32【学級活動】豊饒祭の準備
拙作にお立ち寄りいただきまして、ありがとうございますm(_ _)m
いつもより、ちょっとだけ長めです。
私は正直、 上流階級というものを嘗めていた。
ヨモギの緑色鮮やかな葉っぱクッキー
バラ・スミレ・ビオラなどの花の砂糖漬け
チョコの花を乗せたマフィン
木の実みたいな飴細工
豊饒祭の模擬店って自分たちで作ったお菓子や軽食を売るものじゃなかったらしい。まさか、補助という名目でクラスメイトのお家から派遣されて来たプロたち(複数?!)がほとんど作って、万全のサポートでお嬢様たちが仕上げたものがアリだったなんて……。
それだけではない。てっきり既製品を飾り付けする程度かと思っていた衣装も、まさかの仕立て屋さんを招いてのオーダーメイドである。私まで仕立てて貰った。ちなみに、お金持ち組は自費で、私と数人の庶民&訳アリ貴族組は クラスの予算から、ということになった……上流階級が豊饒祭にかける情熱ってすごい。
と、お嬢様方と一緒に採寸されながら 遠い目になったりもしたけれど。私は私のできることをしようと思う。
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豊饒祭が近づいてきた日のホームルーム。それぞれの担当に別れて準備をする。今日は魔法薬を作る係で集まって、薬草を採取しに行く予定である。クラスの中で調薬に馴れている私とウォルセンと、基礎薬学の得意な あと2人。
「このメンバーで採取だね、よろしく」
「よろしくお願いいたします。ウォルセン殿下、アーシャさん」
「オレも、よろしくお願いします」
「よろしく。リリアーヌ様、と……ミリガン?」
採取へと出発前するに軽く挨拶を交わすが……。
「ざんねん! ミリガンはあっちの騒がしい方。オレはミドガンだよ」
もう、2学期なのにクラスメイトの名前を間違えたらしい。面目ない。拙者の不徳の致すところでゴザル。
「ごめん……」
「あはは。ま、気にしないで! 家も近所だし名前も似てるから、間違われるのとか 実は慣れっこなんだよね」
かなり落ち込みかけたけれど、意外と軽い態度で流してくれた。そんなミドガンに感謝して、騒がしさは似たり寄ったりだ ということは黙っておこう。うんうん。
「じゃあ、挨拶も済んだし、そろそろ行ってみようか? 一番採取に慣れてるアーシャに付いていくから、目的の薬草がありそうな場所を教えて」
「ん。こっち」
校内の薬草ポイントなら任せておくれ。自分の練習用やら、ルイン先生やクリスティン先生のお手伝いやらで、1年生でも扱って大丈夫な薬草は網羅している……ハズである。まあ、今回はよく作るものの材料なので問題なく3人を案内する。学科棟から南東に向かえば訓練棟と、暑さと訓練の厳しさにヒーヒー言いながら騎士志望の上級生たちが訓練をしているグラウンドが見えてくる、程よく拓けていて日当たりが良いので色々と育っている。
「この辺にコバコ。あの辺りにキショウ、とコルフルイ」
「ああ、これか! 足元に生えていても意外と気づかないものだね。アーシャ嬢」
早速 ミドガンがしゃがみ込んで オオバ……じゃなくてコバコを採取にに取り掛かる。すると、リリアーヌ様も採取用のスコップを取り出して微笑む。
「この辺りの採取はお任せくださいな。殿下とアーシャさんにはフィリアリーフをお願いいたしますね」
「わかった。じゃあ、僕たちは人工林の方へ行ってみようか?」
「ん」
庶民のミドガンは良いとして、リリアーヌ様は子爵家のお嬢様だから 薬草採取は大丈夫かな? と 心配だったけれど、意外と平気そうだ。私がいつも薬草採取の時に持ち歩く虫除けの香をあげたからかもしれない。入学してすぐ、虫にビビりながら採取する私を見かねたルイン先生に教えて貰った特製ブレンドである。主原料はハーブなのでちょっと良い香りだ。
ウォルセンと一緒に人工林へ向かって歩いていると、いつもの場所にダークグレーなもふもふ……フェインが座っているのが見えた。
(また、怪我したのかな?)
