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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第七章 彼と彼女の復讐劇

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第三十七話

 真っ暗闇の中、彼は進んでいた。そこに光を見つける。

 「居た。トンマーゾさん!」

 「エイブか?」

 光はトンマーゾだった。そしてエイブも光だ。

 「そうだよ。うーん。やっぱり魔力を刻まないと感覚のみなんだ。それにしても、随分近いね?」

 トンマーゾはフンっと鼻を鳴らす。――人の姿ならそう見えただろう。

 「隣にいるからな」

 「へえ、捕まったんだ」

 「……で、何か用か?」

 捕まったかどうかは語らないが、否定しないという事は肯定である。

 「いや、もう遅いけど、ブラッドリーさんには気を付けてって言おうと思ってね。あの人、魔術師だったから」

 「ふん。あいつめ刻印を探していた。お前かなりヘマやっただろう。魔術師の国の王子も乗り込んできていたぞ」

 トンマーゾはギロリと睨んだ。

 「あぁ。まさか、あそこで乗り込んでくるとは思わなくてさ。ごめんごめん。しかし、魔術師の国と交流があるって噂だったけど本当だったんだ。この国の王って、変わった王だね」

 「全くだ。いい土地だったから、エール草で一儲けしようとしたのにな! パァーだ」

 「相変わらずせこいね」

 トンマーゾの愚痴に、エイブはクスクスと笑う。

 「そう言えば、ザイダが牢を覗きに来ていたぞ」

 「え? あの人、ここまで来たの? 怖いねぇ」

 ちっとも怖がった素振りはない。どちらかと言うと、楽しんでいる様に見える。

 「折角だからお前をこんな目に合せたのが、ブラッドリーだと教えてやった。魔術師だともな」

 トンマーゾは、後からよく考えれば、エイブが事を起こした時にはまだレオナールがこの国にいなかった事に気が付いた。ならば、彼しかいないと判断したのだ。

 「へえ、どんな反応示してた?」

 「うん? 楽しい事になりそうな、顔つきだった」

 「彼女のしつこさも役に立ちそうだね」

 二人は笑い合う。

 「さて、俺は起きるかな。しかしお前、結界外でよく動けるな」

 「精神のみだからね。トンマーゾさんもやってみたら?」

 「……いや、遠慮しておく」

 「そ。結構楽しいのに」

 「じゃな」

 目の前の光は、スッと消えた。

 「……ヘマはお互いさまだろう? でも、ティモシーさんから話を聞くのが楽しみだ」

 エイブは、ボソッと呟く。

 彼は、ただのエール草の密造が自分と結びつくワケがない。トンマーゾが魔術師だとバレたのだと感づいていた。勿論ティモシーが聞いてきた一言がきっかけである――。



     ☆~~~~~☆~~~~~☆~~~~~☆



 次の朝、ティモシーは起こされずに自分で目を覚ます。

 隣のベットには、ランフレッドが寝ていた。今日は午後からだと聞いていたので、起こさないように身支度をする。

 「今日は自分で起きたんだな」

 「え? あ、おはよう」

 後はダグを待つだけとなったティモシーに、目を覚ましたランフレッドがベットの中から声を掛けて来た。

 「おはよう。体調はどうだ?」

 「うん。大丈夫」

 ドアがノックされ、ティモシーは「いってきます」と通路に出た。予想通りザイダも居る。

 「おはようございます」

 「おはよう」

 「あら、元気そうね。おはよう」

 ティモシーが挨拶すると、二人は挨拶を返して来た。三人は調合室に歩き出す。誰も話さず、黙々と歩くだけだった。

 調合室に着くと、アリックとベネットはもう来ていた。

 「あ、おはよう!」

 アリックは、二人に会えて嬉しそうに挨拶をする。怪我の方はだいぶよさそうだ。

 「おはよう」

 ベネットもティモシーが元気そうで安堵の顔を見せる。

 今日の午前中は、数種類の簡単な調合をこなす。

 そしてお昼に行く前に、ベネットが午後の予定を告げる。

 「ダグは、今日も第一倉庫の手伝いをお願いします。ティモシーは、第八調合室のお手伝いを……」

 「「え!」」

 ティモシーとダグがハモった。

 「それ、俺と交代できないか?」

 アリックとベネットは、二人が同じ反応を示した事に驚いたが、ダグがそう提案した事に凄く驚いた。彼はあまり、そういう事には口を出さなかったからだ。

 「何かあったの? 向こうもティモシーを指定してきたし。女性がいるから大丈夫だと思ったんだけど……」

 「え! いや、別に……」

 ティモシーは、エイブの件が絡んでいるし、知れれば心配されると濁す。

 「その女が問題なんだ。エイブさんにぞっこんだったみたいで、ティモシーに逆恨みしている」

 「何で言うの!」

 だが隠した事をダグに言われ、ティモシーは抗議した。

 「運よくなんて、そう続かないんだぞ!」

 ダグは、またタイミングよく助かる事はないと言っているのだ。

 「そ、そうだけど……」

 「別に俺の方は、どっちでも大丈夫だから倉庫に行け」

