第27話 張り巡らされる絶対防衛線
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「……それと、この設計図を見ていてもう一つ分かったことがあります」
僕は羊皮紙の端に描かれた、街の外周をぐるりと囲む巨大な構造物の図面を指差した。
「今、中心街の入り口に残っているあの古びた『城門』と、苔むした『城壁』……あれ、ただの飾りや古い遺跡じゃありません。この地下回廊と完全に連動している、現役の防衛システムの一部なんです」
「ほう?」
リカルドさんが興味深そうに身を乗り出す。
「この城門と城壁は、大昔の勇者が強固な魔導花崗岩を加工して作ったもので、物理的な突撃はおろか、並の攻撃魔法じゃ傷一つつけられない強度を持っています。さらに、その周囲を深く掘り下げているこの『堀』。今はただの水溜まりみたいになっていますが……」
僕は設計図の川のラインをなぞり、あの手作りの船を沈めた、あの大きめの川へと指先を滑らせた。
「この乾いた堀は、地下の隠し水路を通じて、あの大きな川へと直接繋がっています。つまり、城門の裏にある制御レバーを動かせば、川の豊かな水を一気に引き込んで、街の周囲を文字通り『難攻不落の水堀』に変えることができるんです」
「ククク……水流の結界か。我が暗黒の軍勢を拒むには、これ以上ない冷徹な盾だな」
ダークネスがマントの隙間から満足げに頷く。
「それだけではありません」
ダーカーが淡々と補足した。
「川と繋がっているということは、水運の計画もここへ直結できるということです。敵に街を完全に包囲されたとしても、堀、地下水路、そして川へと抜ければ、外部のミルン村や海辺の村からの物資を完全に遮断される心配はありません。籠城戦において、これ以上の利点はないでしょう」
「なるほど……!」
トビーが感嘆の声を漏らす。
ただのさびれた古い町だと思っていたエスト。けれど、立派な城門、そびえ立つ城壁、そして川へと通じる深い堀。これら全てが、有事の際には一つの巨大な防衛システムとして機能するように、最初から完璧に計算されて配置されていたのだ。
「水運の失敗が、まさかこんな形で防衛線の生命線に化けるとはね」
リカルドさんは嬉しそうに頭を掻きむしり、僕の顔を見てニヤリと笑った。
「川は、ただの物流の道じゃない。僕たちを生かすための『防衛の要』でもあったわけだ。よし、レン君! 門の制御機構の点検と、堀への注水ルートの確保も計画に組み込もう。王都の奴らが攻めてきても、この城壁の向こうへは指一本触れさせないぞ!」
「はい!」
僕たちは、目の前に広がる完璧な要塞のパズルを一つずつ組み立てていく。知られざるエストの全貌が完全に明らかになった今、僕たちの胸には、王国の大軍をも退けられるという確固たる希望が、確かに満ち始めていた。
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