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幻想(ファンタジー)の欠片~今日の授業を始めます~  作者: 月灯銀雪
ささやかなる幻想(ファンタジー)
30/53

閑話【アーシャの修行(アルバイト)】




 拙作にお立ち寄りいただきまして、ありがとうございます(*^人^*)



 すぐに完結するつもりが、何時の間にやら総話数で30……僅かながらも ここまでお付き合いくださっている読者様には、感謝ばかりですm(_ _)m






 この学校では、アルバイト……のようなことができるらしい。実際にお金を貰う訳ではなく、校内の様々な部署で お手伝いをしたら配食・購買棟の購買部のみで使える商品券を貰える感じである。




 なぜ私が いきなりこんな話を始めたかと言うと、庶民の定めゆえに懐事情が切ない状況に向かいつつあるためだ。




 全寮制で、無料で食べられる大食堂も、最低限の備品や衣類の支給もあるから、衣食住には問題無いけれど、たまにはちょっとした買い物もしたいではないか。両親からの仕送りをやりくりして 里帰りのための資金は残してあるけれど、夏休みの序盤~里帰りまでの間に何もできないのはつらい。なので、購買部で買える必要な物は商品券で賄えるよう、少し前から時々こんなことをしている。



「ちょっと これ洗ってきてちょうだい」



「ん」



 籠に乗せられているのは、ガーゼやら包帯やら簡素な衣類。……要するに、私は今 医務棟の保健室へとお手伝い(アルバイト)へ来ているのである。他にも、研究室の雑用とか大食堂の下拵えの手伝いとかの候補もあったけれど、ルイン先生の勧めもあり 将来(診療所)を見据えての修行としても良いかと ここにした。



「石鹸でしっかりとね~!」



「ん!」



(お任せあれ!!)



 多くの人が集まる場所には、それだけ病や怪我が発生する……研究施設の多い場所柄、研究に没頭し過ぎて倒れる人も発生するわけで、それなりに忙しい。しかも、この保健室は 比較的軽症の人たちを看る所だから 余計にである。治療のできる先生方の魔力と体力の温存のためにも、ちょっとした洗濯などを手伝う者が居るだけで かなり違うそうだ。




 水の魔法式と魔石を組み込まれた魔法機械のある外の水場へと向かい、この世界にもなぜか伝わっていた 古き時代の洗濯板(裏に浄化の魔法図入りでカビ知らず♪)でよ~く洗って、再び保健室へ戻る。



《鳴らすは水底の鐘


 ゆわん ゆわん と 揺らぎ響きて

 流れを清め調えよ


 清らかなる癒しをここに 治療の雫(トゥリートメント)



(ふぉう。ちょうどいいタイミング)



 戻ってみれば、今日の当番である保健師のクリスティン先生が 水の7級にある、体の中の毒素を排出させたり 体液の循環を調える回復魔法を行使するところだった。そう、私が目標とする回復魔法のお手本も見放題なのである。んふふ。



「さあ、これで楽になったはずよ。あら、アーシャちゃん 戻ってたのね。なら、そこの棚の風邪薬と栄養剤を取ってくれる?……そう、その魔法丸薬の瓶とソレ! はい、ありがと」



 私から瓶を受け取った先生は、研究中に風邪で倒れたらしい無精髭の男性研究員の口へと瞬く間に2種類の丸薬を押し込み、すぐにでも研究へ戻ろうとする彼を強制的(魔法的)にベッドへ沈めた。流石である。最初に見た時には唖然としたけれど、彼女が言うには「無茶をしたがる研究馬鹿たちを一々相手にしていられない」とのことだ。とても納得した。このクリスティン先生、ぱっと見は凹凸のハッキリした妖艶系美人の保健師であるが、性格はなかなかに男前なようである。



