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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第七章 彼と彼女の復讐劇

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第三十五話

 倉庫に着くとザイダは、ドアをノックし返事も聞かず開けた。

 「連れて来たわよ」

 そう言ったかと思うと、ティモシーの左手を取ると、倉庫に投げ入れるように引っ張った!

 「いた!」

 ティモシーは、両膝を突き、右手で左肩を擦る。

 バンッと聞こえたあと、ガチャリという音も聞こえドアを振り向く。鍵を掛けたのはザイダだった。

 ハッとして、中にいる人物を見ると先ほどザイダと一緒に居た二人だった。

 ティモシーは、辺りを見渡す。道具が入れられた棚があるが扉などない。衝撃を与えれば、道具は落ちて来るだろう。つまりは、棚にぶつかれば道具は壊れる事になる。

 (まずい。ここでは暴れられない)

 別に相手が何もしてこなければそんな必要がないが、放り込まれたのだからそのつもりだろう。彼女はもしかしたら、復讐のつもりなのかもしれない。

 「待って! 俺、こう見えても男だから!」

 近づいて来る男たちにそう言って、先手を打ったつもりだったが、大笑いするだけだった。

 (信じてないし……)

 ティモシーはドアをチラッと見た。別に鍵を掛けられたとしても、内側からは開けられる。通路に出れば何とかなるどろうと立ち上がった。

 ところが後ろに回り込んでいた男がティモシーを羽交い絞めにする。左肩に激痛が走った。

 「痛いって! 降ろせよ!」

 ティモシーは、背丈の関係上持ち上げられつま先立ちである。

 「ナイス! ミゲル」

 「暴れるなって! おい、ギルシュ、早く……」

 ガチャッと突然鍵が開けられる音がして、ドアが開いた。三人は驚いてそちらを見ると、ブラッドリーが立っていた。

 (え? ブラッドリーさん?)

 「ここで何をしている? 立ち入る許可は出していないが?」

 この倉庫もブラッドリーの管轄だった。普段ここは誰も立ち入らない場所だ。

 男たちは言い訳を考えているのか黙っているとブラッドリーは言う。

 「ミゲルさん、ティモシーを離してもらってもいいか?」

 「え? はい……」

 言われた通りミゲルは、ティモシーを開放する。

 ブラッドリーは倉庫の中に入って来た。

 ティモシーは左肩を擦る。その時ドアの方で微かに音がした。フッと見ると、ドアの際にカギを置くザイダと目が合う。彼女は慌てて逃げ出した!

 (逃がすかよ!)

 ティモシーは、ザイダを追いかける為、倉庫を飛び出した。

 「ティモシー!」

 ブラッドリーの驚いた声が聞こえたが、そのままザイダを追いかける。結構離れているが、全速力で追いかけた。

 先は行き止まり。もう少しで追いつけると思っていたら、急に右に曲がった。行き止まりではなく、T字だった。

 (行き止まりじゃなかったのかよ!)

 ティモシーもすぐに曲がったが、驚いて止まった。いや、止まるしかなかった。それこそ行き止まりだったのである。

 曲がってすぐに右手にドアがある。だがティモシーは、ドアが開閉する音を聞いていない。急いでいるのに音を立てずに開け閉めなどしないだろう。それに逃げ込むとしたらここだけなのだから、音を立てずに部屋に入る意味がない。

 一応ドアが開くか確認するも鍵が掛かっていた。ドアに耳を当て部屋の様子を伺うも、人の気配はしない。

 (どうなってるんだ? 多分、ここには入ってないよな?)

 壁に沿って見てみるが、やはりドアが一か所あるだけだった。

 「マジか……。まさか魔術師じゃないよな?」

 不安が過るも、魔力は感じていない。訳が分からなかった。

 仕方なくブラッドリーの元へ戻る事にする。まだ三人は倉庫の中にいた。

 「どうした?」

 戻って来たティモシーにブラッドリーは一言聞いた。

 「ザイダさんを追いかけたら行き止まりで消えた……」

 困惑した顔でティモシーは答えた。

 「ザイダか……。嘘は言ってないようだな」

 ティモシーがザイダを追いかけている間に、二人に話を聞いていたのだった。彼らは正直に話したようだ。

 二人を開放した後、ティモシーはブラッドリーと一緒に、レオナールの部屋に向かった。



 部屋の中でブラッドリーは、ティモシーの左肩を診た。

 「しばらくは左腕は、あまり動かさない様に」

 そう言われ、ティモシーは頷く。

 「さっきの二人だが、もうあなたを襲う事はないだろう。男だと教えてやった」

 「え! 信じたんですか?」

 ブラッドリは、頷いた。

 (俺が言っても信じなかったのに!)

