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Emociones en Colored  作者: あざらシ


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2/5

怒りの色

次回は明日20時〜更新予定です


 あるところに、全身が傷だらけで着ているもの全てがボロボロな少女がいた。そんな少女はいつも盗みを働いて過ごしており、食べ物からお金になりそうな物まで人々から盗み、生活していた。だが、その生活は少女にとって生きるために必要なことで、危ない生き方も少女には当然の日常だった。でもこの日は珍しく油断してしまう。盗みが店主にバレてしまった少女は店主に捕まってしまう。店主は少女が二度と悪さが出来ないように暴力を振った。何度も何度も少女を殴りつける。痛みに耐え続け、ようやく解放された時には少女はいつもの倍以上にボロボロになった。

 ぐらつく視界と痛みにしばらく動けないでいると、自分と同じぐらいの少年が駆け寄ってきた。自分と同じく、見窄らしい見た目をしているのにも関わらず、その明るさから周りに好かれている少年の名はアリスター。ここらで善人と有名な子供にそっくりだった。そんな彼が今自分に食べ物をこちらに恵もうとする姿に思わず怒鳴り散らかしてしまう。

 

「そんな薄っぺらい優しさなんていらない!いいか、よく覚えておけ。お前の行動は時に人を怒らす……。無闇矢鱈に同情の目を向けるな!不愉快だ!」

 

 そう、今の少女にとってその行為は同情と哀れみに感じたのだ。お互い同じ境遇にいるのになぜお前はひとりぼっちじゃないのか、なぜこうもお前の方が恵まれているのか、少女は初めて嫉妬という感情が芽生え、怒りで我を忘れるような感覚になる。怒りに身を任せて無理矢理立ち上がりこの場を後にした少女。

 この日はそのようなやり取りで終わったが、その後なぜか少年に懐かれてしまい、毎日毎日出会っては薬草や食べ物を渡されていた。そうされる度に少女はアリスに対し激しい怒りがわいていき、やけになって毎回断るのだった。いつしか少女の中で同情されない強い奴になるという思いが強くなっていく。そんな少女を後ろで見守る謎の人物がいた。


 この日も少年の邪魔が入り、食べ物にありつけず怪我をしてしまった少女。痛みを引きずりながら自分が住んでいるボロ小屋に着くと、目の前にはマントを着た怪しい人物が座り込んでいた。そして少女に気づいたその人物はゆっくりと話しかけてくる。

 

「……お前、強くなりたいか?誰にも負けない強さが欲しいか?」

「――っ!どうしてそれを……!あんた何者なんだ!」

「私の名前はO(オー)……しがない旅人さ」

「お前、ますます怪しいな……本当に強くなれるのか?」

「あぁ……信じられないなら一度手合わせしてみるか?」


 カランと木刀を少女に向かって放り投げ、拾うように促す。少女は怪しみながら木刀を拾い相手に向かって構える。そして、勢いよく飛び上がり、Oに向かって木刀を振り下ろしたのだった。だが、Oはものともしないかのように動じず、そのまま少女が持つ木刀を薙ぎ払い、その勢いのまま少女を地面に叩き付け、木刀を首元に突きつけた。一瞬すぎて困惑する少女にOは話しかける。

 

「……これが今のお前の実力だ。もう一度問う、強くなりたいか?」

 

 少女は己の弱さを知らしめられ悔しくなり、仕方なくOに弟子入りを頼むのだった。騙されているかもしれない、嘘かもしれないけれど今の弱い自分から変われるのならと決意したのであった。

 

「いい目だ……私の弟子になったからには名をやろう。いつまでも名無しだと不便だろう…………そうだな、お前は今日からエルダだ」

「……エルダ?それが私の名前?」

「そうだ……これからはお前にちゃんとした生き方と強さを教えよう。途中で折れてしまうなよ?」

「……はい!師匠!」

 

 こうしてエルダはOの弟子になったのだった。初めて名前をもらい、初めて人の温かさに触れたエルダはこの時初めて嬉しそうに笑ったのであった。


 月日は流れ、エルダは大人になりOの元を離れて暮らしていた。Oはエルダが十八歳になったタイミングで突然別れを告げてきた。

 

『お前は十分強くなった……私を超えるほどにまで、これなら安心してお前を送り出せる…………。いつまでも一緒にいてはお前のためにならない、ここからは一人で生きてみなさい。何、難しいことではない私が教えた術を活かせばいいだけだ……期待しているぞ、エルダ』

 

 Oと過ごした思い出に浸りながらエルダは今日の日課をこなす。

 

