第二十七話
ティモシーはもう、正体を隠している場合じゃないっと、起き上がろうとした。だが、ランフレッドはアリックより重い上に、左肩の上に乗っかっていた。力を入れると激痛が走る。
(痛! どうしたら……取りあえず、見つからない様にペンダントを外して……)
ルーファス王子に何かあれば、ティモシーもただではすまない。何せ、レオナールが魔術師だと知っているのだから。今の状況から行くと、ルーファスはティモシーが魔術師だとは知らないのだろうというのはわかるが、グスターファスは知っているかもしれない。
今知らなくともルーファスに何かあれば、レオナールが告げるだろう。兵士ではないのだから戦わなくともいいかもしれないが、見ないふりは出来ない。せめて、一緒に逃げるなど、出来る事はしなくてはと、ティモシーは焦る。
「驚いたな……トンマーゾ、君がここにいるなんて」
(え? トンマーゾさん? もしかして魔術を使ったのは……)
ティモシーはホッとする。魔術を使ったのはダグではなかったからだ。でもまさか、彼も魔術師だとは驚いた。
「トンマーゾさん、なんで……」
ダグも驚いて呟く。
「まさか、裏切ってここに王子を連れてくるなんてな!」
「な! 変な事をいうな!」
突然のトンマーゾの言葉に、焦ってダグは否定する。
「一つ確認をするが、彼の仲間か?」
「まさか! トンマーゾさんが魔術師なのは今、知ったばかりです!」
ルーファスの問いにダグがそう答えると、そうかとあっけなくルーファスは頷いた。
「ダグを信じるのですか? 王子」
「信じるも何も二人共捕らえればいいだけの話だ」
「二対一で、強気ですね」
「一人はそっちだろう!」
ダグがトンマーゾにそう返すと、彼はトンマーゾに走り出した。だがトンマーゾは逃げずにとどまっている。いや、ダグは走り出すと同時に、動きを止める魔術を掛けていたのだ。
ガシッ! と右手でトンマーゾの首をダグは掴んだ。
「あんた! 昨日襲った奴の仲間か?」
「まて、ダグ!」
首を絞めるダグに、ルーファスは慌てて声を掛ける。
「大丈夫です。首を絞めているのではないので!」
ダグは、ルーファスにそう返した。
「薬師を集めて何をし……ウッ」
ダグは咳込みうずくまる。トンマーゾにかかった魔術が解け、彼は膝蹴りを食らったのだ!
(やばい! ダグがやられた!)
ティモシーは、見えないが雰囲気でわかった。そっとペンダントに手を伸ばす。
「そこまでですよ。トンマーゾ!」
突然、その場にいなかった人物の声が聞こえ皆驚く。
「レオ殿!」
「な! お前も魔術師か!」
トンマーゾは解いたはずの魔術にまたかかった事に驚く。そして、彼の問いにレオナールは頷いた。
「レオ殿の読みは当たりましたね」
「そのようです。ブラッドリー」
レオナールは、ルーファスの言葉に頷きながらブラッドリーに指示を出す。ブラッドリーは、トンマーゾの右腕にブレスレットを付け、ダグにも同じように付けた。このブレスレッドには、魔力を封じる効果があるマジックアイテムだ。
「やはり、俺はハメられたのか……」
そう言ったのは、ダグだった。
彼は気づいていたのである。王宮で会った時にルーファスが言った『ティモシーもいるのか』と聞いた時からなんとなくわかっていた。剣を持って来たと聞いて、最初から自分を森に誘い出すつもりだったのではと疑惑を持ち、今それが当たったと確信したのである。
「まあ、半分は当たりですね。あなたが魔術師だと言うのは気づいておりました」
レオナールは、ダグにそう返した。それを聞いたトンマーゾは悔しそうに言う。
「っち。俺は、運悪く巻き込まれたのかよ!」
「まさか! これは、あなたをはめる罠ですよ?」
レオナールの言葉にトンマーゾだけではなく、ダグも驚いて彼の顔を見た。ティモシーも驚いていた。というか、もしかして自分から作戦に巻き込まれたのではないかと思った。
「ど、どういう事だ?」
トンマーゾが、レオナールに問うと、ルーファスが口を開く。
「私がエイブを捕まえた後すぐに、ここを発見していた。そして、ワザと放置し、レオ殿がその後ここを見に来た時には、エール草が少し摘まれていた。そこでエイブ以外にも何かを企む者が王宮内にいる事を知った」