 ブラッドリーが嘘を言う理由がないので、相手も信じたのである。

 「そう言えば、ブラッドリーさん何しに来たんだ? 偶然?」

 あまりにもタイミングよく来たので、不思議に思い聞いたのだ。

 「あの場所には関知する結界が張ってある。あそこには普段は人は立ち入らないからな。人がずっといるようだから見に行ってみたら、あなた達が居たというわけだ」

 あの場所には普段は人の出入りはない。何かを隠すのには最適な為、用心していたのである。

 「それとザイダだが……おそらくは、隠し通路に出たのだろう」

 ブラッドリーは、あの行き止まりの壁に、隠し通路に続くドアがあると言いだした。そこは、三階と五階を繋ぐ通路で、レオナールが行き来するのに使っていたモノで、驚く事に地下にも繋がっていた。そこは牢屋があった。兵士は置いていない。今、牢の中にいるのは、魔術師だからである。

 「私は様子を見て来るが、あなたは大人しくここにいるように!」

 「はい……」

 ブラッドリーにまでそう言われ、ため息をしつつ返事を返した。

 ティモシーは彼が部屋から出て行くと考える。

 ザイダは秘密のドアを知っていただろうか? 偶然見つけるにしても時間が無さすぎる。知っていたとしても使ってはいなかっただろう。というよりは、使う事がない。五階に行くことも地下に行くこともないからである。

 「じゃ、俺があの場所を離れた後、出て来たかもな。あるいは五階に逃げたか……」

 自分から逃げる為に使ったのだとしたら、地下にはいかないだろうとティモシーは思った。



 夕方、ダグが部屋に来た。

 「あぁ、疲れた」

 「えっと。お疲れ様です」

 ドカッとダグは、ティモシーの横に座った。

 「そう言えば、あの事どうなった?」

 「あの事って?」

 ダグはティモシーを見て眉を寄せる。

 「ビン壊しちゃった事だよ」

 「あぁ、オーギュストさんに伝えた。名前はザイダさんだって。調合は、今日の分は間に合うって言っていた」

 「そうか」

 ダグには、今日あった出来事は言わないでおいた。色々あって疲れていて説明が面倒だったし、これ以上迷惑も掛けられない。ティモシーも少しは成長したのである。

 「もし辛かったら、部屋に戻って休んでもいいんだぜ。お前、休養中なんだし」

 ティモシーは、無意識に左肩を擦っていた。

 「あ、うん。そうするかな……」

 「大丈夫か? 部屋まで送ろうか?」

 思ったより元気がなさそうに見え、ダグはそう声を掛ける。

 「え? あ、大丈夫! 三階に降りるだけだし」

 「そうか。じゃ、また明日な」

 「うん。また明日」

 そう返しティモシーは、部屋に戻った。



     ☆~~~~~☆~~~~~☆~~~~~☆



 「ティモシーさん」

 そう呼ばれてティモシーは、目を覚ました。目を開けるとエイブが顔を覗き込んでいた。

 「え!」

 驚くも体は動かない。そして、覗き込んでいたと思ったエイブと立って向き合っていた。周りは暗闇だ。なのになぜか彼の姿はちゃんと見えていた。

 「こんばんは。今日はなんか体調悪そうだね?」

 「………」

 (なんだろう? これ前にもあった? ……あ、これ夢か……)

 ボーっとする頭でそう考える。

 「今日は何していたの?」

 ふと、ザイダの事を思い出す。エイブは彼女を知っているのだろうか? ティモシーはそう思うと口にしていた。

 「ザイダさんに会った。エイブさんを知っている感じだったけど……」

 「ザイダさん? あぁ、あの人……気が強かっただろう? 俺はあまり好きなタイプじゃないな。ティモシーさんはどう?」

 そんな質問を振られると思っていなかったティモシーは、慌ててしまい本音をこぼす。

 「え? いや、あの人とはもう関わりたくないというか……」

 「だよね? でもあの人、しつこいから気を付けて」

 エイブは心配そうにそう声を掛けて来た。つい、ティモシーは頷いた。

 「でもどうやって知り合ったの? あ、調合室近いか……」

 エイブは、右手を顎に持っていき考えるしぐさをする。

 「あ、ぶつかってビン壊しちゃって……」

 「あらら。怪我しなかったかい?」

 「あ、それは大丈夫。でも、調合薬無駄にしちゃった」

 ため息をしつつティモシーは答えた。いつの間にか警戒心を解いて話していた。

 「ところで君、家には帰ってる?」

 「家? なんで?」

 「何となくね」

 ジッとエイブはティモシーを見つめる。答えなくてはいけない気がしてティモシーは口を開く。

 「今、王宮に泊まってるんだ」

 「そう。だからずっと近くにいる感じがしてたんだ……」

 「え?」

 『ティモシー……』

 誰かの声が聞こえティモシーは辺りを見渡すも誰もいない。そして、エイブの姿も消えていた――。

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