「…………よし、そろそろ山菜採りに行こうか、ってあの人は……?」


 大通りに人だかりができており、その中心には大勢の兵士に囲まれた高貴な人が歩いていた。その人はこの国の王様だった。皆、喜びと黄色い声援を送っていた。エルダはそんな人達を横目に立ち去ろうとしたが、ふと遠くから何かが光るのが見えた。刹那、それは矢尻の輝きで、狙い場所が王様の心臓と一瞬で理解したエルダ。咄嗟に民衆の上を飛び越え、持っていた木刀を構え、王の前に立ちその矢を弾き飛ばす。急に飛び出たエルダに王と周りの兵士は驚き警戒するが、弾かれた矢を見て王が狙われていたことに気がつき、再び目を女性に戻すと、そこに彼女はいなかった。エルダは矢を弾くや否や、犯人に向かって駆け出し、捕らえていたのだ。そんなエルダの勇敢さに王は魅かれ、エルダを我が騎士軍に勧誘しようと決意した。

 

「素晴らしい身のこなしだ!私の身を守ってくれて感謝する。よければ我が騎士軍に入らないか?君のような強い者がいればわが軍はもっと強化されるだろう!」

「――!ありがたきお言葉、感謝いたします。ですが、よろしいのですか?私は女です。他の騎士たちのような力はありません」

「そんなのは関係ないさ必要なのは力だけではない。鋭い洞察力や忍耐力、戦いにおいては知識も必要だ……見たところ君は自分の戦い方を理解しているようだね。それだけで十分だ。是非わが軍に欲しい人材だよ」

 

 王の熱い勧誘もあり、そして何より騎士になればもっと強くなれる。いつか夢見た師匠と同じ景色を見れると思ったエルダは王の勧誘を受け騎士となった。

 

「まだまだ未熟な者ですが、どうかよろしくお願いします…………!」

「ああ!もちろん期待しているよ。女騎士殿」


 こうしてこの国初めての女騎士が誕生したのだった。


 騎士としての生活を始めて一ヶ月が経ち、生活にも慣れた頃、王に気に入られている凄腕の女騎士を異質な存在としてよく思わない一部の者からは、軽いいじめにあっていた。だが、そんな些細ないじめに屈せず、日々の訓練で実力差を見せつけることで相手を黙らせ、さらに嫉妬した隊士がよくない噂を広めているのだった。

 

「おい、今日も懲りずに来てるぞ」

「あいつ昔は盗みとかしていたらしいぞ、王を襲ったのもあいつの差し金で、自分で助けて王に取り入ったんじゃないか?」


 色んな噂話が飛び交う中エルダは凛とした姿勢を崩さず今日も訓練に励む。その姿はまるで強者の余裕が表れていたのだった。それもその筈、エルダはあらゆる手段を使い日々強さを求めて鍛え続けているのだ。王宮の書庫で過去の剣技や軍隊指揮を独学で学び、師匠であるOに叩き込まれた素振りと走り込み等の体力づくりも毎日欠かさなかった。

 

『自身ができる全てを使い自分の理想の強さを手に入れろ』


 その言葉がエルダを強くするための糧であり、強さの秘訣でもあった。エルダは月日を重ねていけばいくほど強くなっていき、いつしか騎士団の中でトップの者たちよりも強くなり、誰もエルダに逆らえなくなった。こうしてエルダは騎士団長の座を手に入れ、みんなに頼られる存在になった。そしてエルダの悪い噂を広める奴もいじめる奴もしだいにいなくなったのだった。そこから更に一年が経過した日のこと。この日、エルダは王様に呼び出され今後の入隊希望者についての話し合いをしていた。


「王よ、軍をさらに強化するため人員を増やすとのことでしたが、この入隊希望者を見る限り目ぼしい人物はいないような気がするのですが…」

「…………いや、そう決めつけるにはまだ早そうだ。このアリスターという若者、剣豪のトップからの推薦とは!これは…………実際に見てみないとわからないな」

 

 アリスターという名前があげられエルダは動揺した。昔、同情の眼差しを向けられ、しつこく付き纏ってきた少年と同じ名前だったからだ。


「あぁ、入団試験が待ち遠しい。この者の太刀筋や身のこなしを直に見れるのは実に楽しみだ……!」


 年に一度行われる入団試験、例年までは王が求める実力者は現れずさらには合格者さえも出ていなかった。このままでは団員を増やすどころか、新たな部隊を作る事もできなくなってしまう。だから今年こそはと王は受験者たちに期待していた。一方でエルダは受験者たちにあまり期待していなかった。

