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 土曜日。


 いつもは静かな朝だけど、今日は違っている。

 どこからか高い声で話す声が、笑いが聞こえた。

 今日は有名な音楽グループのボーカル、彼の追悼ライブが開催される日だった。

 幽霊に会える町でライブをすれば、最後にもう一度だけ会えるんじゃないか――というメンバーの希望で、三十五日の節目に実現した。

 とりあえず、わたしは安眠妨害をされてしまったため、仕方なしに起きることにする。

 眠い。


「おはよう。今日は何の祭りだ?」


「うひゃっ!」


 あくびをしながらキッチンへ行って、相変わらず驚いてしまう。


「あー、もう。完璧に目が覚めちゃったよ。

 今日はね、音楽グループのボーカルの追悼ライブなんだって。グループ名忘れちゃったケド」


 友だちから聞いた内容を伝えると、彼は興味があるのかないのか、ふーんとだけ呟いた。


「追悼ライブか。そういう方法も、あるのだな」


「方法?」


「残された人たちが、どうやって悲しみを乗り越えて行くのか――

 音楽で葬送され、音楽が残される。音楽は半永久的に残るからな。存在した証が残り続けるのは幸せかもしれない」


 ちゃんと成仏すれば、と。

 余計な一言を添える。いい話だと思った感動は半減以下。


「――ところで、入場は自由なのか?」


「ライブ自体はファンクラブ優先らしいけど、それ以外……えーっと、展示会とかは自由って聞いたけど」


「なら、少し見に行くか?」


「………………まあ、いいけど」


 何だか腑に落ちないけど、誘いを断る理由はない。

 準備をして、出かける。

 会場の公園は、既にステージが出来上がっていた。

 設けられた献花台には、定番のユリ。一部分では他の花も混じっている。ボーカルが好きな花か、あるいは知らないだけなのか。

 一人、また一人と花を添えては、涙する。今も想われているんだな、なんて。


「初めて会った時も、この間も、ここで具合が悪そうにしていたが、大丈夫か?」


「まあ……割と、大丈夫。よく分からないけど」


「そうか」


 今日は、不思議と穏やかだ。

 ここで感じた痛みも怖さも、このステージの主役にかき消されているのかもしれない。そう思えば、疑問も少しは軽くなった。


「そういえば、公園前を浮遊していた霊をみたのだが、顔が祭壇に飾られた人と同じだった。

 方向的にステージへ向かったようだが、やはり未練なのだろうな」


「…………多分、そうじゃない? だったらその人、今日で救われるのかな?」


「答えは、誰も出せない」


「そう、だよね」


 彼は教えてくれた。

 成仏を願わない人が居れば、ボーカルの彼は縛られる。

 ファンの人が、彼がもう居ないことを理解すれば、成仏に繋がると。

 この追悼ライブが、その現実を受け入れるきっかけになれば、あるいは。


「ねぇ……ここにはもう居ないんだよって、いつか、受け入れてくれるかな?」


 人は、簡単に受け入れられるのだろうか?

 もっとも受け入れ難い、存在しないという現実を。


「……きっと、想いが深い人ほど辛く――時間が足りない現実は、酷だ」



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