第八十五話 最終決戦
俺はこの世界に来て、不遇の扱いを受けた。それでも今は、一柱の神としてここにいる。思い返せば、最初に安芸の仇でもある、勇者と遭遇しなければこんな事にはならなかったのかも知れない。ふ。たらればで語る物でも無いか。
「今は、ただ敵を打つのみ。超重機神サクラユウキ、参る!!」
今の俺は、重機召喚スキルと、精霊騎士に伝わる宝玉の力によって、半神半人から、真なる神へと至る事が出来た。故に、レベル、ステータスの概念も無い。本当の超越者として。
創世神ゼフィロス様からすれば、初心者と言っても過言ではなく、矮小な存在でしかない。それでも、この力なら間違いなく魔神へと届く。それはヴァルも同じようで、三名の婚約者達により、真なる姿、破壊神として進化を遂げている。
「ヴァル!」
「ああ、行くぞ!」
その瞬間に魔神へと肉薄する俺とヴァル。先程とは比べ物にならない速度、文字通り瞬間移動の様な速度で魔神へ迫る。ヴァルは神剣シヴァを、俺はその左手に備える、巨大な鋼鉄の塊、ブレーカーユニットによる攻撃を仕掛ける。
このブレーカーユニットは、超重機神への進化に伴い、大幅な強化が施されている。正式名称は、神装衝角グランブレーカー。これだけではなく、現在俺の行使する重機召喚スキル、武装には神剣の力と流れが組み込まれ、その力は無限大に近い物。
『ちぃっ!?』
先程は余裕をかましていた魔神も、瞬時にその危険性を読み取り回避行動に出る。未だに無手であるが、油断なく攻めて行く。
『くっ!? だが、電脳侵攻!! その剣の制御は、僕が貰い受ける!』
「何……神剣シヴァの、制御が効かない……!?」
魔神が言葉と共に、スキルを発動した途端に、ヴァルの行動が阻害される。神剣と呼ばれし破壊神シヴァ様その物でもある、神々しい剣がその光を鈍らせる。
「グランブレーカー、エアインパクトステーク!!」
『くぅ!?』
行動不能に陥るヴァルを援護する様に、グランブレーカーを起動。空中で起動し、ブレーカーユニットを空打ちする事で、空気の共振を引き起こす。堪らず魔神も防御の姿勢を取るが、着弾するのは所謂衝撃波に相当する物。防げる訳もない。
その攻撃が同心円状に効果範囲を広げて行くと、魔神のスキルから解放された神剣シヴァが輝きを取り戻す。魔神は忌々し気な表情で距離を取るが、すかさずヴァルが追撃に移る。
「すまん、助かった! 魔神、よくもっ!!」
神剣シヴァを薙ぎ払うヴァル。必死に回避する魔神。先程まで魔神を捉えられなかった俺とヴァルだが、その包囲網は着々と狭まっている。その証拠とばかりに、魔神へと剣の切っ先が届き、その漆黒の鎧に傷を付けて行く。
それは俺も同様で、神格化したブレーカーユニットによる攻撃は、今までとは比べ物にならない程の超威力を発揮し、振動だけで魔神へダメージを蓄積させていく。
超常殺し。神をも殺すその攻撃は、本来攻撃を当てる事で発動する。しかし、今俺の武装としては、既に神剣を取り込んだ形であるが故に、直接攻撃が届かなくとも効果を発揮して居るのだ。
『くそ、何で僕がここまで追い込まれる!? このスキルさえあれば、安芸だって手に入れられた筈なのに。何処まで僕の邪魔をするんだ!!』
「黙りやがれ! 前にも言ったが……例え神が許そうと、俺は許さないし、安芸は絶対に渡さん! もう二度と、離す物か!!」
現世での因縁。安芸を殺した犯人の一人。それが魔神としての権能を乗っ取り、こうして対峙する事となった。安芸もこの世界に転生しているし、それは魔神も承知の上で言って居る。だからこその決意表明だ。
「安芸は、絶対に離さない。例え世界が滅ぶとしても。最後のその時まで、俺は添い遂げる……貴様の様な奴に、女性をモノとしか思わないような奴から、守り抜く為に!! 貫け、マキシマムブレーカー、ステェェェェク!!」
『世迷い事を、安芸は俺が……ぐっ、ごああああ!?』
超重機融合状態での攻撃よりも、更に数段上の威力を叩き出すグランブレーカー。神剣ロード・オブ・シンフォニア由来の権能が、神殺しの効果を増幅させ魔神へと突き刺さる。
