金曜 屋上(3)
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「それにしても、里見君も県外から来ていたんですね」
結たちも池上と赤村のことを調査すると決め、ひとまず今日はいつも通り校舎の監視を続けることにし、しばらく経ってから結が口を開いた。
「大寺君や倉沢君とすごく仲良しだから、てっきり三人とも同じ中学校なんだと思っていました」
鴎は、結が友人たちの名前を知っていることに軽く驚きつつ、他の人からは自分たちがそう見えているのか、と意外に思った。
「剛史も仁も県内だけど中学は違うよ。なんで三人でつるんでるのかはよく覚えてないなあ」
仁とは身体測定で話すようになった。剛史はなんだったか、席が近いとかそんなことだった気がする。
そういえば最初は、何もかもか知らないことだらけでずいぶん不安だった。あれからまだ数か月程度しか経っていないが、当時の自分との差の分だけ時間も大きく経過したような気がする。
「里見君はどうして県外からこちらへ?」
何とはなしに向けられた問い。しかしすぐには答えられず、鴎はまるでそこに答えがあることを期待しているように、頭上に続く空へ目をさまよわせた。
結の質問は、取りも直さず鴎がどうして生きているかということで、本人としてはそう簡単に言葉にできるものでない。ただ、出来事だけを説明するならば一言で済む。鴎はゆっくりと口を開いた。
「親と喧嘩しちゃって…」
結は神妙にうなずくと
「なかなか悪だったんですね」
…なんで?
ふざけているのかと思い顔を見ると、結は至極真面目な表情だ。
「…違うよ?」
「そうなんですか?」
小首をかしげて聞かれても困る。
「でも言われてみれば確かに、里見君は不良という感じじゃありませんね」
「うん。バリバリのガリ勉だったよ」
親と喧嘩をすれば不良だという結の認識に若干戦慄しつつ、中学生のころを思い出していた。
あのころは、親の顔より見た参考書をいつもポケットに入れていた。
「それでは、どうして喧嘩を?」
結は不思議そうな声で尋ねた。
どうして。鴎は心中で繰り返す。その答えは鴎の中で、無視できない存在感を放っているが、ひどく離れた場所にあった。
記憶を振り返ることが、砂浜で自分の足跡を眺めることだとすれば、その列は自分のごく手前で寸断されている。線で区切られた後ろと今の自分の間に大きな隔たりがあるのは、波にさらされ薄れてしまったからではなく足跡の形が変わってしまったからだ。
そう、鴎にとって数か月前の自分はまるで違う人物のようで、しかしあの記憶は深く刻み込まれている。
その記憶が自分という存在の根っこに関わる、ひどく個人的なことだと考えると、他人に明かすことはとても恐ろしい。しかし鴎は、昨夜結が自分に話してくれたことが、同じように彼女にとって重要なことだと理解していた。そしてそんな相手になら、話してもいいと思った。
「長くなるけどいい?」
コクリと頷く。長い髪が微かに揺れた。濡れるように黒い、というのはこういうことなのか、と鴎は思った。




