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ステップ11

「ふむ、事情は了解した私の方で手回しをしておこう。 ただし、君達だけで攻略不可能と判断した場合すぐに地上へと戻ること、宝部屋の報酬の3割を私のよこすことが条件だ」


「了解。 俺も死ぬつもりはないんで無理はしませんよ・・ただ、3割はボリすぎじゃないですか」


「それだけ重要な情報を隠してやるんだそれぐらい当然だろ。 それに、私も入用で金がいるのだよ」


 俺は万里さんのところを出たその足で、苺さんの下を訪れ、宝部屋発見の報告と、それに伴っての3日後までの情報隠蔽を頼みに来ていた。


「時に蓮よ、お前なんだか悩んでるような顔をしとるがなんかあったのか」


「そうですか? これと言って変わったことは・・・しいて言うなら、万里さんのヘンタイ性にあてられて疲れているくらいですかね」


 あの妙な感覚がまだ処理しきれず顔に出ていたようだ。

 俺としてはどうでもいいのだが、どうにも俺の中の本能的な部分が反応してしまったようだ。

 そんな物、あの時にすべて捨てて俺は俺自身を壊したはずなのに・・・。

 捨てた心・捨てた感情。

 捨てた物は二度度手に入らないそう思っていたのに、

 俺にもう一度そんなものが芽生えるようなら、

 知らず知らずのうちに拾ってしまっているのなら、

 もう一度捨てればいい。

 何度でも捨てればいい、そうして常に零すればいいんだ。

 俺は捨てることにはなれているから。

 何もないことになれているから。

 ないことが当たり前、あると不安になる恐怖になる。

 昔の暖かい自分に戻ることが怖い。

 もうあんな悲しくて、怖くて、悔しくて、イライラするのは嫌だ。

 笑われるのも

 騙されるのも

 利用されるのも

 信用するの

 嫌だ!

 だから、なくさなければダメ・・。

 そうしないと俺は俺でいられなくなってしまう・・・。

 壊さないと俺が俺でいられなくなるから・・。


 俺は一度瞳を閉じる。

 それだけで、俺の中にある何かが俺のことをリセットしてくれるのだ。


「ま、装備も新しくしましたし今回の依頼が終われば当分は会いに行くつもりはありませんけどね」


 瞳を開けた俺はすでに中身をリセットされた俺だ。

 この作業を俺はもう何度も繰り返しているので造作も無い。


「そ、そうか・・。 まぁ、あいつは一人でも死にはせんから問題はないだよう」


(何だ、今の一瞬で蓮の顔つきも空気も変わりおったぞ・・・まるで・・)


 私の前にいる少年はいつもと変わらない無表情だ。 目に掛かる前髪から覗く彼の目は、正面にいる私を見ているがその内に映る私は本当に私なのだろうかと思う。 彼の見ている世界には彼だけが、彼という色一色しか存在していないのだろう。

 そう、彼の纏う空気はまるですべてを捨てた死人のそれと同じであるから・・。


「では俺はこれで」


「あ、あぁ・・・」


 蓮は用事は済んだとばかりに、立ち上がるとそそくさと部屋から出て行ってしまった。

 残された私はかける言葉もなくそれを見送ることしかできなかった。


(何だ、なんなのだあの蓮の変わりようは・・・)


 ここに入ってきたときは、何かに悩むような、それでいて、昔の・・壊れる前のような感じの雰囲気をすこしではあるがさせていた。

 私はいい傾向だと思ったし、万里のところで何かあったのだろうというのも察しがついた。 最近では、須黒のおっさんと行動をよく共にするようにもなっている。 それは、あの事件後の蓮の態度の変化を考えればいい傾向であるといえる。 あの時は、死んだような顔をしていて、無表情で誰彼構わず悪態をつき誰も寄せ付けるようとはしなかった。 それまでの彼を知っているものからすれば、到底彼の変わりようが理解できなかったし、事件のせいで彼は病んでいるんだと思っていた。 

 だがそれは違った。

 彼は変わったのでない、捨ててしまったのだそれまで彼を構成していた、友を・仲間を・恋人を・考える心を・思いやる心を・悩む心を・喜怒哀楽の感情を・すべてすべて捨てて彼は自分を壊してしまったのだ。 そんな彼から、一人、また一人と彼を信じていた人は離れていき、知ってのとおり彼はいない者として扱われるようになっていた。 

 彼はそれを望んでいたし、それは彼が望み・求めた自分であった。

 

 私はそんな彼を見ているのが辛かった。

 彼はこの学園に来たときから常に輝いていて、みんなの中心であった。

 正義感が強く、誰にでもやさしく、強い力を持ち、女の子にモテル、彼は物語に出てくる主人公であった。

 あの時のとまではいかないが、私は彼が壊れたのなら新しい自分を見つけ、新しい自分を作っていってほしいそう願い彼を見守ってきた。

 少しづつではあるが彼が変っているそんな気がしていた・・。


 それを先ほど彼はまるでなかったかのように、リセットボタンでも押したかのように、また自分を壊してしまった。


「そんなに間単に・・・あっさりとお前は捨てるのか・・。 私は・・・私は・・・・」


 私はお前に与えてやれないのか・・・

 私はお前を変えてやれないのか・・・


 教えてくれ・・・・教えてくれ・・・・・


「・・・・なぁ蓮、私はお前の中にいるのだろうか・・・」


 教えてくれ。


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