「まだだ! 右腕開放、アースオーガ、最大出力!! 解放、ギガント・ドリル・ブレイカァァァァ!!」
左腕のブレーカーユニットに合わせ、右腕のアースオーガを起動。超必殺技でもあるギガントドリルブレイカーも、超重機神への進化により強化されている。マキシマムブレーカーステークにより、罅が入り揺るがされた鎧を、破壊の暴風が撃ち貫く。
「神剣シヴァ! 我が敵を切り裂け!!」
俺に続き、ヴァルも神剣シヴァによる攻撃を繰り出す。元から超絶技巧であったが、破壊神シヴァ様の力を取り込んだ為か、その力と技量は依然と比較にならない程向上している。
瞬時に防御姿勢をとる魔神であるが、その防御はあっさりと貫かれる。半神半人であった俺、上位魔人であったヴァルだったら、決して届かなかったが、今は同格の存在なのだ。
『ぐあっ! まだだ、俺は神となった。この程度、この位で止まる物か!! そして、今度こそ、今度こそ安芸をこの手に――ゴフッ!?』
「この期に及んで、安芸を求むか。その根性だけは認めてやる。歯を食い縛れッ!!」
顔面に拳を叩き込む。尤も、現在の拳は超重機神として覚醒している為、ガントレットを装備して居る様な状態だ。思い出すのは、あの日、あの時の牢獄の事。酷い目に遭ったもんだ。
『ぐっ……く、そ……終わるのかよ、こんな所で……僕は、まだ……ガッ!?』
神同士の攻撃を制し、俺の一撃に屈した魔神を、右手で掴み上げる。うめき声を上げる魔神。ジタバタと藻掻くが、既に魔神に俺の拘束を逃れる術は無い。
「長かったよ、本当に。だが、これで終わりだ……因果応報と言う言葉を知れ。地獄に落ちろ、腐れ外道!! 神霊力解放、最大出力! マキシマムゥゥゥゥ……ブレーカァァァァ……ステェェェェクッ!!」
俺の出し得る最高の力を持って、神装衝角グランブレーカーによる最大火力の攻撃が、魔神の胴を穿つ。
『ごふっ……そ、んな……ぼく、は…………』
かつて、数々の敵を打ち貫いた裁きの杭が、魔神として転生した男を無へと還していく。けれど、達成感なんて物はない。金色の粒子となり、天へをと帰る魔神。せめて、来世では。潔白で生きて欲しい物だ。
「……終わった、のか?」
「ああ。魔神討伐は成った。俺達の勝利だよ……最後に、あれを止めればな」
ヴァルの言葉に答える様に頷く。そして、天を仰ぐ俺の目には……魔神が残した最後の置き土産が、ゆっくりと落下を開始して来るのが確認出来る。最後の最後に、俺達への認識阻害。ハッキング技術の応用で、あの隕石を隠したのだと思う。
「な、なんだよ、あれは……」
「……俺の世界ではな、空想科学を元にした物語があるんだ。あれは、それに則ったものだと思う。多分、魔神は……己の死をトリガーとして、アレを落とす事を考えて居たんだろう。隕石落とし、やってくれる」
こうして落ち着いて見て居られるのも、俺も神の一柱として至ったからだろう。確かにあの隕石は脅威たるが、重機召喚スキルで召喚出来る重機には、所謂コンピューターが搭載されている。
それらのコンピューターを統合運用し、計算した結果、現状であの隕石を止めるのは十分可能だと言う事が分かったからだ。
「その余裕、策があるんだな?」
「その通りだ、ヴァル。だが、その為には文字通り、俺達の手札を総動員する必要がある。協力して貰えますか、オーディン殿?」
そう言うと俺達の後方から、創世神ゼフィロス様をその身に宿した、先々代精霊騎士オーディン殿が音も無く現れる。そう、この計算には、創世神様、破壊神様、そして俺の持つ超重機神の力全てを必要とするのである。
「人類種、引いては世界の危機。神々は干渉しないとは言っても、これは度を超えている。私の力、思う存分に行使するんだ」
よし。これで破壊の為のエネルギー問題は解決だ。実際問題として、あの質量の隕石を砕くには、最低でも俺の最大出力での攻撃一回では届かない。距離的な問題は何とでもなるが、出力不足で砕き切れない。砕いても散らばる事で被害も増えてしまう。
