### 第12話:偽りの玉座、あるいは「武蔵野」の拒絶
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### 第12話:偽りの玉座、あるいは「武蔵野」の拒絶
大宮地下のゲートを抜けたはずの霧崎が目にしたのは、豪華な議事堂ではなかった。
視界が開けた先、そこに広がっていたのは、どこまでも続く**「赤黒いススキの原野」**。
「……空間が、繋ぎ替えられたか」
霧崎は刀の柄に手をかけ、周囲を警戒する。
ここは現実の地理には存在しない、関東の霊脈が作り出した**「位相空間:旧武蔵野」**だ。大宮の議会へ至るには、この広大な関東の意識下を通り抜けなければならない。
ススキの波がざわめき、その向こうから、古びた軍服を纏った兵士たちが現れた。
彼らが手にしているのは、これまで見てきた「準都刀」ではない。煤けた鉄の塊のような、呪いのこもった**『古都刀』**だ。
「ここから先は、議会の直轄地ではない。……我ら『関東防衛義勇軍』の領域だ」
先頭に立つ片目の男が、錆びた軍刀を抜く。
彼らは現代の適格者ではなく、関東の霊脈に溜まった「過去の戦の残滓」が実体化した存在。
「大宮の長(九条)に会いたいなら、まずはこの武蔵野の土に還ってもらおう」
男の合図とともに、数百の亡霊兵たちが一斉に霧崎へ襲いかかる。
一人ひとりの実力は、これまで戦った「四神」には及ばない。だが、この空間そのものが霧崎の「冷気」を吸収し、大地へと逃がしている。
「……なるほど。土地そのものが、俺を『異物』として排除しようとしているわけか」
霧崎が足元を凍らせようとするが、氷の結晶は地面に触れた瞬間にススキの根に吸い取られ、枯れ果てていく。
「温度が奪えないなら、斬るだけだ」
霧崎が踏み込む。
ここから、大宮へ至るための「関東全域の霊脈を巡る100話の旅」が、本当の意味で始まった。
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