ステップ10
「というわけなんですよ」
「ふ~ん 中々面白いことになってんねぇ」
迷宮から戻って直ぐに、俺は万里さんのもとを訪れていた。
装備の報告と、宝部屋攻略に伴う必要物資の調達を兼ねてだ。
万里さんならすぐに用意できるだろうし、何より宝部屋の情報が外に漏れることがないと判断したためだ。
「装備の方は特にこれと言った問題点はありませんでした。 弾薬の残数は常に注意する必要はあると思いますが、性能としては申し分ないかと・・・出来ればバーストも試したかったんですがそれは今度試すしかないですね」
「まぁ、うちが造ったんやから当然やな。 で、うちに用意してほしいもんはなんや?」
「回復弾のようなものがあればお願いします。 俺もおっさんも魔法系統のスキルは使えませんから。 かと言って、臨時で誰か雇うわけにもいきませんから回復手段は必須です」
「う~ん 出来んことはないけど、それを作るんには時間が足りひんかなぁ・・・無くなった体力を回復するぐらいのやつしか時間的に出来ないよ。 回復魔法みたいなのと違って、傷がすぐに塞がったりするのは流石にねぇ・・・・・作れるんは、プロテインと痛み止めを混ぜたような効果を持つやつぐらいだけどそれでいい?」
「ないよりはマシだと思いますのでそれで。 後は、もしものために緊急帰還用のポータルを別口で作ってもらえますか」
「それはええど、別口ってことはリンクを切ってってことやろ?」
俺たち冒険者がつけてるこの腕時計型の端末機には、迷宮内で命の危機が迫った時に地上へと帰還できるよう生体リンク機能が組み込まれていて、装備者が特定の条件下になると地上へと強制帰還する術式が組み込まれているのだ。
「ボス部屋では稀に俺たちの装備効果を無効にする特殊な場合があるんですよ。 だから、万が一の事を考えてこれとは別口で、脱出ようの装備を揃えときたいんですよ」
「ふ~ん 蓮蓮は心配性やね~。 ま、うちに任せときしっかりと準備したるからな。 ただ、日数的な問題もあるから使い捨てで同時に5人くらいしか帰還させれへんけどいいか?」
「問題ないです。 あくまで保険みたいなものなので、ボスを倒してしまえば使うこともありませんから」
「そうかいそうかい。 で、うちはこれからマッハで仕事にかかるけど、蓮蓮はその間どないするんや? 暇ならうちのこと手伝ってくれてもいいやで」
「万里さんの手伝いなんていやですよ。 それに、俺には俺で根回しをしとく必要があるので」
「何や、また苺ちゃんのところか?」
「これも万が一に、俺が死んだ時のことを考えて苺さんだけには情報を教えておくんですよ・・・・何ですかその気持ち悪いくらいにやにやした顔は」
「いや~ね~ 何だかんだ言っても、蓮蓮はちゃんと周りのこと考えてるなぁと思ってさ。 だって、うちに頼んだ物かておっさんのこと心配してやろうし、苺ちゃんにだけ話しとくのも苺ちゃんが蓮蓮のなかじゃ特別だからやろ?」
「はぁ、等々頭までおかしくなったんですか? 俺が自分以外の奴のことなんて考えるわけないでしょう。 万里さんに頼んだ物は俺が必要なだけですし、おっさんにはいざと成れば見捨てるって言って在ります。 苺さんにしたって、あれで学園のトップですからね利用しないともったいないですから使えるものは使えるときに使いますよ俺は」
「えらい喋るやんか。 それに、感情が見え隠れしてんで」
ニヤニヤと笑う万里さん。
「・・・喧嘩売ってるんですか」
何かイライラする。
「そうやないって」
「だったら意味不明なこと言わないで下さい。 イライラしますから」
あれ? 俺はどうしてこんなことで怒っているんだ?
そもそも、俺には怒りなんて感情はないはずだ。
万里さんの言葉なんてどうも思わないはずだ。
「・・・・・」
「アハ 悪い悪いちょっと悪ふざけが過ぎたわ。 いつも罵られてばかりやから、ちょっといじってやろうと思ったら蓮蓮が思いのほか反応するもんやからついな。 堪忍な」
「・・・まったくです。 俺をいじる暇があるなら、部屋を片付けてさっさと仕事でもしてください」
「う~ん♡ やっぱ蓮蓮の無表情で罵り最高やわ」
ヘンタイが・・。
「はぁ、それでは頼んだ物お願いしますよ。 報酬は宝部屋攻略後ということで」
「あいよ~」
俺は立ち上がり万里さんの部屋を後にする。
(俺は感情を捨てたはずだ自分以外に興味はない。 なら何故俺は万里さんの言葉に動揺したんだ・・・)
蓮が出て行った扉をみながら万里はまたニヤニヤとしていた。
「蓮君、君は壊れてなんかいないよ君は君だよ・・・・・・・さて、仕事しますかね」