 エルダは知っていたのだ。王が期待するアリスターという人物がどういう者かを。自身の優しさは全て他人のため、それ故に自身がどんなに傷つこうとも他者を受け入れるその姿を。そんなアリスターはエルダから見れば騎士には向いていないと、そう断言できるほどの愚か者だと思っていた。王が心を踊らせている中エルダだけはこの先の不安が拭えないのであった。その後、どうにかしてアリスターを騎士にさせまいと王を説得したり、試験中止をしようとしたエルダだったが、説得も中止もできず当日を迎えるのだった。


 そして試験当日、やはりアリスターは受験者の中にいた。騎士団長である自分が指揮をとっている中、アリスターの真っ直ぐにこちらを見つめるその瞳がエルダにとって苦い思い出を呼び起こすものとなり怒りさえ込み上げてきた。試験は最終試験まで進み、多くの者が脱落する中、アリスターは合格者の中にいた。騎士団長直々の手合わせでは、五人を軽くいなし、ついにアリスターの番がきた。エルダは早く終わらせてアリスターを脱落させてしまおうと思い剣を振り上げ自分の得意技を繰り出した。ここで決める為に力を込め叩き付けた。だが、なんとアリスターは自分の渾身の一撃を受け止めていた。それだけでは終わらず、どんな技を使っても全ていなされてしまい、さらにはカウンターまで仕掛けてきた。長い打ち合いが続き、遂にエルダは力付き、アリスターに敗れてしまった。この屈辱はエルダの過去の記憶を呼び起こし、怒りで目の前が真っ赤になった。その後なんとか冷静さを取り戻したエルダは静かにその場を去った。

 試験が終わり、長い廊下を歩いていると自分を追ってきたアリスターに呼び止められた。


「あの!エルダ隊長…………!お聞きしたいことが……」

「どうしてお前は、騎士になろうと思った」


 エルダはアリスターの優しさが嫌いだった。エルダはアリスターの光輝く瞳が嫌いだった。„エルダはアリスターという存在に嫉妬していた“だから知りたくなった。どうして騎士になる必要があったのか、どうして戦う道に行くのかを。


「えっと……僕は、皆を守りたくて……だから、騎士になろうと思いました!」


 返ってきた答えは昔と変わらず誰かの為に向けられたものだった。


「……そうか、お前はあの頃と何も変わらないな!その善意が全て正しいと思うなよ……!今のままでは…いつか死ぬぞ」


 吐き捨てるように言ったエルダはその場から逃げるように去っていく。

 あの試験から随分と時が経ち、アリスターが第二部隊の隊長にまで登り詰めた頃。エルダが次の戦争に向けて作戦を練っていた時、第二部隊の壊滅を聞かされた。唖然とするエルダだったが今は状況を把握するため、報告に来た兵士に説明を続けるように促す。

 

「はっ!敵国は市民を使い、隊長であるアリスターを騙して壊滅寸前に追い詰めたが、応援部隊と交戦。相打ちに終わったということでした」

「……そうか、報告ご苦労。下がっていいぞ」


 兵士が去り、一人になったエルダは静寂をかき消すように嘲笑う。

 

「…………だから言ったんだ。お前の善意は他の悪意を見抜くことはできない。いつか死ぬと…!はは……お前はどこまでも善人だった、というわけか……」


 静かになった部屋の中でひとしきり笑った後、脱力した体を椅子の上に投げ出し、静かに呟く。

 

「…………私は最後まで嫉妬していた。憎くもあった。同じ境遇だったのに私より恵まれて、綺麗な心を持っていたアリスター。お前のことがこの世で一番憎かった。……だが、部下としては優秀だった。明るく、優しく、強いお前はあの頃と何も変わらず周りに好かれていた……ああ、私は彼の生き方が羨ましかったんだな」


 静かに呟く声はどこにも届くことはなく消えていった。窓の反射で写し出された顔にはいつもの隊長としてのエルダではなくまるで迷子のような幼い顔が写っていた。

 

「光に救われ、守られてきたこの国はこの先どうなって行くのだろう…………いや、弱音は吐けない。すぐに第二部隊の代わりを準備しなければ。私は王の為に、強さの為に戦うのだから」


 そう決意した私は今度こそ前を向く。怒ることでしか力が出せない私はこの先もずっと死者に、私を否定するもの全てに嫉妬し、憤怒に飲まれる。だが、それで十分。それが、私の強さであり、生き方なのだから。

今回は怒りの感情でした。前回とは打って変わり、エルダの性格とアリスターの性格の対比に意識して書きました。普段から怒りやすい人もきっと色んな事情を抱えているからこその感情なのだと思います。

それでは、また次回。

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