表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『十二都刀戦(じゅうにととうせん)』  作者: じょんどぅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/128

### 第6話:軍都の残響、あるいは座間・地下空洞の罠

### 第6話:軍都の残響、あるいは座間・地下空洞の罠


 東京と神奈川を分かつ境界線を越え、霧崎は国道246号線へと針路を取った。

 この付近、座間から大和にかけての一帯は、かつて日本軍の重要拠点であり、今なお米軍基地や自衛隊駐屯地がひしめく「軍都」の側面を持つ。


 地表の喧騒を避けるように、霧崎はキャンプ座間の外縁に位置する、放棄された地下排水路へと足を踏み入れた。コンクリートの巨大な円筒状の空間が、地下深くへと続いている。


「……鼠のように地下を這うのは趣味じゃないが、上(地上)の視線がうるさすぎる」


 霧崎が独り言ちた瞬間、暗闇の中から複数のレーザーサイトの紅い光が、彼の胸元に集結した。


「そこまでだ、零番目。ここから先は『日米共同・対超常災害部隊(UASDF)』の管轄区域だ。貴様の通行許可証を確認させてもらおう」


 闇の中から現れたのは、強化外骨格パワードスーツに身を包んだ兵士たちだった。

 彼らが構えているのは、銃ではない。刀の「柄」からプラズマの刃を形成する、科学と魔術を融合させた近現代の兵装――『電子都刀・プロトタイプ』。


「……準都刀サテライトですらない、ただの模造品か。軍部の適格者研究も、ずいぶんと地に落ちたな」


「模造品かどうか、その肉体で確かめてみるがいい」


 先頭の兵士が合図を送ると、後方の重火器担当がグレネードランチャーを放った。

 放たれたのは弾丸ではない。対象の周囲の霊子密度を強制的に希薄化させる『真空爆弾マナ・バスター』。


 ――ドォォォォン!!


 地下空洞を激しい衝撃波が駆け抜ける。

 適格者の能力の源である大気中の霊子マナを奪うことで、能力の発動を阻害する「対能力者用」の戦術だ。


「……仕留めたか?」


 爆煙が晴れる。

 そこには、左手を軽く前に突き出した霧崎が、傷一つなく立っていた。


「残念だったな。俺の力は、周囲の霊子を借りるような柔なものじゃない」


 霧崎の足元から、地下水が逆流するように立ち昇る。

 それは意志を持つ蛇のように兵士たちの足首に絡みつき、強化外骨格の駆動系を瞬時に凍結させた。


「な……駆動系がロックされた!? マイナス100度……いや、もっとか!」


「お前たちが頼っている科学は、分子の運動に基づいている。なら、その運動を止めてしまえば、ただの鉄屑だ」


 霧崎が歩み寄る。

 兵士たちが必死にプラズマ刃を起動させようとするが、過冷却された空間では放電現象すら維持できない。


「待て! 我々は議会(大宮)の要請で……」


「議会、議会とかしましい。……お前たちの飼い主は、自分たちの手が汚れるのを恐れて、軍(公的機関)を盾にしているだけだ」


 霧崎は兵士の一人のバイザーを掴み、強制的に剥ぎ取った。

 中にあったのは、恐怖に染まった若い男の顔だ。


「大和の地下に、大宮へ直通する『霊的高速道路レイ・ハイウェイ』があるはずだ。その入り口を教えろ。さもなくば、この地下空洞ごと、お前たちの墓標にしてやる」


 兵士の喉が鳴る。

 霧崎の背後に見えるのは、もはや人間ではなく、巨大な吹雪の化身だった。


「……海軍道路かいぐんどうろの、突き当たり……地下駐車場の三層目だ……。そこに、空間を歪めた『ゲート』がある……」


「いい子だ。……そのまま、朝まで凍っていろ。死にたくなければ、心頭滅却でもすることだな」


 霧崎は兵士たちを氷の繭の中に閉じ込めると、地下空洞の奥へと姿を消した。

 背後で、完全に氷結した強化外骨格が、軋んだ音を立てて火花を散らしている。


 大宮への近道を見つけた霧崎。

 だが、彼が向かう「海軍道路」には、大陸から派遣された次なる刺客――『四神』の一角が待ち構えていた。


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