第26話 地下に眠る勇者の「遺産」
最後まで読んでくださると嬉しいです!
「ククク……まさか、この退屈な大地の底に、これほど禍々しくも美しい『迷宮』が封印されていたとはな……」
ダークネスが包帯の巻かれた左目を抑えながら、不敵な笑みを浮かべる。
その視線の先にある机の上には、町長から譲り受けた『伝説の書物(設計図)』が広げられていた。埃を払ったその羊皮紙には、特殊な魔導インクで描かれたエストの「真の姿」が、淡い光を放ちながら浮かび上がっている。
「ダークネス、静かにしてください。レンさんの説明が聞こえません」
ダーカーが淡々と窘めると、僕はゴクリと唾を飲み込み、設計図の核心部分を指差した。
「みんな、これを見て。……僕たちが今いるエストの中心街のちょうど真下に、街全体を網羅するほど巨大な『二層構造の地下回廊』が通ってるんだ」
「ええっ!? 僕、ずっとここに住んでますけど、そんなの見たことも聞いたこともないです!」
トビーが目を丸くして叫ぶ。地元の平社員であるトビーが知らないのも無理はない。設計図によると、その地下への入り口は、町長の屋敷の隠し扉や、街外れの要塞跡にある枯れ井戸など、厳重に偽装された数カ所にしか存在しないからだ。
リカルドさんが腕を組み、鋭い目で設計図を覗き込む。
「なるほどね……。ただの排水路にしちゃあ、広すぎる。これは完全に『軍事用』の通路だ。王都の追っ手や魔物の群れに囲まれても、この地下を通れば、敵に気づかれずに街の端から端まで物資や兵員を移動できる」
「それだけじゃないんです、リカルドさん」
僕はさらにページをめくり、山間部へと続く防衛線のページを開いた。
「この町を取り囲む山々の頂や斜面には、かつて勇者が設置したという『魔導迎撃砲』の土台と、それを動かすためのエネルギー伝達水路がそのまま残されてます。今は魔力が切れて休眠状態みたいだけど、適切な魔力を注ぎ込んで回路を修復すれば……」
「フッ、我が右脳の魔導回路と、この地に眠る古代の術式をリンクさせれば、再起動など造作もないことです」
ダーカーが初めて、中二病のポーズを崩さずに不敵な、けれど本物の自信に満ちた笑みを見せた。金級魔導士のダーカー、彼女なら、この眠れる兵器に再び火を灯すことができる。
「さらに、ミルン村の近くにある渓谷には、レバー一つで土砂崩れを起こして街道を完全に封鎖できる『天然の落とし戸』の仕掛けまであります。……町長さんが言った通りだ。この町は、何もないんじゃない。最初から、あらゆる脅威を退けるために作られた『完璧な不落要塞』だったんだ」
地図の全貌が明らかになるにつれ、事務所の中の空気がガラリと変わった。
これまでは、王都の圧倒的な軍事力を前に「どうやって生き残るか」という守りの姿勢だった。けれど、このエストの真の姿を知った今、僕たちの手元には、王国の大軍すら手出しできない最強の切り札が揃いつつある。
リカルドさんはしばらく黙って設計図を見つめていたが、やがて、かつてないほど不敵で、頼もしい笑みを浮かべた。
「面白い。王都の無能な役人どもは、ここをただの『ゴミ捨て場』だと思っている。まさかその足元に、自分たちを脅かす勇者の遺産が丸ごと眠っているなんて、夢にも思っていないだろうね」
会長が立ち上がり、僕たち全員の顔を見渡す。
「よし、エスト商会の初の大仕事だ。レン君の計画通り、この地下回廊を物資の隠し倉庫として整備し、山々の迎撃陣地を復活させる。王都が戦争を始める前に、このエストを、誰も触れられない『絶対不可侵の聖域』に作り変えるぞ!」
「「「おおおっ!!」」」
トビーが拳を突き上げ、ダークネスが「闇の凱歌を轟かせよ!」とマントを翻す。
お金がなくて船が沈んだどん底から、僕たちはついに、この町を、そして自分たちの未来を守るための「本物の武器」を手に入れた。暗雲立ち込める世界の中で、僕たちの反撃の準備が、エストの地下深くで静かに、そして熱く始まった。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
別の作品や次の話も是非見てみてください!
面白かったらブックマーク・評価で応援いただけると嬉しいです!




