ミユキちゃんと剛史
そのあと何事もなく午前が過ぎ、いつも通り三人でお昼を食べていると仁がまた何か言いだした。
「なんか漫画とかでよお、相手の思ってること全部言い当てる展開あるだろ」
「うん?」
「頭いいキャラが相手の行動を予測するパターンか」
「ああ」
「あれおかしくねえか?一言一句同じってことはねえだろ!」
仁がおにぎりを頬張りながら口を開く。汚い。
「例えば今日の空の色に限ってもよお!青いなあって思うやつもいれば、水色だって思うやつもいるだろ!」
「一理あるな」
「じゃあ仁、この紙もって」
ノートの切れ端を仁に渡す。
「なんだよ。これをどうすんだよ」
「池上さんを見て」
仁と一緒に剛史も池上の方を見る。
「はいこっち向いて。それじゃ今池上さんを見て思ったことを書いてね」
仁は黙ってペンを動かす。その間鴎はよそを向いていた。
「それじゃ何を書いたか全部当てるね、かわいい」
仁が机をバシンと叩く。
「出来レースだろ!」
「なにがだよ」
「仁が言ってたパターンって、ちゃんと相手を観察した上で勝負を仕掛けることが多いでしょ。そんなときは案外予想できるもんだよ」
「一理あるな」
仁はおにぎりを急いで口に詰める。
「いやいやいや、認めねえぞ!」
そしてなぜか飲み込み終わる前に話始めた。
「全然関係ないけどよお!一夫多妻制とか、その逆とか、ありえねえだろ!」
「政治的発言は慎重にね」
「そんな意図ねえよ。実在する人物、団体、組織等とは一切関係ないから。俺が言いたいのはな、あれで多数側が幸せになることは無いって話だ!」
「本当に関係ないな」
「例えば剛史、お前に好きな人がいて、告白したらokされるとする」
「えっ!?本当ですか!?」
剛史は突然身を乗り出した。
「しかし、その人は俺のことも好きで、その上鴎も好きで、三人から選べない!皆私と一緒になって!って言いだした」
「…本当ですか?」
今度はプルプル震えている。
「お前ならどうする?その人にとって三人のうちの一人で満足するか?」
「…自分は、好きになってもらえるのならそれでも構いません」
「俺たちがその人とちゅうしてるのを見ても、我慢できるか?」
「…」
「俺たちはやるぞ?カズくんとミユキちゃん並みのちゅうを。それはすごいぞ。音するからな、こんなふうに」
仁が発するトイレを流すような音を聞くと、剛史は耳を押さえてうずくまった。
「やめろお!俺のミユキちゃんはそんなデカいうんこ流すような音は出さない!もっとお上品にちゅうするんだ!」
「いや、俺とはするから。お前知らねえの?あいつ音姫流さなきゃいけないくらいデカい音させるんだからな、こうやって」
流石に周囲の視線が気になってきたので、鴎は仁におかしな音を出すのをやめさせる。
「仁、結局何が言いたいの?」
「ああ、つまりな、ミユキは俺のものだ」
「俺のだああああ!」
仁が口全体を振動させ始めると、剛史はまたうずくまった。
「もうそれはいいって!僕がミユキちゃんを諦めるから、二人で仲良くしてよ」
「本当ですか!?」
「じゃあ鴎に免じてそれで手打ちにしてやる」
それでいいのかと突っ込むとまた教室がトイレになりそうなので、話の続きを促す。
「本当に何が言いたかったの?忘れた?」
「忘れてねえよ。つまりな、そんなやり方で、多数側が満足することは絶対ないだろって言いたいんだよ」
「いいや!それは一理ない!」
先ほどの余熱を感じさせる激しさで、剛史が机に握りこぶしを乗せる。
「そんなの一人側の器次第だ!不満も飲み込めるような大きさなら問題ない!」
「おっ、器デカそう」
「ミユキちゃんがお前とちゅうするときもうるさかったらどうする?」
「別れる」
「器ちっちゃ…」