「せんせ~、薬塗ってくださーい」



「アーシャちゃん、出番よ!」



「ん!」



 軽い怪我で薬を塗ってもらいにやってくる、先生目当ての高等科の男の子たちは、先生が忙しそうなので 残念ながら私が対応させてもらう。



「あ~今日はちっこい方か~……ぐぁ! 痛てっ、もう少し優しく…ぬぉあ!……痛ってぇ……」



 ちっこくて悪かったな。治療する人間を選り好みできる余裕のあるらしい彼は、大したこと無さそうなので ささっと消毒して普通の軟膏を塗ってしまう。



「あーあ、ちっこいとか言うから……。俺には優しく塗ってね、可愛いお嬢さん」



 こちらの礼儀正しき紳士予備軍には、ほんの少し丁寧に塗ってあげよう。ちょろいとか言うなし。程度の差はあれど、女心とは概ねそんなもんだ。異論は認める。


 そんな男の子たちがお礼を言いながら帰ってゆくのを見送って、手に持つ小壺の軟膏がほぼ無くなっていたので洗い物の籠に入れ、代わりに洗浄済みの小壺へ 30cmほどの甕に作り置きされている軟膏を移していると……。



「アーシャちゃんがいると楽ねー。ふふっ、今日も “そろそろ”かしら?」



「……」



 手の空いたらしいクリスティン先生が話しかけて来た。“彼”はそう毎回のように来るものだろうか? だとしたら、よほどの暇人……



「こんにちは」



 ……だったようだ。ウォルセンよ、君はお家に帰省しなくても良いのかい?



「あら、こんにちは 殿下。今日もご機嫌 麗しゅうございますね。……ですが、過保護も大概にしませんと」



「うーん、過保護…なのかな? ……あ、今日は差し入れもあるんだ。クリスティン保健師も一緒にどう?」



 何やら2人で こそこそと言っていたけれど、ウォルセンが先生もおやつに誘ったようで、金と透明度の高い魔力晶で装飾 兼 魔法処理が施された幅広な銀色の腕輪から 冷たいままに時を止められていた“レアチーズケーキのようなもの”をお皿ごと取り出した。……いや、こちら(異世界)のは風味が違うんだよ。



「あらあら、なんて素敵なお誘いかしら! それはもう、喜んで。アーシャちゃん、棚に私が秘蔵してる とびっきりの茶葉があるから、それを淹れてくれる?」



「ん」



 保健室の端、簡易な給湯所の上に備え付けてある扉付きの棚。踏み台を使って、そこに置かれているクリスティン先生用の籠から 少し豪華な瓶に入った茶葉を取り出し、教わった手順で淹れる。お紅茶の淹れ方を知らないのかって? (前世) 飲んでいたお紅茶は黄色いラベルや500なボトルとか お手軽なものばかりだったので、本格的なのはちょっと……。


 幸い そんな私の淹れたお茶に文句が上がることもなく、美味しいケーキに舌鼓を打っていると、なにやら 2人がニマニマしていた。



「ん?」



「……この無自覚な感じ。たまらないわね」



「わかってくれるかな、迂闊に一人で放って置けない理由……」



 そして、某かの意思の疏通を果たして頷き合っていた。



(ちょっとお二方、仲間はずれとか 切ないんですけど。食べないなら、私 おかわりしちゃいますけど?)




 そして、黙々と食べる私を見て また2人がニマニマして……そんな風に、夏休み序盤の昼下がりは過ぎてゆくのであった。









 なにげなく 命拾いをしたと思われる高等科の2人組……。ありがとねって感じに頭をぽんぽんしている姿を“彼”に目撃されなくて良かったね。



 そして、妖艶系美人な先生を出したハズなのに、お色気様が不在な件について。あれ? おかしいな。




[なんとなく存在している設定]


《アルバイト》


 素質を重視し、広く門戸を開く学校……という謳い文句であるので、主人公以上に裕福でない家庭から入学する生徒もいます。そんな子たちへの救済措置として、庶民に偏見の無い一部の部署で受け入れをしています。報酬が商品券なのは、無用な金銭トラブルを防ぐため。お手伝いの内容によって〔1時間あたり○枚〕とか そんな感じ。



《妖艶系保健師》クリスティン 髪・目の色未定


 できたてホヤホヤの 新キャラ(思いつき)。最初は、本当にお色気路線にしようと思ったけれど、作者の力不足により こんな感じに。庶民出身だけど、回復魔法が得意で本校へ就職。少しだけ エリート研究者・教職員という素敵な嫁ぎ先に期待をしたけれど、ここは変人や変態(研究馬鹿)の巣窟だった。

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こぼれ話や番外なお話→ 欠片の一粒~小話をします~
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