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12/24

#12 年末と新年です

新年明けましておめでとうございます。



話数を間違えていたので訂正しました。

 どうも、アイナ・フォルレイクです。

 クリスマスパーティーの悲劇から時は流れて大晦日です。

 この世界にクリスマスはありませんでしたが、年末年始の概念は存在しています。

 とはいえ、日本の年末年始のようなイベントということはなく、去り行く年に感謝し、やってくる新年を迎え入れるという……あれ?大して変わらない?いや、こたつもみかんも年越しそばも除夜の鐘も歌合戦もありませんので全くの別物です。

 そんなの、肉無し回鍋肉みたいなものです。ただの野菜炒めですよ。

 こたつやみかんは諦めますが、年越しそばだけは譲れない私は、今日の夜、『安眠亭』の厨房を貸してもらって年越しそばを作ることになっています。

 蕎麦打ちなんてできないのでパスタで代用します。せっかくパスタで作るので、イタリア風年越しそばにしましょう。トマトとチーズを使って、パスタスープにします。

 蕎麦っぽくありませんが、仕方ありません。蕎麦がないのが悪いのです。必ず蕎麦を見つけて、来年は年越しそばを食べますよ!

 簪があるくらいなので、多分遠い東の島国とかに日本みたいな国があるはずです。異世界ファンタジーの基本ですよ。

 そんなわけで私は今、年越しイタリア風パスタの材料を求めて、お昼の市場に買い出しに来ています。

 この世界に来て10ヶ月以上経つので、地球の食材と名前や形が違っても、ある程度わかるようになりました。

 まずはトマトです。私は牛の獣人のお姉さんのいる八百屋に行きました。

「トトはありますか?」

「いらっしゃい、アイナちゃん。今日は良いトトが入ってるわよ」

 そう言ってカゴにいっぱい入ったトトを見せてくれました。この世界のトマトはトトと言い、色も形もほとんど私の知るトマトと同じでした。若干、こちらの方が毒々しい赤色をしていて、形も少しだけ凸凹して歪ですが、味はかなり濃厚です。味だけなら最高級品として売り出せるレベルです。

 トトを購入し、次に向かうはチーズです。不思議なことにこの店では扱っていないんですよね。

 その後、特にこれと言ったトラブルやイベントが起こることもなく無事に買い物を終えた私は、年越しに備えて仮眠です。冒険者としてのお仕事も、年末年始の数日間は休みです。年越しと新年くらいはのんびりしたいですからね。

 あと、ティアさんがクリスマスの一件からまだ回復していないというのも理由なんですよね。ティアさんが酔った原因は料理に使用されたお酒。アルコールが飛びきっていなかったそうです。お酒に弱すぎです、ティアさん。炭酸で酔う人もいますが、ティアさんなら微炭酸でも酔いそうですね。

 それにしても、あれだけ大騒ぎしたのに兵士さんが来なかったのはなぜなんでしょう?


 夕方、仮眠から醒めた私は試作品を作るために厨房にやってきました。さぁ、作るぞ。

 鍋に水を入れ、魔法で生み出した炎を突っ込んで沸騰させ、塩を入れてからパスタ麺を投入。麺の太さから6分ほど茹でれば大丈夫でしょう。私はステータス画面の時計を見ながら6分待ちました。

 麺をざるに移して湯切りをして、器に入れます。ここで麺の確認です。

「ちょっと長かったかな……」

 次は5分でやってみましょう。麺はこれでいいので、次はスープです。スープは鍋にトマトを敷き詰め煮込むだけ。トマトは水分が多いのでそれだけで充分スープが作れるのです。蒸気が漏れないように風の魔法で密閉します。魔法、便利すぎです。

 完成したトマトスープに麺を入れ、チーズをトッピングして出来上がり。細かい味付けは企業秘密です。

 とりあえず完成したパスタを実食した結果、そこそこいい感じに出来たので年越しそばはこれでいきましょう。

 あとは時間が来るのを待つだけです。



 緊急事態発生です!エマージェンシーです!とんでもない深刻な事態が発生してしまいました!

 暇です。

 あ、今「知らんがな」とか思いましたね?

 仕事は休み。テレビなんかあるわけもなく、マンガやゲームと当然ありません。小説はありますが図書館に行って高い閲覧料を払わなくてはならないので行きません。

 この世界では時間潰しが非常に困難なんです。こんなことなら娯楽用の道具の作成をするべきでした……。

 やることがないのでステータス画面のチェックをしていましょう。

「ステータスオープン」

 私は自分のステータス画面を上から順番に見ていきます。

 名前、種族、年齢、性別が記された画面。その下に現在の装備品。画面右半分は能力値です。

 初めてこの世界に来た時と比べると、ずいぶん強くなりました。魔法の種類も増え、剣技も幾つか修得しました。まさかゲームの技を完璧に再現できるとは……。あの時の感動は忘れません。