エイブが捕まった事により森も少し強化されたのだが、実際はエイブ以外に不届き者がいるとわかり強めたのである。
「薬草を所持していてもおかしくない人物は限られてくる。研究している人物も怪しいが、犯人がその研究室にいる全員でなければ、エール草などあれば怪しまれるだろう。そうなると、倉庫の人間に限られてくる。それも薬草そのものを管理する第一倉庫が一番怪しかった。隠して保管しても見つかりづらい。そうなれば、君かメジドルクになるわけだ」
ここでバトンタッチし、レオナールが語り始める。
「森の強化をお願いをして様子を見る事にして頂いたのですが、思わぬ事件が起きまして、それを利用して逆に森の警備を薄手にし、一人ずつ出勤させる事で、取りに来るチャンスを与えたのです。そして、見事にひかかって下さいました」
そこまで聞くと、トンマーゾは悔しそうにレオナールを睨んだ。
「あんた、何者なんだよ……」
大人しく話を聞いていたダグは、ボソッと訪ねた。
「そうですね。もう正体を明かしても宜しいでしょう。私は、ハルフォード国第一王子レオナールです」
それを聞いた二人は、目を丸くした。
「じゃ、もしかして、ルーファス王子は魔術師では……」
「私は、残念な事に魔術師ではない。レジストしたのは、レオ殿に頂いたマジックアイテムのお蔭だ」
(そうだったんだ……)
こっそり聞いていたティモシーも関心していた。
「少し失礼します」
突然ブラッドリーが話が一区切りついた所で、トンマーゾの制服のボタンを外していく。
「は? 何するんだ! ブラッドリーさん!」
抵抗するもグイッと制服を引っ張った! 左胸が露わになる。
「無いようです」
「そうですか。では、操られている者ではないようですね」
刻印がないか確認をしたのである。
「ダグも確認しておきますか?」
「そうですね」
ブラッドリーがレオナールに確認を取ると、ダグに手を伸ばす。ダグは大人しく確認をさせた。ダグにも刻印は、なかった。
「一体何の確認だよ……」
ボソッと、ダグが言うも誰も答えない。
「さてと、二人を起こしますか」
レオナールはそう言うと、自分自身で二人を起こす。
「ランフレッド、ティモシー、起きなさい」
魔術を使って、術を解除したのは、ランフレッドのみでティモシーにはフリだけだった。その為に、レオナール自身が二人を起こしたのである。
「うん? あれ?」
ガバッとランフレットは、上半身を起こした。そして、ハッとしてルーファスを探す。彼を見つけると安堵するが、レオナールを見て少しムッとした顔をした。
「まさか、ルーファス王子! 俺も騙しました!」
疑問形のはずの言葉だが、確定のような発音の言い方だった。
「悪かった。君に言ったら反対するだろう?」
「当たり前です! それに、俺が寝てしまったって事は、相手は魔術師ですよね? 危険すぎます!」
「無事だっただろう? それよりティモシーが睨んでいるが?」
ルーファスに言われ、自分の下にティモシーがいた事を気づき、慌てて飛びのいた。
「あ、わりぃ。大丈夫か?」
そう言って、ティモシーに手を出すも、フンと一人でティモシーは立ち上がり、制服の汚れを叩いて落とした。
「二人共怪我がなくて、何よりです」
レオナールがニッコリ言った。
「レオナール王子、お願いですからルーファス王子を巻き込まないで頂きたい!」
「巻き込む? その観点から言いますと、巻き込まれたのは私なのですが? 私は、彼に頼まれて協力しただけです。それに、あなたにそれを言う権限などありませんよ!」
「うっ」
意見したらガツンと返され、ランフレッドは何も言えなくなった。
「申し訳ありません。レオ殿。ランフにはきつく言っておきますので……。ランフ、トンマーゾが魔術師だったのは予定外だからな」
「トンマーゾさん?」
そこで初めて、一人増えている事に気づいた。ブラッドリーはレオナールの部下なのでいても不思議ではない人物だったので違和感なかった。そして、何故いるんだろうか? それは、犯人だから。という考えが一瞬で巡った。
「え! トンマーゾさんがエール草を密造していた犯人?」
「今更ですか……」
驚いて発したランフレッドの言葉に、レオナールはあきれたように言ったが、何が起こっていたか知らないのは、ランフレッドだけだった。