 決めるのはベネットだが、ダグはティモシーにそう命じた。

 「そうね。今の感じだとそれがよさそうね。じゃ、ダグが第八調合室で、ティモシーが第一倉庫の手伝いをお願いね」

 「はい……」

 「アリックは、私と第二調合室に」

 「はい」

 アリックは頷いて返事を返した。

 こうしてそれぞれ、午後の仕事についた。

 ティモシーは、メジドルクと一緒に仕事をこなし、無事終了する。

 「お疲れ。今更だが怪我大丈夫なのか?」

 「……終わってから聞くのかよ」

 メジドルクの台詞につい、ティモシーはそう漏らす。

 「あははは。悪い悪い。結構元気だったからさ」

 「うん。ちょっと肩が痛いだけだから……」

 トントントン。

 「うん? 誰だ?」

 メジドルクが「あいよ」と言って、ドアを開けに行く。

 (あ、ダグかな? 迎えに来てくれたのか……え?)

 ティモシーは、そう思いドアが開くのを見ていると、ザイダが入って来た。そしてティモシーの左肩を掴んで壁に押し付けた!

 「いった!」

 「おい! 一体何を!」

 驚いたメジドルクが言うも、ザイダが懐から出したナイフを見て更に驚いた。それを彼女は、ティモシーの首に押し付ける。

 「ブラッドリーを呼んできて!」

 (え? なんでブラッドリーさん?)

 メジドルクは青い顔をして、彼女をなだめながら頷き、ブラッドリーを呼びに走った。

 「ザイダさん……やめて! 何でこんな事!」

 「エイブさんが何をしたって言うの? あなた、男なんでしょ? なんで、エイブさんがあいつにあんな大怪我負わされているのよ!」

 目の前で怒鳴るザイダをティモシーは、目を見開いて見つめた。

 (あの時、もしかして地下に行ったのか?)

 「あれ? ちょっと待って。なんで怪我させたのが、ブラッドリーさんだって……」

 「……トンマーゾさんが言っていた事は本当なんだ!」

 彼女は、ギラギラとした目をしていた!

 (しまった! 余計な事言った……)

 ザイダは、問い詰めた所で言わないだろうと、トンマーゾが言った事が本当かカマを掛けたのだ。

 「驚いたわ。地下に行ってみたらトンマーゾさんが居て、隣に大怪我をしたエイブさんも居て……。ブラッドリーが魔術師で、それを知ったが為にエイブさんは半殺しの目に遭ったってね」

 「え……」

 (魔術師だって事も言ったのかよ!)

 ザイダはキッとティモシーを睨む。

 「あなたも脅されて、従わされているんでしょ? 彼、言っていたわよ。ブラッドリーに命令されて、エール草の栽培をしていたら王子にバレて捕まったって。自分一人のせいにされたって!」

 「え?! それ、信じたのかよ!」

 「事実だったからね! あったのよ! エール草が! あなたも協力しなさいよ! 一矢報いるのよ!」

 彼女は、トンマーゾに言いくるめられていた。嘘に事実を混ぜる事で、上手く騙していたのである。

 (どうしたらいいんだ!)

 ブラッドリーがエイブをあんな目に合せたのは事実である。エイブも魔術師で、自分を拉致しよとしたと、本当の事を言った所で信じないだろう。っとティモシーは思い困惑する。

 「何をしている! ティモシーを離しなさい!」

 話を聞いたブラッドリーが姿を現した。

 「いやよ!」

 グッとナイフを首に押し付けた。ジワリと血が滲み出る。

 「何が目的だ?」

 「あなたが魔術師だと公表しなさいよ!」

 自分が呼ばれたのだから何か目的があるのだろうと問うと、意外な言葉にブラッドリーはチラッとティモシーを見た。勿論ティモシーは、言ったのは自分ではないと、軽く首を横に振った。

 「やっぱり、ティモシーもあなたが魔術師だと知っているみたいね!」

 今の行動でハッキリしたと、ザイダはブラッドリーを睨む。

 「そんな事をしたところで、誰も信じない。やめろ!」

 ブラッドリーもザイダを睨み返す。

 (やばい。このままだと魔術を使ってくるかもしれない!)

 攻撃を使わずとも眠らせる事も出来るが、それをすれば見に来た野次馬にバレるだろう。

 ブラッドリーを呼びに行ったメジドルクは、その足で兵士にも言いに行ったのである。それが騒ぎを大きくし、人が集まって来ていた。

 ダグやアリックの姿もある。

 (仕方がない……)

 「ザイダさん、協力するから、首から少しナイフを離して」

 ティモシーはそっと、彼女に耳打ちした。チラッと見た後、三センチほどナイフを離した。その手をティモシーは、ひねり上げる。

 「え? いた!」

 そのまま後ろに回り込み、ナイフを叩き落とした。ザイダはティモシーを睨み付けた。

 「ザイダさんは、騙されているんだ。エール草を密造していたのはトンマーゾさんで、ブラッドリーさんに擦り付けただけだよ。俺、その時いたから。って、言うか見つけたの俺だから……」

 その耳打ちに、ザイダは目を見開く。

 「嘘よ! だったら何故エイブさんがあんな目に!」

 「噂通りだよ……」

 ティモシーは、目を伏せて答えた。

 ザイダは兵士に取り押さえられ、この事件はエイブの事で逆恨みしたザイダがティモシーを襲ったと噂が流れた……。

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