屋敷が建っていた。

 「今度はここに隠れ住む訳?」

 「あぁ。やっと霧の魔術が出来上がったんでな」

 トンマーゾはそう言うと、ドアを開け建物中へ入って行く。それにエイブも続いた。中に入ると直ぐにドアがあり、その先は居間になっているのか広い。左手にキッチンがあるようだ。右手には階段があり二階へと続いている。

 その二階へと足を運ぶ。

 二階は左右に三つずつドアがあった。

 「手前の右が俺の部屋。お前の部屋は俺の向かいだ。基本的にドアには鍵はかからない」

 「そう。今までと変わらないってことね」

 「だな。それとこれ」

 トンマーゾは指輪をつまんで見せた。

 「あの霧を抜けるアイテムだ。無くすなよ」

 「あのさ。普通抜ける前にくれない?」

 「一度、深い霧を体験させてやろうと思ってな。思いやりだよ」

 「どこが!」

 トンマーゾは、文句を言うエイブの手の平に指輪を乗せた。

 「でだ、この近くをティモシーが通りそうだから迎えに行ってこい」

 「なんで、俺? 自分で行けばいいだろう。俺、魔術使えないというのに……」

 「お前のいう事なら聞くだろう? 多分一人だと思うし」

 「そこまでわかるの!?」

 トンマーゾはニヤッとする。

 「わかる訳ないだろう。今、ルーファス王子はヴィルターヌ帝国にいるという情報が入っている。俺の勘だがあの魔術師の王子も一緒だろう。だから一人。さっさと行って来い」

 「わかったよ……」

 ルーファス王子が出掛けているのならランフレッドも一緒だろう。そしてレオナールがそれに同行しているのならブラッドリーも一緒かもしれない。そう仮定するとティモシーは今一人で行動しているだろうという事だ。

 「この予測が外れたら俺、魔術師の王子と鉢合わせになるんだけどなぁ」

 ため息をつきつつエイブは指輪をはめ、今来た道を戻って行く。トンマーゾが言っていた通り、指輪を付けていると霧は見えない。

 「さて、ティモシーさんはどっちから来るかな?」

 精神体でなくとも、ある程度の距離ならいる方向はわかるのだった。

 「こっちか……これ、歩きじゃないんじゃ……。馬車だったらどうするんだよ」

 よく考えれば、馬車の可能性の方が高い。もしそうだった場合は、盗賊の様に襲わないといけないのだろうかと、またため息を漏らすのだった――。



 ◇ ◇ ◇



 「ティモシーちゃん、ちょっとここいらで休憩いいかな?」

 「え?」

 ティモシーは声を掛けて来た中年のおじさんに振り向いた――。

 彼は、途中からティモシーを乗せてくれた商人だった。

 王宮を出たティモシーは、自分が生まれ育ったモニ村に向かうつもりだったが、村までの馬車は小さな村だった為なかった。取りあえず近くまで行く馬車に乗り、降りた町で一泊する。

 次の日、仕方なく徒歩で向かっていると声を掛けられ、村まで行きたいというと連れて行ってくれると言う。下心ありで言われているのはわかっていた。ティモシーは、初めてそれを利用しようと思った――。

 そして今、相手はティモシーに襲い掛かろうとしている。だが予想していたのとは違っていた――相手はナイフで切りかかって来たのである!

 咄嗟に避けるも右肩らへんに激痛が走る。慌てて荷馬車の座席から降りた。

 (なんで?! どういう事?)

 再び襲い掛かって来る相手の腹に蹴りを入れるもティモシーも倒れ込む。

 (……体に力が入らない)

 ティモシーは上半身を起こすも相手は立ち上がる所だった。と、突然辺りが煙に包まれる!

 ドサッと倒れる音が聞こえ、誰かが近づいて来る気配がする。

 (逃げないと……)

 「ティモシーさん、起きているよね? 行くよ!」

 ガシッと右手を掴まれ引っ張られるように走り出す。右腕に痛みはあるものの鈍い。

 (エイブさん……?)

