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幻想(ファンタジー)の欠片~今日の授業を始めます~  作者: 月灯銀雪
ささやかなる幻想(ファンタジー)
41/53

36【豊饒祭4】おねこ様vsこいぬ様




 拙作にお立ち寄りいただきまして、ありがとうございます(>_<)



 連れ去られた主人公、不穏な気配漂う殿下……字面だけ なら手に汗握る展開です(;;・`ω・´;)q





 着替えと称して、私は丸洗いの憂き目に遭った。ついでに、傍にいて微妙に果実ジュースの被害に遭っていたティタリアも一緒に 給湯の魔法機械を設置された大きな浴槽に放り込まれた。お貴族様は猫足バスタブじゃないの?!……でも、流石はお貴族様、温かいお湯に手足を伸ばして浸かれて 生き返る心地である。はふー。



「ごめんなさいね、先ほどの事は カリスタレイア様も咄嗟のことでしたの」



「いつもは……わたくし達が利用する食堂で鉢合わせなさった時には、ウォルセン殿下が大人しく嫌味を聞いて、それだけで終わりますのよ。わたくしたちも驚いているのですわ」



(……ごめんなさい。たぶん、私のせいなのですわ)



 うっかり お嬢様言葉に影響されながら、心の中で深々と謝る。あ、すみません、たぶん 貴族のお嬢様なのに髪の毛まで洗っていただいて……。そうですか、下位貴族のお嬢様は行儀見習いとして上位の方の侍女的なことをなさっていて慣れていると。ふむふむ。貴族社会って奥が深い。



 私はほとんど喋らなかったけど、恐縮する私やティタリアを気遣ってか、色々と話してくれる お姉さま方に手伝っていただいて、魔法で綺麗になったドレスをまた着せてもらって元通り……のハズなんだけど。



「カリス様の予備ですが、こちらも 可愛らしいのではなくて?」



 最上級生らしき お姉さまの一言で、雲行きが怪しくなった。






~*~*~*~


〔カリスタレイア視点〕




「じゃあ、カリス。事情を聞かせてくれるかな?」



 わたくしの向かい側へ腰を下ろし、笑みを深めて 説明を求めるウォル様。なんとなく感じる程度ですが、ウォル様の身の内で感情とともに蠢いているのであろう強大な魔力に 引き摺られるようにして揺らめく魔素。それが 今にも見えるようで、ひやりとした心地でわたくしも笑みを返します。意識的に優雅に、目の前の紅茶を少し含んで渇いた口内を潤し、意を決して言葉を紡ぎます。 



「ええ、ですが その前に。ウォル様、先ほど魔法を使おうとなさったのではなくて?」



「魔法を? 僕が?」



 不思議そうに首を傾げる姿に、やはり ウォル様は感情に引き摺られていることを確信しました。この方はいつも大人しいけれど、大切にしているものに手を出されたり愚弄されることを殊の外お厭いになるようですから。



「はい。わたくしはウォル様ほど感覚に優れている訳ではありませんが、魔素の流れを感知致しましたの。ウォル様ならば、軽々しく危険なものを使うことは無いのでしょうけれど、わたくしの立場では黙って見ているわけには参りませんでしたわ」



 ほんの小さな時から見知っているのです。幼さゆえに制御しきれなかった魔力が風や雷煌の現象を得て、皇城でちょっとした騒ぎになった事もありましたもの。わたくしが到着して間もなく ヴィー様が、明らかに地雷を踏み抜いてしまわれた時には肝を冷やしました。……あの方も困った御方ですわ。



「……そうだね、“兄上の婚約者”殿」



 わたくしがヴィー様の事を心配しているとお考えなのか、僅かに皮肉を込めた 距離を置くような呼び名を使うウォル様を軽く睨みつけます。わたくしがあの時、何方達を守るために行動したのか、分かっておられないようね。



(んもうっ! お咎めを受けてでも、直接 果実水を掛けて頭を冷やして差し上げれば良かったかしら!?)



「そんな言い方は止めてくださらない? わたくしは貴方の“従姉”でもありますのよ。また、あんな騒ぎが起こるなんて御免ですわ」



 その言葉に、やっと自分の魔力が暴走しかけていた現状に気づかれたようで その場の魔素の揺らぎが無くなりました。こっそりと、いつの間にか力を入れて扇子を握っていた左手を緩めます。心臓に悪いですわ。



「わかったよ、ごめん。ちょっと冷静じゃなかったみたいだ」



「お分かりいただけて幸いですわ」



 本当に良かったですわ。あのように人目のある場所で、庶民の娘を切っ掛けに 皇子2人が流血沙汰など起こせば、噂好きの姦しい(貴族)たちにとって 格好の話題(醜聞)となってしまったでしょう。……今でも、十分に噂の種くらいにはなっているでしょうけれど。



「……それにしても、お気をつけくださいませ。あの場で ヴィー様に何かをすれば、後々 心ない風聞に傷付けられるのは ウォル様だけではございませんのよ」



「うん……。肝に銘じるよ」



 そうして、少し気を落とされた様子のウォル様と 紅茶をいただきながら待つことしばし。






「お待たせいたしました」



『……』



 そんな声と共に開かれた奥への扉。そこに居たのは、お花のドレスはそのままに、羽根の代わりに 予備の猫耳と尻尾を付けられて ほんのり頬を染めながらお友達に手を引かれて出てきた アーシャさんがおりました。



(まぁ!なんて可愛らしい子猫さんでしょう!! 恥じらう姿が初々しいですわね♪)



 我らがルイン様(アイドル)に纏わり付き、皇族たるウォル様に取り入る強かな庶民の娘 との噂を聞きつけ、牽制ついでに様子を見に行った彼女は、わたくし(貴族)に張り合うことも 媚びることもせず、むしろ 避ける様子を見せました。話を聞いてみれば、下心など見当たらず……。



(あら……ウォル様も見惚れて(放心して)おいでだわ)



 ウォル様の方が彼女を気に入っているのなら、わたくしは 悪意ある噂を鎮め、ただ見守れば良いのでしょう。余計な手出しは、この 小さな芽を枯らしてしまうかもしれないから。








 おねこ様 優勢の後、乱入した こねこ様により圧勝!!!


 あれ? 手に汗握っていたのは カリスタレイアの方だった……(゛д゛;)



[補足(蛇足?)的な設定]


《ラシエル嬢の意図と行動》


 弟のような殿下に悪い虫が寄って来たとの噂を聞き、様子見。風変わりではあるけれど、悪意は無さそうなので『質の悪い噂は誤解である』と、お嬢様ネットワーク(ファンクラブ仲間)により主人公の噂の緩和を図る。


 注目を浴びながら言い合いをする皇族兄弟を諫めるべくやって来たけれど、婚約者は地雷を見事に踏み抜き、弟分はキレる寸前のため、場の雰囲気を一気に変える&一番穏便に済む方法として 自ら悪役となって主人公に果実水を浴びせて悪態を吐いた。


 ちなみに、いじられキャラは彼女の素である。

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こぼれ話や番外なお話→ 欠片の一粒~小話をします~
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