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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第九章 追われる者

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第四十五話

 次の日ティモシーは、どんよりとしていた。周りもよくわかるほど元気がない。

 ダグは、昨日レオナールに何か言われたのは確かだろうと思っていた。

 午後、ティモシーとダグは一緒に配達に行くことになり、二人は正門で護衛の兵士を待っていた。

 「なあ、レオナール王子に何か言われたのか?」

 「え? なんで?」

 「なんでってお前、いかにも何かありましたって感じだけど」

 やっぱりバレていたかと、ティモシーは溜息をつく。聞かれた所で話せない。

 「いや、無理に話せとは言わないけど、ため込むなよ」

 「ありがとう」

 ティモシーは頷いて言った。

 「ダグ! よかったまだ居たか。話し合いをする事になった。あなたもレオナール様が参加するようにとの事だ」

 「え? 俺? でもティモシーが一人になるけど……」

 「大丈夫。護衛いるし、場所わかるから」

 「わかった。絶対一人で行くなよ。護衛来るの待てよ!」

 「わかってるって」

 ダグは、ブラッドリーと一緒に王宮内に入って行った。

 ティモシーは、ダグを見送ると街に視線を戻す。

 少し高い所に王宮は建っている。綺麗な街並みが一望できた。

 「ティモシー……さんですか?」

 呼ばれティモシーは振り向いた。兵士かと思ったが、声が女性だったので誰だろうと振り返るが、見知らぬ薬師だった。

 「私は、イリス。彼の代わりに来ました」

 こげ茶色の長い髪を後ろで結っている二十代の女性がニッコリと微笑んだ。だが、目は笑ってはいない。

 またエイブがらみだろうかとティモシーは警戒する。

 「ダグさんの代わりですか?」

 「えぇ。そうよ」

 「待たせたな」

 彼女の声に被るように、男の声が聞こえ見ると、イリスの後ろにホルファンスが立っていた。

 「え! もしかして護衛?」

 「そうだ。もう行けるのか?」

 「えぇ。準備は整っております」

 ティモシーの代わりにイリスが答えた。

 「じゃ、行くぞ」

 「……うん」

 三人は歩き出す。届け先は森の泉研究所だ。黙々と歩き雑談などない。

 しかも、ティモシーの少し後ろを歩くイリスの視線が振り向かずともわかるほどだ。

 (本当にこの人、交代の人だったんだろうか?)

 護衛がいる前で下手な事はしないだろうと思うも、ここは王宮の外である。不意をついて何か仕掛けてくるかもしれない。ティモシーでも女性には、反撃しづらい。出来れば、何も起こらずにと願っていた。

 そして無事に荷物を送り届ける事はできた。後は帰るだけだ。

 「ティモシーちょっと、二人だけでお話がしたいのですが……」

 森の泉研究所から出て少し経った頃、イリスは声を掛けて来た。

 その場所は以前、男たちに襲われた場所で人気がない通りだ。

 「戻ってからで……」

 「いいえ。ここで」

 ティモシーが振り向いて言うも強い意思で拒否された。

 「二人で話をします。あなたは下がっていて下さい」

 「え? いやでも……」

 イリスがホルフォンスに離れるように言うも彼は戸惑う。

 「私が誰かわかりませんか? 本当の名はイリステーナ。これでおわかりになりますでしょう」

 名に聞き覚えがあったのか、ホルファンスは一瞬驚いた顔をした。そして、バッと頭を下げた。

 ティモシーがその行動に驚いていると彼は、イリステーナに言われた通り二人から離れる。

 「え? 一体あなたは……」

 「あら? レオナール様から聞いてない? では、こう言えばわかるかしら。ヴィルターヌ帝国皇女と」

 (皇女! って、王女の事だろう? え? ヴィルターヌ帝国からの使者ってこの人!?)