「安芸、ノーラ。俺はこれから、あの隕石を砕く。文字通り全力を出さねばならない。全てのエネルギーを攻撃に回す……援護を、頼む」
俺の言葉に嫁二人は無言で頷くのみ。本来彼女らは、各精霊都市から帰還の途に有った。各精霊都市での戦闘後、一直線にこの場に向かっていたのだが、距離的にもう少しかかる筈であった。
それを覆したのが、先の戦闘で、マコト君とオーディン殿が救い出した、吸血鬼族である。体力と魔力の回復もあり、転移によって短時間で集結出来たと言う訳だな。
「作戦は至ってシンプル。俺の最大火力の攻撃、ギガンティック・バケット・エクステンションを打ち込む。ただ、純粋なエネルギー不足、これをヴァルとオーディン殿の神霊力、魔力で補強する」
ギガンティック・バケット・エクステンションは、複数のバケットを、まるで水車の様に回転させ、掘削する重機が元となって居る。正式名称、バケットホイールエクスカベーター。現世地球では、世界最大の重機としてギネス記録にも乗って居る。
そして回転するバケットアームは、浮遊魔王城のコアを砕いた時の様な、近接攻撃に特化していると思われるが、加えて、その回転から繰り出される攻撃で、強力な遠距離攻撃も可能だ。
「ギガントドリルブレイカーによる一点集中攻撃も候補ではあるんだが、確実性を取るならバケットホイールエクスカベーターだと思うのでな。一応、計算上は完全に砕ける。ただ、万が一に備えて、皆は防御と、砕け残った破片の撃破を頼みたい」
全員が神妙な面持ちで、俺の問いに頷く。直後、全員が持ち得る最大の戦力、魔力を開放し戦闘態勢を取る。負けるつもりは無い。俺は、世界を守る。
「しゃあ、行くぜ皆! 超重機神、全エネルギー解放……バケットホイールエクスカベーター、稼働開始!!」
俺の右腕に装備された、現世地球史上最大の重機。バケットホイールエクスカベーターが唸りを上げる。人間サイズにリサイズされているとは言え、それでもかなりの大型である。バケットホイール部分が高速回転を齎し、バケット一つ一つに強大なエネルギーが集約されて行く。
ぐっと腕を引き、正拳突きの要領で構え――隕石へと視線を向ける。まだ遠いし、目視では中心点を捕らえるのは難しい。一応コンピュータが補正をしているが、若干レスポンスが遅れている。
「次は俺だな。神剣シヴァよ、人魔の未来を切り開く為に……この世界を襲う、天災を打ち砕く為に。我が身命を賭して、彼の者に力を与えん。解放……受け取れ。ユウキ!!」
神剣シヴァを、真っ向に構えるヴァル。俺を信じて、その全ての力を託してくれる、最強の友。彼が持つは、神なる破壊の力。形あるものは必ず壊れる。そして、壊れた先にあるのが――。
「創世神ゼフィロス様の名の下に、この星を守る為に。私の持ち得る最大の魔力、上手く使ってくれよ。超重機神!!」
再生。創世の力だ。創世と破壊は表裏一体。相反する二つのエネルギーは、光と闇、正義と悪。全ての対極である力。この世界へ転生し、俺と同じく半神半人へと至った、超越者が、全身全霊を賭けて俺に応えてくれる。
「ぐ、オオオオオオオ!!」
嘗てない程のパワーが、俺の全身を駆け巡る。超重機神として神へと至った俺でさえこの状況。進化していなかったら、それこそエネルギーの制御もままならなかっただろう。
それでも、膨大過ぎるエネルギーは、神としての一歩を踏み出したばかりの俺には、少々荷が重いか。視界がぼやけ、照準がずれる。
「大丈夫。兄さんは私が支える……あの啖呵、格好良かったよ。だから私もそれに応える。それが、あなたの最愛としての役目だから……熾天使、解放。神霊力、同調補助を開始。兄さんは私が守るよ、絶対に」
不味い、と思った所で、俺に寄り添うようにその右手を支えてくれるのが、最愛の妻にして妹、安芸。先程の啖呵、魔神と相対した時のアレか。ふ、恥ずかしいとは思わん。心からの本心だからな。
「そのままでは、目標を捕らえるのは難しいでしょう。ここは私にお任せを。妻として、あなたを支えるのはアキさんだけではありませんよ。真実の魔眼、完全解放……!!」