 さっきのは黒い石なのか? と考えていると森の中へ入って行く。森に入ったはずなのに辺りは白くもやがかかり、ティモシーは体が痺れてただ引っ張られて進んでいる感じだった。

 「エイブさん……」

 (俺、死ぬのかな……)

 ティモシーは倒れ込んだ。

 自分はあの時に刺され、夢でエイブに会っているとティモシーは思っていた。そしてそのまま気を失う。

 「ちょ……ティモシーさん?!」

 エイブは慌ててティモシーを抱き起すもぐったりしている。

 「マジ?! そんなに出血多くないのに!」

 エイブは焦る。まだ完治していない彼には、ティモシーを抱きかかえ運ぶだけの体力がなかった。そして、霧の中だとはいえさっきの男が襲ってこないとも限らない。トンマーゾを呼びに行きたいが、ティモシーを一人残して行くわけにもいかない。

 「どうしたら……」

 ガサッ。

 後ろから人の気配を感じエイブはハッと振り返った!

 「お前はティモシー一人も満足に連れ帰られないのかよ……」

 「トンマーゾさん!」

 ため息をしつつトンマーゾは、片膝をついたと思ったらティモシーを肩に担ぎ立ち上がる。

 「何をしている。行くぞ」

 「え? あ、うん……」

 トンマーゾ達は隠れ家に向かった――。




 ティモシーが目を覚ますとそこは見た事がない部屋だった。

 (あれ? 俺、生きてる?)

 体を起こそうと手に力を入れると、右肩付近に激痛が走る。

 「っいった……」

 前襲われた時の傷がと思ったが、反対側の肩の下らへんに包帯が巻いてあるのに気が付き、商人に切りつけられた事を思い出した。

 左手だけで体を起こし、辺りを見渡す。

 ベットが二つ。それ以外にあるとすれば、ベットの間にテーブルがありそこに照明が置いてあるだけ。

 窓からは森の木しか見えない。

 病院でもなさそうだと思った時、ドアが開いた。

 「ティモシーさん起きた? 起き上がって大丈夫?」

 「エイブさん!」

 「おぉ、起きたか?」

 声を聞きつけたのかトンマーゾも顔を出す。

 (トンマーゾさん! じゃここは、魔術師の組織のアジト!)

 「エイブさんが生きてた! よかったぁ!」

 「何言ってるの? それはこっちの台詞だよ」

 「お前、殺されかけたんだぞ」

 それを聞きハッとする。途中から記憶が曖昧だが、商人に切り付けられた事は事実だ。

 「トンマーゾさんにまた助けて貰ったんだ、俺……」

 「トンマーゾさんって、助けたの俺だけど、覚えていない?」

 エイブは不服とばかりティモシーに言う。

 (あれは夢じゃなくて現実!?)

 エイブに手を引かれ走った事は夢だと思っていた。でも不思議な事に森の中を走った記憶がないのである。

 「えっと。ごめんなさい。記憶が曖昧で……。助けてくれてありがとう」

 「まあ、痺れ薬がナイフに塗られていたみたいだからな。少しでもタイミングがずれていたらお前は刺されて死んでいたな」

 体が動かなくなったのは、痺れ薬のせいだったのかとティモシーは納得する。

 「俺がいう事じゃないけど知らない人について行っちゃだめだよ。相手は下心があって誘っているんだから。男だと気づけば、そりゃ逆上もするよ」

 「え?! 俺、気づかれたから襲われたの?」

 大抵の者は、ティモシー自身が男だと言った所で信じない。何故バレたのだろうと凄く驚いた。

 「多分違うだろうな。あいつは身分を証明する物を持っていなかった」

 腕を組み壁に寄しかかり、相変わらず偉そうにトンマーゾは言った。

 「何それ。俺を見張っていたわけ?」

 「一応な。一緒に逃亡の恐れもないとは言えないしな」

 「ふ~ん。まあ、いいや。疑われているのは前からだし。ところでさっき、また助けてもらったって言っていたよね? 襲われた事あったの?」

 エイブは、ジッとティモシーを見つめる。

 「えっと……」

 「どうやらハルフォード国に狙われているらしいな。何故狙われているかは知らないがな」

 「嘘。知っている癖に!」

 ティモシーは俯いて叫び、その後トンマーゾを睨んだ――。

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