ステップ7
研究塔というのはいつも独特の匂いがしている。
薬品の混ざり合った匂い、金属が溶け合う匂い、風呂にも入らず汗臭い体臭ただよう室内、取り分け最後のやつは強烈で意識せずに嗅ぐと軽く意識が飛ぶ。 風呂くらい入れよ汚い。
そんな匂いの巣窟たる研究塔の中でも、俺が今から行くところの主は・・・
「万里さん、蓮ですけどいますか」
「おぉ~ 蓮蓮! お久~元気して「近寄らないで臭いです」・・えぇ~酷いやん。 まだ、9ヶ月やし臭くないやろ」
「いえ、覚悟してないと死ねるレベルで臭いですよ」
「そう言うわりには、相変わらず顔にはでぇ~へんな。 流石はぶっ壊れぼっちやな」
「自覚はありますが、腐敗したゾンビ人間が言えることでもないと思いますよ」
・・・飛び級のヘンタイである。
ぼさぼさの金髪を掻きながら、眠たげに白衣のポケットに手を突っ込みソファーに腰掛ける女性。
部屋の主たる|小山内 万里≪おさない ばんり≫さんだ。
起きている時間の大半を研究と開発に費やしていて、風呂は良くて数ヶ月に一度、飯は2日に1回、睡眠は1週間で10分もないくらい・・・な、ヘンタイだろ?
でも、こんなんでも一流の研究者兼開発者でこと装備に関しては現在学園にいる開発者の中ではトップクラスであるが、如何せんヘンタイで扱いづらいため滅多に依頼はこず、こうして研究室に篭ってることが殆どだ。 だが、俺はそんなヘンタイさんと装備の専属契約を結んでいるので、昨日壊れた装備の新調を依頼しにやって来ているのだ。 出来るなら来たくないけどな・・。
「さっさと風呂に入ってきてください。 その間に俺が片付けておきますから・・・こうも汚いとまともな話ができませんからね」
「ホンマに君は容赦ないなぁ~ ま、そこがかわいくてうち好みなんやけどな」
「俺にヘンタイを愛す趣味はありませんよ」
「あ~ん い・け・ず♡」
「さっさと行けヘンタイ」
俺は散乱した衣服の中から適当に手にとって、ヘンタイに投げ渡すしヘンタイを風呂場に向かわせる。 前回掃除したのは2ヶ月前だったはずなんだが・・・どうすればこんなにゴミがでるのやら・・。
俺は俺で、窓開け腐敗した空気の入れ替えを行い、ゴミをゴミ袋の中へ次々と放り込んでく。 仕分け? そんなもの必要ないさなぜなら、この部屋にある物はすべてがゴミだからだよ確認するだけ無駄というものだ。 てか、そこまでしてやる義理もないから適当でいいだよ。
そんな感じで、俺はひたすらゴミを処理していると、
「おぉ~ また随分と綺麗になったね~」
録に髪も拭かず雫を垂らしながらヘンタイが戻ってきた。
「少しは女らしくしろ」
俺はバスタオル投げて渡す。
それを受け取ったヘンタイこと万里さんは、
「イヤン♡ ダーリンのいけず」
「いいからさっさと髪を拭いて座ってください。 仕事の話です」
「アハ、その感情殺した顔で言われるとたまらんわ~」
とか言いながら万里さんは向かいのソファーに腰を下ろす。
「んで、今日はどないたんや?」
「装備の新調ですよ。 昨日いろいろあって壊れたもんで」
「んあ? あのガンソードもう壊れたん。 あれ最近のうちの中ではかなりの出来のもんやったはずなんやけどなぁ」
「えぇ、あれ自体は凄く良いものだったんですけど、慣らしで碌な備えもせずにサイクロプスとの戦闘になりまして、命の危機を感じたのでやむを得ずバーストシステムで切り抜けたのでご覧のとおりです」
と、元はガンソードのグリップだった部分を机の上に置く。
万里さんはそれを手にとって、弾け飛んでなくなった部分を眺め、
「こりゃまた豪快にやりおったな・・・綺麗に弾け飛んでるわ」
感想をもらす。
「で、新しくするんはいいけどしばらく時間かかるけどいいん? それと、修理とちゃうからこっちの方が結構かかんで」
「問題ないですよ。 階層跨ぎのせいでしばらくはソロで迷宮に潜れませんから。 それと、お金の方は苺さんが今回は何とかしてくれるそうなんで請求はそっちに回して貰って最高の素材で作ってください」
「アハハ 蓮蓮鬼畜やなぁ、人が金払うからって容赦なさすぎやで」
「そうですか? わりと本気で今回は死に掛けたんで当然の対価かと・・。 それと、備えがなかったとしても中層域の魔物と戦闘するたびに装備が壊れてたんじゃ問題ですからね。 いっその事、フルオーダーで俺専用のを作ろうかと思って相談に来たんですよ」
「いやいや、バーストシステム使わんかったら問題ないと思うで」
「バーストがないと流石に中層以降はきついんですよ。 だから、バーストに耐えられる武器は必須ですよ」
興味があることにはちゃんと会話できるんだけど、
「まぁ、蓮蓮がそうしたいちゅうならそうするで。 ちょうど、面白い素材が入ったんや実験がてら作るわ」
「面白い素材ですか? それは気になりますが、ちゃんと仕事してくださいよ」
「そこは仕事やうちもちゃんとするに決まってるやんか。 何せ、蓮蓮は唯一の固定客やからな・・・蓮蓮がおらんくなるとうちも生活が出来んようになるさかい・・・」
「ヘンタイじゃなければ、万里さんは腕のいい職人さんなんですけどね」
「キャハ 無表情の罵りいただきました!」
「・・・」
・・・・・ハァ~ それ以外はだめだね。 これがなければこの人は凄い人なんだけどな本当に。
「で、実際どれくら掛かりそうです?」
「せやなぁ~ いろいろと実験して、裏技やオプションなんかも組み込むとなると・・・・・1週間ってとこかな」
「早いですね。 また寝ずにやるつもりですか」
「せやで」
「早くできるのはうれしいですが、そのうち死にますよそんな生活してると」
「アハ うちのこと心配してくれるん? うれいしわ~ そや、うちのこと心配してくれるんやったらうちと結婚しようや蓮蓮。 そうすれば、うちのことは蓮蓮にまかせてゆっくり研究できるしな」
「絶対に嫌です。 どうして俺がヘンタイの面倒を見なければいけないんですか・・・撤回します死んでください早急に」
「いやん♡ 蓮蓮のいけず~」
はぁ~ 万里さんとの会話は、感情がない俺でもわりと本気で疲れてめんどくさいよ・・マジで。
やることやったし撤退しますかね。
「はぁ~ 疲れたので帰ります。 装備の方は1週間後に取りに来ますんで用意しておいてくださいね。(ホントは取りに来たくないけどな)」
「えぇ~ もう帰っちゃうの~・・・・・ってもういなくなってるし。 あ~ん♡ 蓮蓮のいけず~」
俺は早々にヘンタイの巣から脱出するのだった。
マジで昇天しねぇかなあのヘンタイ・・・・・・・・・。