そう言って俺の視界と、もう一人の妻であるノーラの視界が同調し、的確に隕石の中心部を捉える。コンピューターの補正をも凌駕する、ノーラの魔眼が完全開放された結果だ。
「……皆、どうなるか分からないから先に言っておく。ありがとう、ここが俺達の未来の分岐点。掛け金は俺達全員の命! 打ち貫け! ギガンティック・バケットォォォォ……」
ヴァルとオーディン殿のエネルギーを纏う右手。安芸に補佐され、ノーラに補正される。正に究極の一撃が……今、放たれる。
「エクステンションッ!!!!」
右腕で暴れまわるエネルギーを、落下する隕石に中核に向けて解き放つ。それは、ギガントドリルブレイカーをも凌ぐ、過去最大級の攻撃。怒涛の勢いで、次々と強大なエネルギー弾が撃ち込まれて行く。
「オオオオオオオオ!!」
「兄さん!!」
「あなた!!」
熾天使の力を行使し、必死に俺を支える嫁二人。熾天使の象徴たる、純白の羽を広げ、俺から離れまいと全神経を持って、支えてくれている。正直、いつ右腕ごとぶっ飛ぶか分からない状況だが、ここで止まる訳には行かない。
「ユウキ! くっ!!」
「超重機神! ち、凄まじいパワーだな! こんなのを一人で制御していたのか!?」
そんな俺の背に、ヴァルとオーディン殿の手が添えられる。同時に苦悶の表情を浮かべるが、恐らくこの膨大なエネルギーを、分散処理してくれているのだと思う。
「ひ、一人じゃ、ない。皆が居る……まだだ。持ち堪えろ、俺は超重機神! 数多の重機の神と言うならば、持ち堪えて見せろォォォォ!!」
それは、正に人ではなく、重機の咆哮と言うべきか。俺の耳には、超高速で回転数を上げるエンジン音が聞こえる。踏み越えれば、オーバーヒートしても可笑しくない。エンジンが燃え尽きても不思議ではない状況だ。
歯を食い縛り、極大エネルギーの制御に全神経を集中させ、隕石へと攻撃を続けて行く。そして、遂に俺の攻撃が隕石に着弾。距離がある故に、小規模な爆発を繰り返しているが、確実に、コンマ一桁の狂いもなく同個所に着弾している。
「もう少し、もう少しだけで良いんだ。持ち堪えろ……ぐ、ぎぎ……う、うおおおおおおおお!!」
叫んだ所で威力が上がる訳でもない。それでも、自然と気合を入れる為に、声を張り上げる。全てが、全てを賭けてこの世界を救う為に。
「ぶち抜けェェェェェェェェ!!」
その一言が引き金となったのか、隕石に無数の亀裂が走り――次の瞬間には、大規模な爆発を繰り返し、小規模な隕石へと変化をするが、それすらも誘爆して砕けて行く……文字通り、木っ端微塵に吹き飛んで行くのだ。
「くそ、ユウキ! 隕石が複数に別れて落下するぞ!?」
ただし完全破壊には至らず、複数に別れてしまった隕石に、ヴァルが悲鳴のような声を上げる。だが、これも想定して居なかった訳では無い。何のために俺が、戦艦ヤエザクラと、四大聖獣をあの場に待機させたのか。
「……心配ねぇよ。聞こえてるな、ヤエ、ガルーダ、ベヒーモス、ケートス、イフリート! 今こそ、その力を解き放て!!」
『了解!』
そんな俺の言葉に答えるかの様に、まるで瞬間移動でもしたのかと言う位の速度で、瞬時にその場に現れた、戦艦ヤエザクラ。しかしその姿は、元々の大和型戦艦からは遠くかけ離れている。何故ならば。
「戦艦ヤエザクラ、改め……精霊戦艦シンフォニア。四大聖獣が、その力を戦艦ヤエザクラに同化させた、飛行も可能な万能戦艦へと進化している。そして、その火力は……やれ!」
俺の声に合わせ、精霊戦艦シンフォニアの巨砲が唸る。緑、黄、赤、青。四種の閃光が輝き、その一撃を持って、分裂した隕石を粉砕して行く。
「な、なんだよ、あれは……」
「ヴァル、深く考えるな。この事態を想定してた訳じゃないが、聖獣達と、戦艦ヤエザクラの運用を協議した事があったんだがな。今回マリン解放の際に得たスキル、重機融合付与の効果で、この答えに至れたんだ」
先の湖上での防衛線で、対艦ミサイル車両を融合させたのと同じ要領で、四聖獣を融合させたと言う訳だ。勿論解除も可能だが、思わぬ副産物が付いていた事に驚いても居る。
