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星の降る夜に、僕は何を願うのだろうか  作者: 大澤陸斗
星の降る夜に僕は何を願うのだろうか・上(幼少編)
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第三章「見送り人」4

 リオラは城内に住むようになってから日課にしている絵日記を書き終えると、机の上を照らしていた蝋燭(ろうそく)の火を吹き消した。


 手探りで寝床に潜り込む。


 シーンと静かな夜。


 周りからは、自分以外の人の出す音が聞こえない。みんな寝てしまったのだ。


 一人でも、周りの人の談笑を聞いていれば寂しさは和らぐ。でも、この時間になるといつも寂しい。


 自分が孤独であることをいやでも実感してしまう。


 みんな、星の子の力を気味悪がるか、別れが辛いからと必要以上にリオラと付き合おうとしない。


 自分でもわかっている。みんな、この力が怖いことくらい。なんでも見透かしてしまうし、どうせすぐ死ぬ運命にあるから誰も仲良くしてくれない。


 ——なんで自分なんだろう?


 ミゥロ村で生まれた時は普通だった。黒髪で瞳の色も普通の色だった。普通に友達と仲良く遊び。両親も愛情を注いでくれていた。


 それなのに今から二ヶ月前、突然力が目覚めた。前触れなくいきなり魔法が使えるようになり、未来まで見えるようになってしまった。


 見たいと念じれば千年後、二千年後の未来までだって見えることがある。だけど、見たいと思ったもの全てが見えるわけではない。自分が進むべき道筋も示してはくれない。


 この力のことを、言い伝えを信じていた祖父母は、星の子の力だと喜んだけれど、両親は気味悪がったし、いっしょに遊んでいた子たちも気味悪がっていた。


 村には、星の子の力に目覚めた子をとどめてはいけないというしきたりがある。それは星見の台座まで一緒に来て見送ってくれる人を探さないといけないから……。そう理解をしていた。


「ちゃんと見送り人を見つけるんだよ」


 と、祖父母に見送られてから、見送り人になってくれそうな人を探して村を転々とした。でも近づこうとするとみんな離れていく。ここへきたのも最後の希望だった。千年前の見送り人と同じ血筋を持つラルフならきっと自分の見送り人になってくれる。そう信じていたからだ。


 でも、ラルフも他の子と一緒だった。リオラのことを煙たく思っている。


 予知能力は未来を見せてくれても過程を見せてくれない。自分の行いによっては未来さえ変わってしまう。ラルフの心を読むことができても、どうやったら仲良くなれるのかがわからない。


(もう嫌だよ……) 


 頭を抱え背中を丸めていると、ラルフの声が突然、頭に響いた。


『リオラ、まだ起きてる?』


『ラルフ——!? どうしたの……、もう寝る時間でしょ?』


『いや、明日は休日だし、リオラと話がしたいなって思って。二人だけだし、今ならいっぱい話せるでしょ?』


『本当に……いいの?』


『いいの。いいの。良いんだけど……、話題がないんだよね』


『何それ……? 話したいこともないのにリオラと話がしたかったの?』


 そうなんだよね——と笑うラルフの様子がテレパシー越しでも伝わってきた。


『じゃあ、ラルフが知りたいこと話してあげる。リオラ、なんでもわかっちゃうから』


『なんでもかー。何がいいかなー。未来のこともわかるの?』


『うん。全部はわからないけれど、遠い未来のこともわかるよ』


『じゃあ、その話をしてよ。僕らが知り得ない千年後とか二千年後とか……』


『じゃあ、一千年後の話をするね。たぶんこの辺が面白いと思うから……。一千年後はね、魔法を使える人がいなくなってるんだ』


『それって、星の子の血が薄まるから?』


『そうなの。でも、代わりに蒸気機関っていうのが発達してるんだ』


『蒸気機関!? なにそれ?』


『石炭っていう鉱石を燃やして水蒸気を発生させるんだ。それで風車を回してそれが動力になるみたい。そのおかげで船とか機械が発達するよ』


『へー、風とか人力で動かしていたのが全部それで動くようになるんだ。それでその後はどうなるの?』


『その後は馬より早い乗り物ができたり、空飛ぶ乗り物ができたりするよ』


『空を飛ぶの? すごいな。それも蒸気機関っていうので動くの?』


『違う。これはもっと複雑な構造のエンジンっていう機械が黒い液体を動力にして動くの』


『うへ。難しそう。未来の人たちは頭がいいんだな』


『ううん。そうでもないよ。文明が発達したら戦争をしちゃうんだよね。未来でも、奪い合い、殺し合いは無くならないんだ』


『そういうところは今と変わらないんだ』


『本当だよね。頭良いんだか。悪いんだかわからないね』


 リオラはその後も色々な話をした。人がロケットという乗り物を作って月へ行くこと。人が植物や動物の特性を変える技術を生み出すこと。山よりも高い建物が建つこと。どの話をしてもラルフが驚いたり、興味がありそうな反応をしてくれて嬉しかった。


『…………それでね、それでね』


『……………………』


 リオラはいつの間にかラルフが返事をしなくなっていたことに気がついた。


『ラルフ?』


(もう眠っちゃったか……。ありがとう、ラルフ。楽しかったよ)


 いつの間にか寂しさは感じなくなっていた。ラルフと話ができたことが何よりも嬉しかった。明日、ラルフと会える事を楽しみにしてリオラは目を瞑った。

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