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 夕方。


 会場には入れないけど、外側から曲を聞くことができた。

 二時間だけの限定ステージ。

 最後の曲が悲しく終わる。

 メンバーが、この曲は四十九日に当たる日に発売する、このグループの――このメンバーでの最後の曲と言った。


「――あれ?」


 このメンバーで最後と言うことは、グループ自体は活動を継続すると言うことだろうか。

 ボーカルは、どうなる?

 そう疑問に思うと、ステージに一人増え、ライトが彼を照らすと、合図のように語りだした。

 ボーカルの彼への想い。グループのこと。自分のこと。


「この人たち、これからどうなって行くんだろう?」


「……分からない。ただ、残されたメンバーは、このグループに思い入れがあるのは分かる」


 確かに、新メンバーを入れてまで継続させるのは、思い入れがあるからだろう。

 そうでなければ、何があるのか。

 受け入れられるかと聞くと、気持ち次第だと返された。

 ファンも、そして、さっきからここで彷徨っているボーカルの人も。


『――――――』


 ステージを見つめる顔。言葉を発しているようだが、やっぱり聞こえない。

 彼には聞こえているらしく、表情は冴えない。


「ねぇ、何て言っているの?」


 小声で尋ねると、彼は答えず、ただ黙ってわたしの肩に手を置いた。


『これってさ、俺を忘れようとしているのか?』


 聞こえないはずの声が聞こえ、思わず彼を見上げる。彼はボーカルに視線をやったまま、


『誰か、俺の問いに答えろよ!』


 望むがまま、応えた。


「彼らは彼らなりの方法で、このグループを残そうとしていると思う。

 グループを存続させることで、キミが居た証を残そうとしているのだ。風化させないために」


『…………そうだとしても、湧き上がるこの怒りは何だ?』


 瞬間、全身が震え上がった。

 公園にでも、彼にでもなく。自分自身を抑えている、ボーカルの人に。

 これは、怨念、だ。


『俺さ……この追悼ライブを聞いたら逝くつもりだった。けどさ、心残りが出来た』


「まさか、キミは!」


 彼が叫ぶ。

 だけどその声は、大音量にかき消された。

 それは新メンバー加入の、再スタートとなる曲の音。

 奥底から、呼び覚ますような旋律。




『……この怒りを抑えない限り、安らかになんて無理だ』




 黒い……黒い何かが、一瞬だけ見えた気がする。

 ボーカルの人は、怒りを露にしたまま消えてしまった。

 とても成仏したとは思えない。


「ねぇ……あの人、何だか成仏したようには見えなかったけど、大丈夫かな?」


「…………救えなかったことは間違いない」


 沈んだ口調で話す彼だけど、それは仕方ないと思う。

 だって、全部の霊を救えるほど、彼はカミサマでもないし。救えない人が居たとしても、彼を責めたりはしない。理由にもならない。

 人間、できないことはあるのだから。

 と言っても、わたしには励ますことができないから、


「――少し散歩しながら、コンビニ寄って帰ろうよ」


 気分転換の誘いしか言えない。

 返事を待たず、先に歩き出す。

 背後から聞こえたのは、彼らグループを有名にしたという、最大ヒット曲。それを、新メンバーで歌うとのこと。

 浮かばれるとは思えない。

 だけど、〝わたし〟は忘れないと思う。今日と言う、出来事を。




「ボクが消えても、キミの心で永遠に生き続けるから――明日に向かって、歩けるといいよね」



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