『主様、電波探信儀上から、全ての隕石の破片の排除を確認。作戦、成功です』
「ああ、良くやったぞ、ヤエ。そしてガルーダ、ベヒーモス、ケートス、イフリート。お前達が居てくれて、仲間で、助かった。無理ばかりさせてすまん」
幾ら俺が彼らを使役するとは言え、無茶苦茶な事をした自覚はある。素直に頭を下げるが、全員が念話で『気にするな』と言ってくれる。
そしてもう一つ。最後に残った小規模の隕石が砕け散った時、それはまるで断末魔の様な声が聞こえた気がする。恨み、妬みと言った感情を載せたそれが、魔神の最後の抵抗だったのかも知れない。
「……」
その声が完全に消え去った後に、俺は構えを解き、ゆっくりと左腕を天高く掲げる。響くのは、大歓声。空中に浮かぶモニター越しに聞こえる、人々の歓喜の声。
俺達の戦闘は、魔神の持つスキルによって、全世界へと放映されていた。所謂ライブ中継と言う奴だ。俺の悪行を知らしめ、公私共に俺を殺すのが魔神の目的だったらしい。
けれど、その目論見は潰えた。何故なら、全世界に掛けていた洗脳は、魔神が死んだ時点で解放されたからだ。そして残るのは、空中の映像と、世界各国から見える隕石。それを阻止する俺達と言う状況だった。
「ユウキ、やったな」
「ああ。それもヴァル、魔人を統べる君のお陰だ……ありがとう、我が親友」
人魔が和解すれば、こんな奇跡だって起こせる。どんな困難だって超えて行ける。そう証明出来たと、俺は思う。
「兄さん」
「あなた」
「安芸、ありがとな。これで俺達の因果は断ち切られた。もう二度と、悪夢に苛まれる事もあるまい。そしてノーラ、俺を信じ付いて来てくれて、ありがとう。さぁ、凱旋だぞ、本当のな」
この世界に来て、約半年以上が経つ。現世から数えれば、約六年弱。安芸からすれば、もう十九年弱にもなる。俺達は遂に、犯人連中を裁く事に成功したのである。
そしてこの世界に来れたからこそ、俺は彼女達と結ばれる事になった。陰と陽、光と影。本当に、何がどう転ぶか分からないが、間違いなく言えるのは、俺は幸せの渦中にいると言う事だ。
「主様、この度は……」
「そこまで。リチャード、お前たちは俺の不在に、あんな化け物と対峙したんだ。結果をどうこう言うつもりは無い。それとも、俺にはもう仕えられないか? 信賞必罰とも言うが、何の罰も無いさ。今まで通り、力を貸して……違うな。力を貸せ、リチャード!」
「っ……御意!!」
本当にリチャード達を罰するつもりなど、無い。全軍を率いて魔界に行って居たなら、結果は変わっていたのかも知れないし、変わらなかったかもしれない。たらればで語った所で、意味はない。
涙ぐむリチャード、そして配下のアークヴァンパイア達。そんな光景を見つつ、もう一人の戦友がゆっくりと歩み寄る。
「ユウキさん」
「マコト君。ありがとうな、君が居なかったら、絶対に成し得なかった平和だ。援護、本当に感謝するよ……ありがとう、流石は大賢者だ」
実の所、安芸達が現れた時から、隕石迎撃の際まで。俺達の周囲には、魔神が召喚した闇の眷属が無数に沸いていた。それらの妨害があれば、隕石の迎撃にも成功しなかったのだが、それをたった一人で防衛して居たのが、大賢者たるマコト君だったのだ。
「俺は、当然の事をしたまでです。ご無事で何よりです。けど、褒め過ぎですからね。例え大賢者じゃなくても、俺はやれる事をやるだけですから」
マコト君が紡ぎ終わると、俺はそっと手を差し出す。何度目か分からないが、がっちりと握手を交わすその手は、本当に大きくなった。人として、心身共に成長したと言う事だろう。
「……これで、本当に地上の事は任せられる。ユウキ、ヴァーミリオン。新たなる神として、この世界を頼む」
『はい!』
最後に、創世神ゼフィロス様をその身に宿す、オーディン殿の問いに、俺達は姿勢を正し応えるのみ。
再び上空のモニターから木霊する、大歓声に見送られながら……俺達は、遂に勝ち取った。未来を、明日を。
閲覧ありがとう御座います。遂に現世での因縁に決着を付けた主人公。
人魔の未来へ向けて、歩き出していきます。