「? アーシャ、どうし……あ」
少しだけ足を速めたら、ウォルセンが不思議そうに声を上げかけ、途中でフェインがいることに気がついたようだ。
「よ、アー……げ。今日は小型犬と一緒なんだな」
「げ、とはご挨拶だね。大型犬君は体躯ばかり育って、随分なやられっぷりみたいだけれど」
「これはっ……」
今日もまた険悪な雰囲気だけど、この2人はいつもこんな感じなので これが2人なりの挨拶なのかもしれない。それよりも。
「酷い怪我」
そう、いつもかすり傷ばかりだけれど、今日は左の甲から肘の近くまで ザックリと刻まれた傷があり、今も血が出ているようだ。普通の軟膏を塗ろうとしていたみたいだけど、急いで手提げから 魔法軟膏を取り出して隣に座る。
「あ?! おい、アーシャ、あんま引っ張ると血が付く……」
「動かない!」
一瞬 躊躇うように抵抗したフェインを強めに制して、丁度よい台も無いので引き寄せた左手を私の膝に乗せる。ウォルセンもフェインも呆気に取られているみたいだけど、あちらなら急いで病院に連れて行って 縫ってもらうレベルの怪我に見えたので 些細なことは気にしない。……良かった、あんまり深い傷では無いようで、この魔法軟膏でもなんとかなりそうだ。
「《浄化》」
保健室へ手伝いに行くようになって できるようになった 光の“浄化魔法” で消毒して、傷口を綺麗にする。傷口がくっつきやすいように、周りを軽く押さえながら 魔法軟膏を慎重に塗ってゆく。治れ、治れ。
「……これで、大丈夫」
「お、おう……。あり、がとな」
一通り塗り終えて、すぐ隣のフェインの顔を見上げ 様子を伺う。ちょっと頬に赤みが差して目が潤んでる気がするけど、もう 痛みは無いようだ。良かった。
「一応、保健室に行って」
「あ、ああ。わかった、そうする……」
フェインの左手を彼のもとに返して、血の付いたスカートに軽く水の“洗浄魔法”を掛ける。汚れを水が包んで離れてゆくイメージの魔法なので、服がびっしょりにならない優良魔法である。……洗うものが多いと ちょっとばかり燃費が悪いので、普段は使わないけど。
「じゃあ、もう大丈夫だね? 行こうかアーシャ。あまり遅くなったら、皆が心配しちゃうから」
「あ! ……ウォルセン?」
少しだけ強引に 私の手を引いていくウォルセンは、ちょっと ご機嫌が斜めなようだ。こんな彼を見ていると、どうしても前世の弟を思い出してしまう。
『僕のお姉ちゃんなんだからね!!』
そんな風に、私の友達にも食って掛かる小さな弟。あの時の、自分の動かない体と 痛みに呻く弟の弱々しい声。あの子はどうなっただろうか?
それでも、私はもう“アーシャ”になってしまったから。
アーシャの手を引くウォルセンの手を握り返して、どことなく頑なな雰囲気を漂わせる後ろ姿へ 諭すように声を掛ける。
「痛いのも、苦しいのも、嫌だよね」
足が止まって、溜め息ひとつ。
「……“それ” が君らしさだもんね。うん、僕も痛いのは嫌だし、苦しむ人を見て喜ぶ趣味も無いよ」
そう言って振り返ったウォルセンは、ちょっとだけばつが悪そうでいて、やんちゃだった弟とは全然違う 柔らかな笑顔を浮かべていた。
壁∥q'v')) チラチラ
Σ(゛д゛;)っ!? し、シリアスさん、何故あなたがここに……?? 呼んでない。呼んでないよ!!
というわけで、ちょっとだけ 主人公の心残りが垣間見えてしまいました。本当は作風的に出さないつもりだった裏設定です。でも、この背景を知らないと、主人公の言動が「意味分かんない!」なことになるかな~? と、思い直しましてm(_ _)m
[苦労と言うほどでもない裏話]
《植物の名前》
実際にある薬草や考えた薬草名をググってみたり、薬の成分やら飲み合わせを調べてみたり……。作品全部を通して全ての植物の名前を変えて出そうかと思いましたが、挫折しました |||orz
なので、お菓子の行の名前はそのまま出ています。
花の砂糖漬けレシピを調べている時に出てきた、キンモクセイの砂糖漬けが とても気になる今日この頃。




