ステップ6
俺は学園にある食堂で飯を食っている。
未来学園に来て一番良かったと思う瞬間が食事だ。 何といってもメニューが豊富で、世界中のメニューがここにあるといっても言いぐらいで、要望によってはメニューにない料理も作ってくれるので実質好きな時に好きな物が食べられる。 しかも、学園に属している者は無料でりようできるんだぜ。 凄いだろ。
「お前、飯の時だけは幸せそうな顔するよな」
と、いい忘れていたが今は相席で俺以外にも一緒なやつがいる。
「そう? 別にそんなつもりはないんだけどなぁ・・。 でもまぁ、ここの食事はうまいのは確かだね」
「そりゃそうだ」
俺と話しているこの人は須黒京介といって、俺よりも確か20くらいは歳が上で、すでに学園を卒業し一般冒険者として活動している人だ。 まぁ、見た目のほうはイクリプスの効果で10代だった頃のままだから、知らない人が見れば同級生にしか見えないだろうね。
こんなおっさんだけど、いつも一人で過ごす俺のことを気にかけてか、食堂で会うとこうして一緒に飯を食うぐらいの仲ではある。
おっさんは、いい奴なんだろうけど残念ながら俺にとっては以上でも以下でもない。
「お前また失礼なこと考えてるだろ?」
「ん? あぁ、おっさんが見かけによらずいい奴だけど何でモテないのかなって」
「うっせぇ 言ってろ馬鹿が! お前がそんなこと思ってるわけねぇだろうが。 ぼっち愛好家のお前がよう」
「お、良く分かってるじゃん。 さすがハゲ親父」
「ハゲじゃねぇよ! 坊主だ坊主」
ちなみにおっさんの容姿は、坊主頭の甲子園球児で背が割りと高が、良くも悪くも男臭いといった感じだ。 当たり障りにのないように言うと中の下だな。
「そんな事よりよう、知ってるか階層跨ぎが起きたらしいぞ」
「知ってるも何も、その情報を持ち帰って苺さんに報告したのは俺だよ。 ついでに言うと、今度の階層跨ぎの首魁は苺さん曰くギガンテスらしいぞ。 ちなみに俺は昨日、7階層でサイクロプスと遭遇して死に掛けた」
「サイクロプスか・・・そいつは確かに受注八苦ギガンテスが今回の階層跨ぎの首魁だろうな・・。 Aクラスの魔物となると、大規模レイドでの討伐になるから近々緊急依頼がでるなこりゃ」
「だろうな。 苺さんのことだから、もう購買部には緊急依頼が出てるんじゃないか・・」
「蓮、お前も参加するだろ? ソロだからって、レイドは数押しだソロもパーティーも関係ねぇだろ」
「無理。 昨日サイクロプスと遣り合ったせいで、武器も防具も全損中なんだよ。 装備が直るまで迷宮活動は休みだよ」
「なんだよつまんねぇな・・」
「おっさんは・・・・聞くまでもなく参加するだよな話の流れてきにも」
「おうよ! 階層跨ぎの緊急依頼は、俺たち一般の冒険者には割りがいいから稼ぎどきだぜ。 何せ、俺たちは学院の援助がすでに受けられねぇからな・・・ここの飯代稼ぐのも大変なんだよ」
ここでは、大学部までの22歳までは学園の保護制度が働くのでいろいろと得がきくのだが、おっさんのように学園を卒業して一般の冒険者になると自分で生活費を稼ぐ必要が出てくるのだ。 冒険者という仕事は、普通の仕事に比べれば遥かに割りのいい仕事ではあるがその分いろいろと物入りなのも事実で、一般の冒険者はお金に苦労している者が多いのだ。
見かけは高校生、中身はおっさん、それがおっさんだ。
「おっさん何だから当たり前だろ? 冗談は顔だけにしてちゃんと働けよ」
「うっせ! 一言余計なんだよお前は。 お前も数年すれば、俺と同じように一般人になれば俺の苦労が分かるようになるさ」
「そうならないように俺は金を溜めて、普段はおっさんにたかるようにしてるんだよ。 おっさん、報酬が入ったらいつものとこで宴会なおっさん持ちで」
「鬼かお前は! 知ってるかそう言うのを親父狩りっていうんだぞ・・・犯罪なんだぞ」
「安心しろよおっさん、俺はおっさんを殺しはしない・・・利用するだけだ」
「余計たちが悪いわ!」
おっさんに集るのはそんなに悪いことなのか?
残念ながら俺には悪いように思えないな。
「・・・おっと、んじゃ俺行くわ」
「ん、しばらく休むんじゃなかったのか」
「休むさ。 打ち合わせがてら、万里さんとこで装備の相談するんだよ。 この時間じゃないとあの人外に出てきてないからな」
「あいつも相変わらずの研究バカだな・・。 ま、あいつにもよろしく言っといてくれや」
「あぁ、おっさんが今度奢ってくれるってしっかりと伝えとくよ」
「それは言わなくていいだよ!」
「苺さんにも声かけとかないと・・」
俺は後ろで手を振って食堂をあとにする。
後ろのほうで、おっさんの断末魔のような声が・・・。
知らんがな。




