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第七十五話 急転直下

 魔界に進み、魔王を倒した俺達人魔連合。だが、人界へと帰還するのは俺達勇者パーティを含む、人界側の人員と魔王被害者の六名の女性のみ。ヴァル達魔人族の者達は、魔界平定の為に一旦別れを告げたのである。


 魔界の海上を抜ける戦艦ヤエザクラは、俺達が最初に乗り込んだ湾へと到達。港湾施設は無いので、またヤエが召喚した小舟で陸地まで移動した。


 前回は俺が召喚した、戦闘用重車両にて移動したが、すでに転移魔法の阻害は解除されているので、マコト君とサツキさんによる、転移魔法で一気に、人界への転移門へと移動する事が出来たのだ。


「長かった気もするが、一先ずこれで魔界とはお別れだ。行こうか、英雄の凱旋って感じで、胸を張って行こうぜ」

「自分で言っちゃう? まぁ、兄さんらしいね。じゃあ行くよー……転移門、起動!」


 俺の言葉に突っ込みを入れつつ、熾天使級の力を持って転移門へとエネルギーを送る安芸。本来転移門の起動には、莫大な魔力が必要とされる。この人界、魔界を行き来する転移門も例外ではない。


 そして、俺達は眩い光に包まれて行く。灯に幻惑されるが、光が収まればそこには、懐かしき決戦の跡が残る場所。間違いなく、邪神を討伐したあの戦場跡地だ。俺達は、帰って来た。


「よし。周囲の警戒と、人員の点呼を行え……重機召喚、90式戦車。重機外装展開」


 その言葉に各々点呼を取って行く。俺は重機外装にて、魔界の時と同じく、センサー関連で周囲の状況、情報を確認していく。特にこれと言った変化はないが、油断はしないで行く。


「兄さん、点呼完了だよ。人員の欠けは無し。周囲は?」

「問題無い。移動を開始しようか。マコト君、サツキさん、準備は良いか?」


 俺の言葉に、マコト君とサツキさんが、再び大規模な転移魔法陣を展開。精霊首都シンフォニアまで、一気に転移移動を行う。本当に便利な魔法だ。俺も使いたいのだが、実は俺には転移魔法系の適正が無く、覚える事が出来ない。


「到着です……って、あれ? なんでこんなに場所に……地形から推測すると、南門付近? それにしても、何でここまで南門から離れているんだ? サツキさん、そっちは?」

「はい。私も不思議に思って居ます。確かに、王宮直前まで飛ぶ意識をしていたのですが……魔力制御も完璧でしたし、一体何が?」


 と、転移魔法を行使した二人が疑問に思って居るが、どうやら事態は風雲急と言った所か。


「重機召喚! PC450バックホー、D475ブルドーザー! 超重機融合、重機外装再展開!! 間に合えッ!! ノーラ! ガイアフォートレス展開、最大出力!」 


 俺は即座に重機召喚を行う。超重機融合にて、防御の姿勢を取り、フォーステリトリーを展開。ノーラに声もかけ指示を飛ばすが、恐らくガイアフォートレスの展開は、間に合わない可能性がある。


「全員、全力防御! 来るぞ、耐えろ!!」

『!?』


 俺の声に、何とか全員が防御系魔法、スキルを展開に成功。戦う術、守る術の無い技術者も抱えて居るが、魔界から連れ帰った、上位精霊騎士級の六名が張る、強力な物理、魔法の障壁により事なきを得る。


「……一体どう言うつもりだ、リチャード!!」

「…………」


 俺達は、転移直後の混乱に乗じて攻撃を受けている。攻撃元を辿れば、精霊首都シンフォニア、南門に備えられる、魔導砲、バリスタの攻撃だと分かった。


 更にその指示を飛ばしているのが、俺の副官たる、ヴァンパイアロードの、リチャードだと言う事実も知る。


「答えろ! 返答次第では……ッ!?」


 俺への返答とばかりに、無情にも放たれる第二次攻撃。先程より威力が増した魔導砲と、投射量が増えたバリスタに攻撃される事になった。引き続き守りを固めている為、被害は実質皆無であるが……。


『マコト君、サツキさん。初めて戦艦ヤエザクラを出した、あの湖に転移だ! 一旦引くぞ!!』


 流石にこの会話を聞かれる訳にも行かないので、マコト君とサツキさんに念話にて指示を飛ばす。魔界から、転移門へ。人界への転移門の起動こそ安芸が担当したが、二回目の転移は、転移門から精霊首都シンフォニアへとだ。二度も大規模転移を行っている。


 転移魔法の魔力消費、疲労に関してはヴァルから聞いている。その為、今二人に無理をさせる訳にも行かないのも理解している。疲労も限界の筈だが、今この場から離れなければ、どちらにしても待つのは、俺達全員の死と言う結果だ。