 ティモシーは驚いて固まった。

 何故そんな人物が自分に近づいたのかわからなかった。

 「あなた、昨日、彼とこっそり王宮を抜け出していたわね。どちらへ?」

 「え……」

 見られていたんだと思うも、ここまでして何を聞き出したいのかわからない。下手な事が言えないが、その前に内容は話せない。

 「彼と男女の関係なのかしら? それとも皆に内緒の別な関係?」

 「………」

 (もしかしてこの人、レオナール王子の事が好きなのか?)

 ティモシーには、それしか思い浮かばなかった。

 「誤解だか……」

 ティモシーが言い訳をしようとした時だった。脇から魔力を感じ取る。ハッとしてそちらに振り向くと、ホルファンスがバタンと倒れた!

 (眠りの魔術!)

 ティモシーは、ハッとして横に居るイリステーナを確認するとその場にしっかりと立っている。使者は魔術師と聞いていた。彼女がヴィルターヌ帝国からの使者なのは間違いない。

 「彼と一緒に眠りに落ちていれば、死なずにすんだのになぁ、ティモシー。あの魔術師の王子にマジックアイテムでも持たされていたか?」

 そういいながら脇から出て来たのは、逃げたはずのトンマーゾだ!

 「え? なんでここに……」

 「今の言葉聞いていなかったのか? 相変わらず察しが悪いな。皇女を仕留めに来たんだよ!」

 「え!」

 ティモシーは驚く。彼の言う通り、最初の台詞を聞けばそうだ。だがまさか、トンマーゾがヴィルターヌ帝国の使者を殺しにくるなど思ってもいなかった。ふた方が繋がっているかもと言う話は上がっていたが……。

 「なぜこの人を?」

 「それ、お前に話す必要あるか?」

 「あなた、魔術師ではないの?」

 イリステーナは、ボソッとティモシーに問いかけた。ティモシーは、チラッと彼女を見ると、トンマーゾを睨みつけていた。

 どう答えていいかわからなかった。そうだと答えた所で、戦える訳でもない。

 (そう言えばトンマーゾさんは、俺が魔術師だってエイブさんから聞いていないのだろうか? もしかしてエイブさんは……)

 こんな事態だと言うのに、そう思いいたると聞きたくなった。

 「……エ、エイブさんはどうしてるの? ザイダさんと一緒?」

 「ふーん。なるほどな。……知りたいのなら教えてやる。皇女をヤレ! そうすれば、連れて行ってやるよ。エイブの元にな」

 「え……」

 ティモシーは、フルフルと顔を左右に小さく振った。

 「なんだ、チャンスをやるっと言っているんだぞ? そいつを殺してこっち側に来いっと言っているんだがな。まあ、ザイダのようには、いかないか」

 トンマーゾはニヤッとすると、ティモシー達に右手を突き出した!

 「そうだ、ティモシー。その女も魔術師だぞ。かばう相手ではないだろう?」

 「え?」

 ティモシーは、トンマーゾに言われ彼女に振り向く。魔術師だと言われた事に驚いた訳ではなく、魔術師なのに魔術を使って逃げるなどしなかった事に気づいたからだ。

 彼女は皇女で魔術師だと周りに知れても、命を狙われたりする立場ではない。隠していたとしても緊急事態だ。後でティモシーに口止めすればいい。それに、彼女自体が対象だとわかっている。何故魔術を使わないだろうか? 不思議に思ってふり見たのである。

 「大丈夫だ。一緒にさっき魔術を封じた。ナイフをやるから……」

 ティモシーは、イリステーナの手を取り走り出した!

 イリステーナは、眠りの魔術はレジストしたが、魔術を封じられていた。逃げるしかない! そう思い咄嗟に手を掴んだ。

 ティモシーは走りながら、ペンダントを外した。攻撃は無理でも結界は出来るかもしれない。人気のない所で襲ってきたのだから、人前では魔術は使わないかもしれない。危険かもしれないが、人がいる所まで出ようそう思ったのである。

 だが、二人はすっころんだ!

 足元に魔術を使われ、転ばされた。

 「全く。二度もチャンスをやったのにな。エイブのお気に入りみたいだけど残念だったな。死ね!」

 ティモシーは、攻撃が来ると自分の周りに結界を張った!

