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魔術師なのはヒミツで薬師になりました  作者: すみ 小桜
第五章 疑惑の彼

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第二十六話

 翌日の朝、ティモシーは作戦を決行する。っといっても大した作戦ではない。レオナールの部屋には行かずに、調合室に行くだけである。つまりは仕事をする。アリックは休むだろうが、ダグは来るかもしれない。そうすれば、ベネットもいるだろう。という思惑である。

 たった今、ランフレッドはルーファスの元に向かった。後は、見つからずに調合室に行くだけだ。

 ティモシーとランフレッドは、同じ部屋で三階。調合室には階を移動せずに向かえる。気を付けるなら、ブラッドリーだけだろう。

 そっと廊下を伺い、誰もいないのを確認する。

 (よし! 誰もいない)

 ティモシーは、足早に調合室に向かった。

 「ティモシー?」

 しかし、暫くして後ろから声が掛けられ、ティモシーはビクッとして振り向いた。そこには、ダグが立っていた。彼は驚いた顔をしている。

 (なんだ。ダグか……)

 「あ、えっと、おはようございます」

 「あぁ、おはよう。って、お前怪我はいいのか?」

 ティモシーは頷く。

 「俺はてっきり休みかと思った。しかし、あの人思ったよりスパルタだな……」

 あの人とは、ランフレッドを指すのだろう。

 「あ、えっと。実は王宮に泊まって……暇だから……」

 「あ、なるほど! ってお前、暇で仕事するのか……。俺なら、これ幸いと寝て過ごすけどな」

 っと、ダグはいつも通り笑う。ティモシーは、ふうっと安堵する。だが、今日に限ってまた声が掛かる。

 「おや? ダグだけじゃなくティモシーもいるのか……」

 微かに聞き取れた声に二人は振り向いた。その相手に驚く。ルーファスだったのである。

 「おはよう」

 「おはようございます」

 「おはようございます……」

 ダグは軽く頭を下げ、ティモシーはスッとダグの後ろに下がる。

 ティモシーは、やばいと思った。調合室につく前に見つかったと。だがよく見ると、ランフレッドはいなかった。

 「ティモシー。君はレオ殿の所に行ったのではなかったのか?」

 ルーファスもレオナールの所に行く事を知っていたのかとティモシーは焦る。

 「レオって確か……。うん? 殿?」

 『レオ』の名に聞き覚えがあるダグは、ルーファスが『殿』を付けて呼んだ事に疑問を持ち、ボソッと零す。

 「まあ、いいか。今日はベネットは休みだが? 二人共どうする事になっている?」

 「え! 休みなの!」

 「うんじゃ、帰るかな……」

 ティモシーは驚くも、ダグの方はそれこそ幸いと、家に帰って寝る気なのだろう。

 「夕方まで馬車は出ない。今、ここも兵士が少ないからな」

 「マジかよ……」

 「連絡の行き違いがあったようだな。……では、暇だろう。どうだこれから、私の用事に付き合わないか?」

 ルーファスの突然の誘いに二人共キョトンとする。ティモシーはともかくとして、ダグに声が掛かるとは思っていなかった。ルーファスに招待を受けるほど接点などないからである。

 「あの……どちらに? お供のランフレッドさんは……」

 「居た! ルー……ファス王子! ここにお出ででしたか!」

 ダグの質問と被るように、遠くから声が響いた。言うまでもなく、ランフレッドである。

 (げ! とうとう来た!)

