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第14章 陽菜の再登場

 僕は、興味津々で、ミカの答えを待った。

 ミカは、軽く目を瞑って、一つ、深呼吸をしてから、言った。

「全ては、主なる神の思し召しです」

 うーむ、これ、言われちゃうとなあ。

 天使の私の知ったことか、って話だよね?

 ところが、ミカは、予想に反して、目を開くと、話を続けてくれた。

「主は、汝が解決できない問題を与えることはありません」

 ん?キリスト教、入って来た?

「今回も同様です」

 へえー、そうなんだ。

「これから大切なことを言います。耳をかっぽじって、聞いて下さい」

「はあ」

「全ては、つながっています。これが、ガラポンルールです」

「ほう」

「そして、汝は多くの命を救うことになるでしょう。以上」

「えっ、終わり?」

 ミカが軽く頷き、帰る、というか、消えてしまいそうな素振りなので、僕は、慌てて、続けた。

「ちょっ、ちょっ。何となく分かったけど、目の前の問題が解決されてないというか」

「目の前の問題?それはなんですか?」

「若頭の三上を探さなきゃいけないんだろ?」

「まあ、そうですね」

「ヤクザ相手は無理でしょ」

 ミカは、僕と拓哉を、ジロジロと眺めてから、言った。

「そんなこともないと思いますけど」

「いやいや、それは買い被りですよ」

「誰が、ヤクザと抗争しろ、と言いましたか?」

「そりゃそうですが」

「それに、貴方には、組長さんが付いてるでしょ」

 あっ、やっぱそうなんだ。

「この場合の組長さんは、ヤクザの、という意味じゃありません。情報源、という意味ですが」

 ふーむ。

 そして、ミカは、立ち去る前に、思い出したように、話を続けた。

「汝は、自分で、自らの意志で、組長さんの娘さんを探すことに決めたとお思いですか?」

「・・・」

「全ては、神が決めたのです。ですから、神は汝を導くでしょう」

「分かりやすく言うと、応援してくれてるってこと?」

「・・・まあ、そう言えなくもないです」

「じゃあ、ミカも僕を応援してくれるんだ?」

 ミカは、じとっと僕を睨んだあと、しかし、僕の質問に答えずに、スッと上を向き、ついで、姿を消してしまった。・・・ウルトラマンかい。

 黙って聞いていた拓哉だが、ミカの姿が消えたのを、確認してから、言った。

「なんだか、あの天使、感じ悪いな」

「そうか。天使なんて、あんなもんだよ」

と、拓哉より、天使経験の長い僕は、サラリと答えた。

 しかし、考えて見ると、天使といっても、ミカしか会ったことないな。

「天使と合コン出来ないのかな」

と、僕は思わず、呟いた。

 そんな僕を、しげしげと眺めた拓哉は、言った。

「お前、ようやく、元気出て来たな。入院中なんて、ひどかったぜ」

 拓哉の言葉に、僕はちょっと、気恥ずかしかったので、その会話を切り上げるように、言った。

「三上探しだけど、結局、長澤さんに相談しろって感じかな」

「まあ、そうだろうな」

と、拓哉が答える。

 そんなわけで、僕は、長澤さんを呼び出して、三上探しの作戦会議を開いた。

 どうやら、神様が、少なくとも、沙織さん探しに関しては、僕を応援してくれてることは、確かそうだ。きっと、うまく行く・・・はず。


 その夜、僕と拓哉は、クラブ・アカプルコにやって来た。

 僕らのナンパ最前線基地であり、僕が死にかけた、というか、一度は死んだとこだ。

 長澤さんの作戦だと、女手が必要だ。

 女手と言えば、僕と拓哉に浮かぶ顔と言えば、響子さんと玲奈さんだが、頼みづらいし、そもそも、二人が、今回の任務に適任かと言えば、違うような気がした。

 僕と拓哉は、フロアに繰り出して、早速、踊り出した。

 アカプルコは二回目なので、僕もちょっと調べて来た。今、メキシコのクラブで、かかってる音楽は、レゲトンというジャンルらしい。通常のダンスミュージックより、全体的に、哀愁を感じる。

 僕は、踊り狂う拓哉を見ながら、ふと思った。体を鍛えている、というだけあって、なんだか逞しい。本人には口が裂けてもいえないが、男らしいといえば男らしい。・・・声かけは、今夜も拓哉に任せるか。

 一時間ほど、踊り狂った後、目星をつけていた、女の子二人組に、声をかけた。

 拓哉が、ニヒルに言う。

「疲れましたね。ちょっと休みませんか」

 女の子二人が、僕たちをジロジロと眺めながら、それでも考えている様子だ。

 僕が、追撃砲を打つ。

「今夜の君たちには、天使も敵わないよ」

 二人は、クスッと笑うと、背の高い方の女の子が、言った。

「ごめんなさい、先約があるの」

 あれ、僕、間違えた?

