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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第七章 彼と彼女の復讐劇

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第三十四話

 ティモシーは、呼ぶ声で覚醒した。

 目の前には、ランフレッドの心配そうな顔。寝ているのは、王宮の部屋のベットの上。それを確認すると、ティモシーはホッとする。

 「夢だった。よかった」

 「お前うなされていたぞ」

 ランフレッドが心配そうに言うと、大丈夫と頷きティモシーは体を起こす。体中たっぷりと汗をかいていた。

 「ほら、水」

 「ありがとう」

 ランフレッドから受け取った水をティモシーは一気に飲み干す。

 「で、どんな夢見たんだ?」

 そう問われティモシーは首をひねった。

 (あれ? なんか怖い夢だったはず……。起きた時は覚えていたよな?)

 「えーと。そうだ! エイブさんが……。ダメだ、忘れちゃった……」

 「そ、そうか。まあ、嫌な夢みたいだし。無理して思い出さなくてもいいんじゃないか?」

 エイブと聞いてランフレッドはそう言ったのである。内容など聞かなくとも彼が夢に出て来ただけでうなされるだろうと。

 「あれ? もう交代なのか?」

 ランフレッドは、腰に剣を下げていた。

 「あぁ。もう六時になる。今日は夜までだから。何かあったらブラッドリーさんに言えよ」

 ティモシーは、こくんと頷いた。

 「いってらっしゃい」

 「おう! 行ってくるわ」

 ティモシーはランフレッドを見送った後、寝る気が起きず湯を浴びる事にした。



 朝七時頃は、まだ王宮内も静かだった。ティモシーは、何となく気分転換がしたくなり、王宮内をうろついていた。

 帰りは遅くとも二十時には薬師達は帰っていた。出勤している人数も半分なので、少しずつ色々滞り始めていた。なので朝六時出勤の者もいた。

 何人かとすれ違うと、皆ティモシーに振り帰った。ティモシーは時の人だ。エイブの件もそうだが、今回の拉致未遂事件は衝撃的だった。何より薬師達自身にも関係がある話であり、すでに影響が出ている。

 別にティモシーが悪いわけでない。だが、ティモシーを知らない者でもその容姿ですぐにわかる。(見た目)美少女! どうしても目立ってしまうのである。

 (なんか気分転換にならないや)

 外に出たい。そう思うも出て何かあれば大変である。その為に王宮に寝泊りしているというのに。

 「きゃ!」

 「あ、ごめん……」

 ガッシャン!

 ボーっとしていたせいなのか、すれ違いざまにぶつかってしまい相手が持っていたビンが落下し割れてしまった。勿論中身は入っていた。それは調合した物だったのだろうがもう使えない。

 「ちょっとどうするのよ!」

 女性だった。軽くウエーブがかかった肩よりちょっと長い藤紫色の髪。大人し気に見えるが、気が強そうだ。

 「ごめんなさい!」

 ティモシーは素直に謝った。深く頭を下げる。

 「わかってる? 今、人が少ないの! これ、今日納めるものよ! ホントあなたは迷惑な人だわ!」

 そこまで言わなくてもと思うも、ぶつかって落としてしまった責任は、自分にもあるとティモシーは思い願い出る事にする。

 「あの調合手伝います! それで許して下さい」

 ティモシーは、大抵な事なら出来る。やったことがないモノでも順序を教えてもらえれば出来る自信もあった。

 「はぁ? 何言ってるのよ! あなたに出来る訳ないでしょ!」

 「やってみないとわからないだろう!」

 つい相手の言葉に反感して男言葉で返してしまい、ティモシーはハッとする。

 「あ、えっと……」

 「そう。そこまで言うのならやってもらいましょう」

 彼女はティモシーを睨みそう返して来た。そして、片づけをしたら第八調合室に来るように言われ、その場に置いて行かれたのである。

 (片付けろって言われてもなぁ。調合室空いてるかな?)

 片付ける為の道具が他にどこにあるか、ティモシーは知らなかった。

 「何してるんだ? そんな所で……」

 ポツンと割れたビンをどうしたらいいかと眺めていたら、後ろから声が掛かり振り向くとダグが立っていた。

 「えっと……おはようございます」

 「あぁ、おはよう……」

 ティモシーが見つめていた場所をダグも見て驚く。

 「どうしたそれ……」

 「今さっき、人とぶつかって割れちゃったんだけど……。片付けておくように言われて。でも、道具がどこにあるのか……」

 朝っぱらから何をしているのだとダグは溜息をつく。

 ダグは第一倉庫から道具を持って来て、割れたビンを片付ける。

 「ありがとう……」

 「で、相手はどうしたんだ? また、作りに戻ったのか?」

 「うん。先に行ってるって」

 「先に?」

 ティモシーの返事にダグは驚いた。それは、ティモシーが手伝う事になるからである。普通許可なく作る事は規約違反である。ぶつかった相手はまだいいとして、ティモシーは許可を経なくてはならない。

