第21話 お金がなくて買えないのなら自分で作ればいい
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「お金がない、困ったねー」
僕とリカルドさん、そしてトビーの3人は、エストの町の端を流れる大きな川のほとりで、揃って頭を抱えていた。
水運のアイデア自体は最高だった。問題は、僕たちのエスト商会が絶賛『大財政難』だということだ。当然、立派な流通用の既製品の船なんて買えるはずもない。
「…ないなら、作るしかないよね!」
というリカルドさんの (無茶な)トップダウンの一言により、僕たちはここ数日間、廃材やあり合わせの木材をかき集めて、見よう見まねで手作りの小さな木舟を突貫工事で制作したのだ。
2日後。
そして今日、ついに進水式。
「よし、いくぞ……せーのっ!」
3人で力を合わせて、完成したばかりの木舟を川へと押し出す。
ゆらりと水面に浮かんだ瞬間、一瞬だけ「おおっ!」と歓声が上がった。……が、歓声はすぐに悲鳴へと変わる。
ピキ、ピキ、という不穏な音と共に、合わせ目の隙間から容赦なく川の水がジャブジャブと噴き出してきたのだ。
「あ、あれ……? レン君、なんか足元が冷たいんだけど」
「リカルドさん! 沈んでます! めちゃくちゃ勢いよく沈み出してますって!」
「わわわ! リカルドさん、レンさん、荷物が濡れちゃいますー!」
大慌てでロープを引っ張り、なんとか完全に水没する前に陸へと引き揚げたものの、手作りの第1号船は見事に浸水してボロボロ。
泥まみれ、水浸しになった僕たちは、川原の草の上に仰向けにひっくり返った。
「……やっぱダメか。防水の魔術を施すか、専門の船大工に頼まないと、素人の木組みじゃ浸水は防げないよ。まだまだこれは、僕たちには早すぎたのかな?」
僕がハァとため息をつきながら言うと、リカルドさんも濡れた髪をかき上げながら、苦笑いして空を見上げた。
「そうかもな。アイデアは完璧だと思ったんだけど……やっぱり基礎の技術とお金が足りないや。焦りすぎたね」
「ですね……。でも、レンさんのアイデアがダメだったわけじゃないですよ! ちゃんと隙間を塞げば、次はきっと浮かびます!そう、うん、きっと、多分……。」
トビーが健気にも僕たちを励ましてくれる。その優しい言葉に、僕の心も少し軽くなった。
「よし! 反省会と改良の計画は後回しだ。まぁ今日はのんびりしよう。少し遅めの昼飯とするか!」
リカルドさんがお腹を鳴らしながら立ち上がった。
僕たちは近くの大きな木陰に移動し、トビーが持ってきてくれたお弁当の包みを開く。中には、ミルン村で分けてもらった乾燥野菜を使ったスープと、ルノア村の塩で握ったおにぎりのような素朴な麦飯が入っていた。
「……美味い」
「うん、生き返るねぇ」
川のせせらぎを聞きながら、3人で囲む遅めの昼食。
船が沈んだのは悔しいし、お金もないけれど、僕たちの心は全然折れていなかった。失敗したら、また知恵を絞って、泥臭くやり直せばいい。
「リカルドさん、次はタールか何かで隙間を固めてみませんか?」
「いいねぇ、副会長。次はトビーにも設計を手伝ってもらおうか!」
お腹が満たされるにつれて、早くも次の挑戦へのアイデアが溢れ出してくる。完璧な町エストを繋ぐ僕たちの水運計画は、エスト商会の仕事は、まだ始まったばかりだ。
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