 防具はそこそこ上等な革製品です。そろそろ魔法の防具に手を出したいですね。

 武器は女神様お手製のアイアンソード。そろそろ火力不足なので別の武器に変えたいです。まだ初期装備ですからね。

 ステータス画面を見ながらこれからの冒険に思いを馳せている内に21時を回っていたので、そろそろ厨房に行くとしましょう。

 まさかステータス画面だけでこんなに時間を使うとは……。


「皆さん、年越しそばならぬ年越しスープパスタが出来ました!」

 作ったスープパスタを器に入れ、ティアさん達の分を持って行きます。右手に1つ、左手に1つ、左手首に1つ。3人分をまとめて持っていきます。

「ちょっと!なに危ないことしてんのよ!?」

 私の姿を見たティアさんがこちらに駆け寄ってくるのでクルリと回って華麗に回避し、テーブルにパスタを置いていきます。

「大丈夫ですよ、これくらいなら」

 食堂で働いていた時も散々やりましたからね。お皿でしたら左手首に加えて左腕にも乗せて運べますよ。

 3人分を置いて厨房に戻り、自分の分を持って席に着きます。ゾルベさん達は自分でよそってください。

「それでは食べましょう」

 年越しそばは、年を越す前に食べなくてはならないという説や、年を跨いで食べるという説がありますが、私は年を越す前に食べる派です。

 年越しパスタを食べ終え、食器を片付けたら後は時間になるまでお喋りでもしていましょう。

「新年最初の仕事は何にしようか?」

「何か適当なモンスターを倒しましょうよ」

「そうですね。そろそろ上を狙ってみてもいいかもしれませんし、少し遠出をしてみるのもいいですね」

「華がない!」

 予想の斜め上のガールズトークでした。そうじゃないでしょ!年頃の女の子が集まって夜更かししてする話ですよ!?もっとキャッキャウフフなガールズトークをするものでしょう!

 とはいえ、私自身も話のネタがないため、それからカウントダウンが始まるまでの間、来年の仕事の話をするのでした。

 まさか年頃の乙女が4人もいるのに恋バナができないなんて……。



「3!2!1!」


「ゼロ!」

「「「あけましておめでとうございます」」」

「あけましておめで……あれ?」

 私の「ゼロ」とティアさん達の言葉が重なり、私だけ微妙にタイミングがズレてしまいました。

 新年早々幸先悪いですね。なんで皆さん「ゼロ」を言わないんですか……。

 それにしても今更ですが新年の挨拶は同じだったんですね。

「さて、新しい年になったことだし……」

 気まずい空気を打ち消すようにティアさんが明るく切り出しました。

「寝ましょう!」

 ……ですよね。起きててもやることないですからね。どうしてこの世界にはテレビがないのでしょうか。

 年末の歌番組や笑ったら罰ゲームを受けるバラエティー番組が見れないなんて……。

 そうだ!今度鍋をしましょう。冬と言えば鍋ですよね。

 今年の目標は、冬の間に必ずみんなで鍋を食べる、です。明日にも達成できそうな目標ですね。


 それから一眠りした私達は昼前に起きて活動を始めます。

 と言っても仕事をするのではなく、仕事のための準備です。

 装備の確認や消耗品の補充をしなくてはいけません。私とライラさんは武器を鍛冶屋に持って行ってメンテナンスをしてもらいます。

 この世界に来てもうすぐ一年。ここでの一年は十六ヵ月なのでだいたい十二ヵ月くらい経ちました。鍛冶屋でメンテナンスをしてもらうのはこれが初めてです。今まではライラさんに教わって自分でやっていました。

 武器屋で砥石などの道具を買い揃えることができるのです。しかし、やはりたまには本職の人に見てもらわないといけません。

「ごめんください!」

 ギルドで紹介してもらった鍛冶屋に着き、店の中に声をかけます。軒に吊されたハンマーを象った看板が風に揺れてギシギシと音がします。

 少し待つと店の奥から一人の男性が姿を現しました。

「……客か?」

 ボサボサの頭は寝癖をそのままにしていたように跳ね散らかっていて、面倒くさそうに頭を掻きながら、気怠そうな目で私とライラさんを見てきました。

 ……本当に大丈夫なんですか?

「剣のメンテナンスを頼みたい」

「そうか……」

 そう言うと鍛冶師のおじさんは手を出しました。何でしょうか?

「さっさと寄越せ。見てやる」

 この人、態度悪過ぎませんか?客をなんだと思ってるんですか?

 色々と言いたいことはありますが、ギルド推薦の人なので腕は確かなのでしょう。一流の職人ほど頑固だったり偏屈だったりしますからね。けど、どうせならドワーフの鍛冶師を紹介してほしかったです。

 私とライラさんは鍛冶師のおじさんに剣を渡しました。

 そういえば私、まだ初期装備ですね。防具は何度か買い直しましたが、あまり前衛に出ないので武器はずっと後回しにしていました。

 そのうち新しい武器を見た方がいいかもしれませんね。

「二日で仕上げる。また取りに来い」

 そう言うと鍛冶師のおじさんは店の奥に行ってしまいました。どうやらお金は武器と引き換えのようです。

 軽く買い物をしてから宿に戻ると夕方でした。ちょっとのんびりしすぎました。

 もち米がないので餅つきはできません。おせちも材料が揃わないのでありません。お年玉は貰う相手がいません。あれ?正月って何をするの?

 あまりにやることがなく、武器が返ってくるまでの間、寝正月を満喫しました。


「さぁ、討伐依頼をやりますよ!」

「やけに気合い入ってるわね。どうしたのよ?」

「ここ数日、ずっとゴロゴロしていたから……」

「……そういうことですか」

「ふ、太ってませんからね!?」

 女神様のせいで私は成長しない身体になったのだから太ることもないはずなんです!ただ気持ち的に運動をしないといけないような気がしただけですから!

 ……まぁ、仮に太ってしまっても女神様に言えば元に戻してくれそうですけどね……。

「おねーちゃんに任せなさい!」とか言ったりして。

 けど、物理的に体型を弄られるのは嫌なので今後は気を付けるようにしましょう。物理で骨格を変えられるのは本当にヤバいです。皆さんも気を付けましょう。


次の投稿から時系列を戻します。10話の続きになります。

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