 「まてまて。オーギュストさんには許可取ったか?」

 「許可? でもさっきの人がいいって……」

 「相手って誰だよ」

 そう聞かれてティモシーは、相手の名前を聞いていない事に気が付いた。

 「……名前聞いてないや」

 「お前なぁ。俺も一緒に行くからちょっと待ってろ!」

 ダグは朝から本日二回目の大きなため息をついてそう言った。

 その後二人は、第八調合室に向かった。



 ティモシーはドアをノックし調合室のドアを開けた。

 「あの、失礼します」

 お辞儀をして顔を上げると、先ほどの女性以外に二人の男性がいた。

 「ぶつかった相手ってどっちだ?」

 「女のひと」

 ダグは小さな声でティモシーに聞き、答えを聞いて驚く。相手は男だと思っていた。だから『どっちだ』と聞いたのである。

 「あら結局助っ人呼んだの?」

 「え? いや……」

 「バッタリ会ったんです。許可も取っていないようでしたので、一緒についてきました。オーギュストさんには許可を頂いたのでしょうか?」

 気の強そうな女性だし先輩なので、ダグは努めて丁寧に聞くが、女性はムッとした顔つきになった。

 「なぜ私が許可を取りに行かなくてはいけないの? 調合すると言い出したのはその子よ? 自分でいくものでしょう普通は」

 「わかりました。では、許可を取りに行って来ます。で、何を調合……」

 「もう言いわ。三人でやった方が早そうだし、じゃまだから出て行って!」

 女性の一言で二人は部屋から追い出されてしまった。

 「……取りあえず、オーギュストさんには言っておけよ。ビン割った事」

 「うん。わかった」

 そう言って二人は歩き出した。ダグは第一倉庫に戻り、ティモシーはオーギュストを探す事にする。

 「監察官室……」

 そういう部屋をティモシーは見つけた。よく考えれば、ダグに聞けば早かったかもしれないとティモシーは思った。彼なら知っていただろう。

 ティモシーはドアをノックすると、ドアが開いた。

 ビンゴだった。オーギュストが出来てきたのである。

 「おや? どうしました?」

 「よかった。今朝、女性にぶつかってビンを割ってしまって……。えっと、その報告に来ました。申し訳ありません」

 ティモシーは、取りあえず頭を下げた。

 「そうですか。で、相手の名前は? 何のビンだったか聞いてますか?」

 「あ!」

 また名前を問われ、結局聞いていない事に気がついた。声を上げたティモシーに、オーギュストは眉を顰める。何となく察しがついたのである。

 「えっと……。たぶん、第八調合室の女性の人だと思います」

 その部屋を使っていたのでそれで間違いはないだろう。だが、女性が一人とは限らない。

 「ザイダですかね……」

 オーギュストは、ぼそりと呟いた。女性は一人だけのようだ。

 「わかりました。聞いておきます。ティモシー、あなたは休養中なのですから大人しく部屋にいて下さい」

 「はい……」

 オーギュストにビシッと注意され、元気なく返事をして部屋へ向かった。

 「ティモシー」

 今日はついてないとティモシーは歩いていると、後ろから声が掛かった。声は女性だ。ベネットかと思い振り向くが、相手はさっきの女性だった。

 「え? ザイダさん?」

 「あら? 私の名前を知っているという事は、ちゃんと報告は入れたみたいね」

 「あ、はい」

 ザイダはフンと鼻を鳴らした。

 「しおらしくして見せたって、私には効かないわよ。エイブさんにもそうしたんでしょう?」

 ティモシーは、突然出て来た名前に驚く。

 「当たりかしら? あなたみたいなガキになびくわけないものね? あなたのせいで彼、王宮追い出されたのよ?」

 噂は聞いているだろうが、ティモシーの方が悪者のような言い方だ。

 (なんでエイブさんの話になってるんだ?)

 「なぜここで、エイブさんが出てくるんだよ……」

 「それが、あなたの本性なのかしら? ガサツね!」

 彼女はどうも、ティモシーを目の敵にしているようだ。ティモシーでもそれはわかった。

 (男なんだし、当たり前だろう)

 そう思うも何とか、口にも顔にも出さずに頭を下げる。

 「もう戻るので失礼します」

 「何を言ってるのよ。ちゃんと責任はとりなさいよ」

 驚いてティモシーは顔を上げた。

 (一体どうすれって言うんだよ!)

 なぜかザイダはにやりとする。

 「さっきの人がね、道具アイテム倉庫のお手伝いをしてほしいそうよ。手伝いに行ってあげてよ。それでチャラにしてあげるわ」

 「え? 調合は?」

 三人でやらなくて間に合うのだろうかと驚く。

 「ブラッドリーさんに聞いたら、他の人が作ったのがあったみたいなの。今日はそれで間に合いそうだから、一人でやる事にしたわ。着いてきなさい」

 説明をすると、さっさとザイダは歩き出す。迷うもティモシーはついて行った。無視しても面倒そうだからである。

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