 「……おっと」

 トンマーゾは攻撃をしようとするが、攻撃を受け後ろに飛びのいた!

 「え?」

 魔術が飛んできた方をティモシーが見ると、レオナールがいた。その横には、ブラッドリーと見知らぬ女性が一人。

 「イリステーナ様!」

 その女性が叫んだ。彼女は、イリステーナより赤みを帯びたこげ茶色の髪を耳の上で一本に縛り、レオナール達と同じ様に薬師の制服を見に着けていた。

 「トンマーゾ! あなた、皇女狙うなど何を考えているのです!」

 「おっと。こりゃ分が悪いな。命拾いしたな二人共!」

 「待ちなさい!」

 逃げようとするトンマーゾを追いかけようとするが、彼は黒い石をレオナールの足元に投げつけた!

 レオナール達は、咄嗟にどけるもその石は爆発し地面をえぐった! 砂埃が舞い上がり、土砂が周りに降り注ぐ!

 (あの時と同じだ!)

 三人の男に襲われた時の状況に似ていた。

 視界がクリアになるとすでに、トンマーゾの姿はなかった。

 「逃がしましたか」

 「イリステーナ様。お怪我はありませんか?」

 女性は倒れたイリステーナを起こした。

 「えぇ。大丈夫です。ティモシー、大丈夫ですか?」

 イリステーナは、そうティモシーに声を掛けた。ティモシーは頷いたが、その顔色は青ざめている。ジッとブラッドリーが睨む様に、ティモシーを見ていたからである。

 (絶対にブラッドリーさんにバレたよな……)

 レオナール達は、イリステーナが王宮を抜け出した事に気づき、探しに来たのである。イリステーナに寄り添う女性は、彼女の側近のフレアだった。

 「取りあえず、王宮に戻りましょう。ブラッドリー、彼を起こして下さい」

 「っは」

 彼とは、ホルファンスの事だ。まだ眠りの魔術で眠っていた。

 そして、ティモシー達は、馬車で王宮に戻ったのである。



 王宮に着いたティモシー達は、そのままグスターファスの部屋に連れて行かれた。そこには、グスターファスとルーファス、ランフレッドそしてダグが待っていた。

 ランフレッドは、ティモシー達を見ると安堵した様子を見せる。

 「申し訳ありませんでした! すぐにイリステーナ皇女と気づかずに、外へ連れ出してしまいました」

 部屋に入るなりホルファンスはガバット九十度腰をおり謝罪した。

 「彼らは悪くありません。私がそちらの男の代わりだと言ってついて行ったのです」

 ダグの方を見て、イリステーナは言う。

 「ホルファンス、顔を上げなさい」

 グスターファスに言われ、ホルファンスは顔を上げた。

 「陛下、先にイリステーナ皇女と二人でお話をしたいのですがお許しを頂けますでしょうか?」

 「わかった」

 レオナールの申し出にグスターファスはうむっと頷いた。

 「ありがとうございます。ブラッドリー、ちょっとこちらへ」

 レオナールとブラッドリーは何やら部屋の隅で話し合う。

 「ダグ、あなたはティモシーに着いていてあげてください」

 「はい」

 レオナールに言われ、ダグは頷く。

 「では、いきましょうか」

 レオナールはイリステーナを促しすと、フレアもその後を追う。

 「悪いのですが二人でお話をさせて頂きたいのです。ですのであなたはここにお残り下さい」

 ついて行こうとするフレアに、レオナールはそう言った。

 「ですが……」

 「フレア。大丈夫です」

 イリステーナが言うと、フレアは頷いた。

 「では、後ほど」

 レオナールとイリステーナは部屋を出て行った。

 「後で呼びに行くので、ダグとティモシーは部屋で待っていなさい」

 「はい。では、俺の部屋におります」

 グスターファスの指示にダグはそう返すと、ティモシーに行こうと声を掛け部屋を出る。二人は、ダグの部屋に向かった。

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