 僕と拓哉は、楽しい夜を、と言うと、女の子達の元から去って、一息入れに、カウンターに退散した。

 席に腰かけると、拓哉は、大きなため息を一つついてから、言った。

「ナンパ、無理じゃね」

「だね」

「合コン路線に切り替えようぜ」

「だね」

 拓哉が男らしい、という感想は取り消す。

 また、決戦の場を、合コンに切り替えるというのも、ヤブサカでない。

 だが、差し当たり、沙織さん探し用の女手はどうするか。

 うーむ、と僕が心で唸っていると、注文していた、モヒートがやってきた。ヘミングウェイもモヒートを愛したらしい。

 僕が、ミントの香りを味わっていると、ふと視線を感じた。

 拓哉の反対側からだ。

 僕が、視線を、そちら側に滑らせると、視線の主と目が合った。視線の主は、ちょっと慌てた様に、目をそらした。

 僕は、再び、モヒートのグラスを、見やりながら、思う。

 ん?どこかで会ったことがあるぞ。

 印象的なのは、強い目力だ。そして、妖艶さというよりかは、セクシーさ。

 あっ。

 僕は、慌てて、横を向いて、彼女をガン見した。

 セクシー野獣一号だ。

 僕の口に覚醒剤の錠剤を放り込んで、殺そうとした女だ。

 彼女が、何やら、立ち上がろうとするので、ちょっと、待って、と彼女の腕を掴むと、僕は言った。

「お久しぶり」

 彼女は、観念したように言った。

「大丈夫だった?」

「おかげさまで」

「そう」

と、彼女は言った。

 彼女は、ヒナ、陽菜と名乗った。

 僕は、陽菜の目力に負けないように、目に力を込めて言った。

「お願いがあるんだ」

「そんな怖い顔で見ないでよ。悪気は無かったのよ」

「そんな話じゃない」

「何よ?」

「君にしか出来ないことだ」

「ふーん」

と、陽菜が、興味を持ったように、僕を見返す。

 そう、僕らが必要としてるのは、まさにセクシー野獣だった。


 長澤さん曰く、若頭の三島には、遠藤慶太という舎弟がいるそうで、目をかけていた、というか、コキ使っていたそうだ。先ずは、その慶太から情報を引き出そうという訳だ。因みに、慶太は二十七才ぐらいだったと思う、と長澤さんは言っていた。そして、 慶太は酒好きだが、お前ら、僕や拓哉の誘いには、応じないだろう、ということだった。それで、女手が必要、という話になった。

 長澤さんは、僕と拓哉と陽菜を、組事務所が入ってる三階立てのビルの向かいに案内した。そのビルの前には、警官が立っている訳でもなければ、組員の方が、凄んでいるわけでもなかった。平時はこんなものらしい。

 ただ、なんだろう、何処か、そのビルには、立ち寄りがたい雰囲気があるのは気のせいだろうか。ここらは商業地域だと思われるが、ちょっと、空間が異質な感じがする。

 組名は、先代から取った大澤組とのことだった。

「うわ、やな感じ」

と、陽菜が、率直な感想を述べる。

 拓哉も、ゴクリと息を飲む。

 無論、陽菜や拓哉には、長澤さんの姿は見えてない。

 拓哉が、そう言えば、という感じで、聞く。

「慶太の写真か何かあるのか?」

 僕は、コホンと咳払いをすると、拓哉を、ちょっと陽菜が引き離して、その耳元に言う。

「長澤さんが教えてくれる」

「ああ」

と、拓哉が、キョロキョロと辺りを見回す。

 そんなことしても、長澤さんの姿は見えません。

 僕は、再び、陽菜に近づくと、言った。

「僕が、合図するから」

 陽菜は、ちょっと、何だか変だな、という顔はするものの、特に聞き返しはして来なかった。陽菜としては、さっさとお役目を終わらせて、家に帰る、或いは、アカプルコにでも繰り出したいといった面持ちだ。

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