「リチャード! あとで覚悟して置けよ!!」


 と、俺は捨て台詞を吐いて撤退する事となった。と言っても、心からの言葉ではなく、ブラフではある。絶対に、何か理由がある筈だ。その証拠に、俺とリチャードの魔力パスは、僅かではあるが確かに繋がっている。


『……必ず助けに戻る。だから、諦めんな。待ってろ、リチャード』

『…………』


 そんな風にリチャードへ念話を送るが、答えは帰って来ない。いや、本当に僅かにだが、俺には感じる。リチャードは心の底から、申し訳ありませんと言って居る。


 恐らく、いや。間違いなく勇者ヒグレショウの兄で、ハッキング技術に長ける奴が、背後にいる。安芸の話と照らし合わせれば、俺が倒すべき最後の一人。許さない。絶対にだ。


「ヤエ、戦艦ヤエザクラを。総員収容次第、湖中心部へ移動……済まないな、マコト君、サツキさん。無理ばかりさせて」

「気にしないで下さい……と言いたい所ですが、流石に限界です……ちょっとだけ、休ませて貰い、ます」

「……同じく。ごめんカズヤ、あとは、よろしくー……」


 ともかく、南門の攻撃を防ぎ切り、何とか湖畔に辿り着いたが……やはり限界だったのだろう。マコト君はカエデさんに、サツキさんはカズヤ君に支えられながら、深い眠りへと落ちて行く。


 情けの無い事だ。俺自身は守る事しか出来ず、若者にここまで負担を掛ける結果しか残せていない。


「主様……」

「ヤエ、出航だ。ともかく対策を練らない事には話にならない……今は、まず休息を取ろう。安芸、ノーラ。隠蔽魔法を戦艦ヤエザクラに張ってくれ。大丈夫だとは思うが、認識阻害して置けば、多少は心持も違うだろう」


 魔界へ進撃した時とは違い、静かに湖畔を進む戦艦ヤエザクラ。まるで哀愁を漂わせるように、静かに湖の中心を目指す。この湖の大きさからすれば、中心部まで行けば、少なくとも、湖岸から目視する事は難しいという判断だ。


 それに加えて、念の為隠蔽魔法も施して貰う。前に言ったのは、ステルス機はレーダーから見え難いだけであり、姿形は視認する事が可能だと言った。が、それとは違い、この隠蔽魔法なら、文字通りその姿を隠す事が可能となる。


「うん、隠蔽魔法展開完了だよ……これだけの規模、初めてだったけど、ノーラも居たから何とかなったよ」

「ご謙遜を。確かに制御は私ですけど、アキさんの魔力量がズバ抜けているから、可能だったんですからね?」


 と、お互いに謙遜し合う嫁達。緊張続きだったが、この光景に少々ホッと胸を撫で下ろす感じになる。一先ずこれで安心だが、問題は山積みだ。


「そこまで。二人のお陰には間違いないんだ。ありがとな。そしてヤエ、中心部に付いたら錨を降ろして艦を固定。艦載機を上げて航空偵察を頼む」

「御意に。後は私に任せて、お休みになられて下さい。奥様方、旦那様もお疲れですので、程々にお願いしますよ」


 ヤエよ。そこはきっぱり、もうやめて、とっくに主様のライフはゼロよ! とか言って欲しかったぞ。嫌な訳では無いんだが、流石にマコト君達を酷使してるのに、俺だけイチャイチャするのも、不謹慎だと思うのでな。


 しかしながら、その言葉に撃ち抜かれたのか、安芸とノーラは、少し肩を落としながら、自室へと戻って行く。いや、待て。そこまで落ち込む事は無いだろう?


「すまんなヤエ。言い難い事、言ってくれてありがとな。どうにも俺は、意志が弱くてな……」

「そう思うのでしたら、私にも主様のご寵愛を頂けると嬉しいのですが」


 なんのかんので、ヤエにも好感を持たれていたのは知っている。主従と言う関係である以上、難しい問題とも言えるのだが、俺が本気で欲するなら、安芸もノーラも受け入れてくれるとは思う。


「……善処は、する」


 俺の答えに、ヤエは『その言葉だけで十分です』とだけ言い残して、艦のコアへと移動をしたのだった。そして心なしか、戦艦ヤエザクラの移動速度が、ホンの気持ち上がっている。


「決断、しなきゃな。でもその前に、やるべき事を、だ」


 パンと両頬を叩き気合を入れて、俺は個室へ向かわず、艦橋にある艦長席に付き、今後の対策を練るのであった。





閲覧ありがとう御座います。休みたい。休んでガンガン小説を書きたいッ!!

なんで日曜だけしか休みが無いんですか。

あ、新社会人の皆様。週休二日と完全週休二日の違いは、分かりますね?

そう言う事です。まぁ、そもそも私は週休二日体制ですら無いんですがねーorz

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