 「お探ししたのですよ! どうして部屋にいらっしゃ……って、ティモシー、お前! どうしてここにいる! レオ……ふがふが」

 「君は煩い!」

 ランフレッドの口を突然、ルーファスがパっと塞いだ。これには、塞がれた本人もそうだが、ティモシー達も驚いた。

 「これから三人で森に行くことになった」

 「はぁ? 森? いやいや、この状況下で森って……」

 ルーファスは、ランフレッドの口を塞いだ手を服にこすりつけながら言うと、ランフレッドは驚いた。ティモシー達も行き先が森でこちらも驚く。

 「ランフ、地に戻ってる。……森と言っても敷地内のそこだ。問題ない。暇そうだし見せてやろうかと思ってな」

 「違う日にして頂けませんか? 森の見回りの兵士も昨日の夜から街の見回りに当てております。危険です」

 「行きたいです!」

 ダグはランフレッドの意見に賛成して頷くが、ティモシーはルーファスの意見に賛成した。森に行けないと、レオナールの部屋行きが確定だからである。

 「大丈夫だ。剣も持って来た。それにこの頃警備が強化されて、うさぴょんが怯えて姿を現さない。今日なら見れるかもしれない」

 「………」

 「はい! 見たいです!」

 「……兎より自分の事を考えてくれよ」

 大賛成のティモシーだが、ランフレッドはボソッと呟き、大きなため息を漏らす。ダグは、少し眉をひそめるだけだった。

 「では、行くぞ」

 「はいはい」

 話は決まったとルーファスが歩き出すと、仕方なしにランフレッドは彼の後ろを歩く。ティモシーは意気揚々とダグは緊張気味に後をついて行った。

 四人はバルコニーの下にあるドアから広場に出て、そこから森に繋がる道に進んで行った。



 道なりに進むと、十分ほどで二手に分かれた道に差し掛かり、ルーファスは迷わず左側の道を選び進む。

 「こちらの方は、手つかずになっていて、たまに野生の動物も見られる」

 ルーファスは歩きながら、そう説明する。そうして更に十分ほど進むと、歩みを止めた。

 「ここらへんだな」

 ルーファスがそう言うと、ティモシーとダグはぐるっと辺りを見渡す。

 「ティモシー、野生動物は音に敏感だから静かにすれよ」

 ランフレッドは、先に釘をさして置く。

 「わかってるよ」

 少し小さな声でティモシーは答えると、ダグが笑いを堪えて肩を振るわせる。

 サァっと優しい風が吹くと、森も優しく囁くように感じる。

 ティモシーは、久しぶりの森林浴だと、目を瞑り空を仰ぐ。ふと視線を感じ目を開けると、三人がジッと見つめていた。

 「そうしていると、ホントお前……」

 ――女の子に見えるな。っと続いたのだろうが、ティモシーが睨んだのでランフレッドはそこで口を閉じた。

 「少しぐらいなら、森に入ってもいいが、迷子になるなよ」

 と、ルーファスがそう言うと、ティモシーは嬉しそうに頷く。

 「ちょっと待て!」

 ティモシーは、木の間隔が広い場所から森へ入って行こうとするが、慌ててランフレドが追いかけ手を取った。ティモシーならドンドン奥に入って行きそうだからである。

 「俺は今、ルーの護衛してるからお前はルーから離れるな! もし何かあってもルー優先なんだからな!」

 「わかってるって。それに見ていいって言ったのルーファス王子だろう?」

 「大丈夫だ。私ならついてきている」

 二人の会話にルーファスがそう言って割り込んだ。見るとルーファスもダグもついてきていた。ランフレッドは、ティモシーの手を離した。

 何故かティモシーを先頭に少しだけ森の中へ進む。三分ほどでティモシーは止まった。

 「わぁ。すごい! エール草だ! 流石王宮内にある森だ!」

 ティモシーは、くるっと左側を向き目を輝かせる。

 エール草は最上級のランクの草で、治療に効果があるが栽培が難しいと言われ高額なのである。

 「いや、この森にエール草などないはずだが……」

 ルーファスがそう言うと、ティモシーはエール草に近づき膝をつく。

 「間違いない。こんなにいっぱいあるなんて!」

 「本当にこれ、そうなのか?」

 ランフレッドは、ティモシーの後ろに立ち、そこからのぞき込む。ダグとルーファスも近づき、ランフレッドの後ろに立ち見渡す。

 「これって、棲息してるっていうか。栽培している感じじゃないか?」

 「そうだな、摘んだ跡もあるな……」

 ダグが目の前に広がるエール草を見て言うと、ルーファスもその言葉に頷いた。

 エール草は、きちんと等間隔に生えていた。自然に棲息したのならこうはならないだろう。

 「何! だったら! ここは危険かも……」

 二人の意見を聞いたランフレッドがティモシーの手を取った時、ティモシーは魔力を感じ、そちらを振り向こうとするが辺りに影が落ちる。ハッとした時には、眠りに落ちたランフレッドが、ティモシーの上に倒れた来た! そしてそのまま、ティモシーも下敷きになり、二人はエール草の上に倒れた。

 (なんだよこれ! また下敷きって!)

 ティモシーからは、ルーファスの足しか見えない。しかもその足は、地上を踏みしめていた!

 (え! ルーファス王子も魔術師! 聞いてないけど!)

 ティモシーはその驚きで、誰が魔術を使ったんだろうかという疑問など一瞬吹き飛んだ。

 「まさか、ルーファス王子が魔術師なんてな……」

 だがその台詞を聞いて、ハッとした。当たり前だがダグも魔術師だ。起きている。いや、もしかしたら魔術を使ったのは彼かもしれない……。ティモシーは、そんな疑惑が頭を過った。

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